横溝正史さんの「本陣殺人事件」を読んでみた ネタバレあり/感想
今回紹介するのは横溝正史さんの「本陣殺人事件」です。日本屋敷での密室殺人を描いた金田一耕介シリーズ第一弾!アメリカから帰国した金田一耕介の活躍に注目しよう!
本陣殺人事件
▼本陣殺人事件
昭和12年(1937年)11月23日の夕刻。とある飯屋にマスクで顔を隠した男が一柳家へ行き方を尋ねてきた。マスクの下には大きな傷があり、右手は三本指しかない不気味な男。この三本指男は、11月25日の婚礼の当日に一柳家に現れて、下働きの女性にこれを旦那に渡して欲しいと紙片を無理矢理押しつけて帰って行った。この男の存在が本陣殺人事件(妖琴殺人事件)をより難解な事件へ変貌させた。
江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳本家。
一柳糸子(いちやなぎ いとこ):本陣の末裔であることに威厳と誇りを崩さない老婦人。
一柳賢蔵(いちやなぎ けんぞう):一柳家長男。研究家。講演会で久保克子と知り合い、結婚することを発表したが、家柄を問題視した周囲から猛反対された。
一柳妙子(いちやなぎ たえこ):長女。会社員に嫁いで上海在住。事件とは無関係。
一柳隆二(いちやなぎ りゅうじ):次男。医者。事件当夜は家にいなかったが、、、
一柳三郎(いちやなぎ さぶろう):三男。家でごろごろする毎日。推理小説が好き。頭は悪くないが、狡猾なところがある。
一柳鈴子(いちやなぎ すずこ):次女。病弱だが、琴を弾くことなどは天才的。
一柳良介(いちやなぎ りょうすけ):分家の主人。賢蔵たちの従兄弟。よく糸子の相談相手になっていた。
一柳秋子(いちやなぎ あきこ):良介の妻。平凡な女。
▼主要人物
金田一耕介(きんだいち こうすけ):私立探偵。日本を飛び出してアメリカに渡り、麻薬の味を覚えてハマる。麻薬常習者まで落ちこぼれた金田一だったが、迷宮入りしそうな奇妙な殺人事件を解決したことで一転、英雄と讃えられた。そこで果樹園を経営している久保銀造と知り合いになり、色々と援助受けることになる。
久保銀造(くぼ ぎんぞう):兄弟でアメリカに渡って、果樹園の技術を取得し、日本に戻ってから始めた果樹園は成功した。兄が亡くなった後、克子を育て上げた。また、アメリカで知り合った金田一に資金援助をしている。
久保林吉(くぼ りんきち):故人。克子の父であり銀造の兄。
久保克子(くぼ かつこ):女教師。教育があり、聡明な人。講演会で賢蔵と知り合う。
磯川常次郎(いそかわ つねじろう):本件を担当する岡山県警警部。
昭和12年(1937年)11月25日、本陣の末裔である一柳家長男・一柳賢蔵と女教師・久保克子の婚礼当日である。家柄を理由に結婚を猛反対されていた賢蔵は、周囲の声を徹底的に無視することで強引に話しを進めてこの日を迎えた。
婚礼の儀は何事もなく終わり、午前2時ごろお開きとなった。それから2時間後の午前4時ごろ、新郎新婦の寝室がある離家から恐ろしい悲鳴と奇妙な琴の音が響き渡る。銀造らが離れに駆け付けて、枝折戸を斧でぶち壊し、中に入ると賢蔵と克子がズタズタに斬られて血まみれになって死んでいた。
離家には誰もおらず、積もった雪の上には犯人の足跡が見当たらない。不可解な点を挙げるならば、石燈籠の根本に日本刀が刺さっていたこと。琴の糸が一本切れて、琴柱が一つ無くなっていたこと。金屏風に血で三本指の跡が残されていたこと。また、犯人の侵入経路となりそうな場所は全て厳重に戸締まりがしていたことが確認されて、現場の状況は完全に密室を指していた。銀造はこの事件の解決には金田一の力が必要になることを見据え、電報で呼び出した。
