小林由香さんの「ジャッジメント」を読んでみた 感想
今回紹介するのは小林由香さんの「ジャッジメント」です。犯罪者から受けた被害をそっくりそのまんま仕返しをすることができる法律、復讐法が生まれた日本。大切な人を殺されたらあなたは復讐したいですか?
ジャッジメント
凶悪な犯罪が増加する日本で、治安の維持と公平性を重視した新しい法律が生まれた。
それが「復讐法」である。
復讐法は裁判によって適用が認められた場合、旧来の方に基づいて判決されるか、復讐法に則り刑を執行するか選択できる。復讐法を選んだ場合、受けた被害を合理的にそのまんまそっくり仕返しすることができる。ただし、自らの手で執行することが条件だった。
目には目を歯には歯をで有名なハンムラビ法典を彷彿とさせる法である。
復讐法を選択した五つの章で構成されており、応報監察官である鳥谷文乃の視点で描かれている。被害者遺族により添い、刑の執行を一番近くで最後まで見届ける立場の人間である。過酷な職場で徐々に不安定になっていく過程が生々しい。深くかかわるほど、法の是非の答えがわからなくなっていく。それでも五つの復讐法を経て、最終的な決断には自分なりの答えが現れていた。
第一章 サイレン
拉致監禁されて激しい暴行を受けた後に殺害された十六歳の天野朝陽。右目が失明、爪は剥がされ、鼻が折られ、歯はペンチで全部抜かれた。髪は焼かれて、服は着ておらず、全身に打撲痕と殺傷痕があった。廃墟になったビルの一室で発見された死体は、無残な姿だった。
主犯格である堀池剣也に対して朝陽の父親は復讐法を選んだ。
第二章 ボーダー
十四歳の吉岡エレナは深夜に同居している祖母の吉岡民子を殺害した。犯行の動機は、
この世界には、死んでもいい人間がいる。あの人を殺したら、もっと楽しい未来があると思ったんです
と発言して、自ら死刑を希望した。
エレナの母親で、民子の娘である京子も、娘に対して復讐法を選んだ。
第三章 アンカー
通り魔によって三人の尊い命が奪われた事件。
法の選択権を委ねられた複数の被害者遺族はそれぞれの思いと葛藤の中でどんな選択するのか?
第四章 フェイク
十歳の前田アキラは、建物の屋上から突き落とされて死亡した。殺害した犯人は、六七歳の神宮寺蒔絵。蒔絵は有名な霊能力者で信者も多い。
アキラの母親は復讐法を選んだ。
第五章 ジャッジメント
十歳の森下隼人は、育児放棄で妹ミクを餓死させた母親と内縁の夫を復讐法で裁くことを選択した。
感想/まとめ
読むのがしんどかった。言葉で表現できない何かが残る。
未成年が関わる章が多いけどわざとなのかな。
復讐法によって報われることはあるのだろうか。一時の感情で一生を台無しにしてしまう可能性が付きまとっている。でももし自分が被害者の立場になってしまったらと考えると、、、難しいね。
第三章アンカーで被害者遺族が叩かれる描写を見ると欠陥だらけの法律だと思えてしまう。それでもラストでは法の賛否の議論が積極的に行われて、何が正しいのかを一生をかけて議論を続けていく流れになり、これこそが正しい道なのでしょうね。
復讐について深く考えさせられる小説でしたね。