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横溝正史さんの「車井戸はなぜ軋る」を読んでみた ネタバレあり/感想

今回紹介するのは横溝正史さんの「車井戸はなぜ軋る」です。

 車井戸はなぜ軋る

本位田家、小野家、秋月家は、かつてはK村の三名といわれていたが、小野家、秋月家が零落する一方で、本位田家のみは昔以上に栄えていた。本位田家長男・大助と秋月家長男・伍一は良く似た顔立ちで、見分けるのには伍一の二重瞳孔に頼るしかなかった。ではなぜこれほどまでに瓜二つなのか。その秘密は大助の父・本位田大三郎にある。彼もまた二重瞳孔の持ち主で、伍一は母・お柳と大三郎との間に生まれた子であった。お柳の夫・秋月善太郎は中風で倒れて半身不随になっており、夫婦の交わりはなかったことを本人が一番理解していた。この事実に耐えられなくなり、善太郎は車井戸に身を投じて死んだ。お柳もまた、善太郎の一周忌の晩に、夫の後を追うようにして車井戸に身を投じて死んだ。

 

1941年(昭和16年)に大助は、伍一と恋中との噂があった梨枝と結婚し、1942年(昭和17年)、大助と伍一は同時に召集を受け、同じ部隊に入隊した。それから終戦後の1946年(昭和21年)戦地から大助が帰ってきたが、戦傷を負って両眼失っており、代わりに義眼がはめられていた。大助は伍一の戦死を伍一の姉・おりんに報せた。

 

大助が帰ってきてから家の中の様子が暗く悪い方向へすっかり変わってしまった。昔は思いやりの深い陽気な人でみんなを笑わせていた大助が、帰ってきてからはまるで人が変わったように陰気で気性が荒くなった。そんな様子を間近で感じ取った妻・梨枝と大助の妹・鶴代は戦死したのは伍一ではなくて大助だったのではないか。ここにいる大助は伍一なのではと、入れ替わり説を疑っていた。二人を見分けることができる特徴の二重瞳孔は、戦傷によって義眼はめられており、判別することは不可能であり、不安を解消させる手立てはなかった。

 

自らの手には負えない現状に困った鶴代は、結核診療所で療養中の兄・慎吉に手紙で相談すると、戦争に行く前に右手の手形を押して奉納した指紋を帰ってきた大助?の指紋と照合すれば鶴代らが感じている恐ろしい想像に終止符が打てるとアドバイスを送った。生まれつきの心臓弁膜症で家から出ることが出来ない鶴代は、下女のお杉に絵馬を取って来るように頼むが、そのお使いの最中にお杉は崖から転落して死んでしまった。お杉の死は事故なのか?それとも誰かに突き落とされたのか?鶴代の疑惑が深まる中で、本位田家に新たな惨劇が起きる。

 

大暴風雨の日の夜に寝室で梨枝がズタズタに斬られて殺され、心臓をえぐられた状態で車井戸に投げ込まれていた大助がそれぞれ発見された。また、大助は両眼に義眼をはめていたが、発見された死体からは右の義眼が失われていた。

凄惨なる本田位家殺人事件の真相とは?

 

 

~聡明な少女・鶴代が見抜いた真相とは?~

犯人は、本田位慎吉である。

結核診療所から本田位家は距離が離れており、殺人を行うことは絶対に出来ないとの完全なアリバイがある慎吉を警察は犯人候補から外した。それは間違いであり、大助本人が下人の鹿蔵の介添えで結核診療所に向かうことできる。

伍一が死ぬ間際に梨枝と慎吉の関係を臭わせて、大助の猜疑心を煽った。それがあの大暴風雨の日に押さえられていた感情が我慢の限界に達してあのような形で爆発してしまった。

大助に不貞を詰問され、身に覚えのない慎吉は否定をしたが、感情に支配されている彼には届かなかった。嵐の中で揉み合いなり、勢い余って倒れた時に大助が用意していた短刀が心臓を突き刺した。その後、死体となった大助は鹿蔵に運ばれて本田位家に帰り、車井戸に投げ込まれたのであった。大雨でずぶぬれになった大助の死体を梨枝と並べると不審がられる恐れがあり、車井戸に投げ込んだのにも意味があった。

 

感想/まとめ

面白かった。

金田一が関わりの少なさに物足りなさを感じますが、短編だと感じさせない読み応えで楽しませてくれました。

戦争、入れ替わりに、手形、、、あの作品が浮かんできます。