事件を担当する磯川警部らが到着する。捜査の結果、婚礼の日に一柳家に現れて、旦那へ渡してくれと紙片を渡した三本指の男が犯人候補に浮上した。ズタズタに引き裂かれた紙片を四苦八苦しながら復元すると、島の約束を果たす。闇討ち不意討ちどんな手段でもいいという約束だったね。君のいわゆる『生涯の仇敵』よりと読み取れる文章になった。
また賢蔵の部屋から発見されたアルバムには『生涯の仇敵』(三本指の男)の写真があり、その人物は11月23日にとある飯屋で一柳家への道を尋ねた人物だと判明した。(指紋が一致したため)
金田一が到着すると今朝早くにまた三本指の男が現れたと大騒ぎしていた。鈴子が猫のお墓参りに行った時に、三本指の男を目撃したと語った。時間が時間だけに夢遊病が疑われている彼女の見間違いか、夢だろうと一同は考えましたが、猫の墓標に三本指の男の指紋がついていたのだ。
書棚にぎっしりと詰まった探偵小説に興味を示し、探偵小説好きの三郎と密室の殺人についての議論は盛り上がった。その日の明け方、ちょうど事件があった同じ時刻に琴の音が響き、離家に駆け付けた一同は重傷を負った三郎を発見した。彼は密室の秘密を解き明かそうとして襲われたと証言した。
克子の親友・白木静子が現れ、過去に付き合っていた田谷照三という男が犯人だと訴えた。しかし、アルバムから切り抜かれた生涯の仇敵、三本指の男の写真を見せて確認を取るが、きぱりと別人だと否定した。
警察が頭を抱える中で金田一は克子が処女でなかったことを賢蔵に打ち明けていたことを知り、うれしそうな顔をしてもじゃもじゃ頭をかいていた。その後、猫の棺桶から三本指の男の手が、近所の炭焼き釜からは死体がそれぞれ発見された。
~事件の真相と犯人~
金田一によって磯川警部、久保銀造、一柳隆二、F医師が離家に集められて、密室殺人のトリックを実験で再現することになる。準備として水車に琴の糸を巻きつけ離家まで伸ばし、日本刀の柄に通して結ぶ。毎朝四時ごろになると水車が動き出すことを利用して、結んであった琴の糸が回収されると日本刀も引っ張られて、鎌によって糸が切られ、石燈籠の根本に刺さるといった仕掛けであった。
実験の結果、犯人は賢蔵。克子を殺したあとで自殺した。克子が処女でなかったことが判明し、結婚を取りやめにしたかったが、周囲に結婚を猛反対されていたにも関わらず、無視して強引に踏み切ったゆえに、いまさら破談することは許されなかった。その解決法として悩みの種である克子を殺し、自分も殺されたと偽装して自殺することだった。病的までの神経質と潔癖症が災いし、本陣の悲劇へと繋がってしまった。
清水京吉(三本指の男)は急遽飛び入り参加した部外者に過ぎなかった。偶然にも亡くなっていた彼の死体を発見した賢蔵はトリックの実験台として利用した。しかしその実験を三郎に見つかり、探偵小説マニアの彼も計画に参加することになった。三本指の男を偽装犯人に仕立てるアイデアは三郎が生みだしたものだった。賢蔵と三郎。異なる頭の良さを発揮したおかげで、この事件はいっそう複雑さが目立つことになった。
感想/まとめ
面白かった。
金田一耕介初登場作品。アメリカに渡って薬に溺れていたなんて驚きました。もじゃもじゃ頭を掻き毟る描写にニヤニヤ。金田一耕介といったら石坂浩二さんのイメージが強いですね。
残念ながら画期的なトリックなのでしょうけど、イメージがまったく浮かんでこない。
それでも、漠然とした雰囲気味わえたからオッケーですね!