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大倉崇裕さんの「福家警部補の挨拶」を読んでみた 感想

今回紹介するのは大倉崇裕さんの「福家警部補の挨拶」です。刑事コロンボ古畑任三郎などと同様に犯人を明かしてからスタートする倒叙ミステリー。小柄で刑事に見えない福家警部補が鋭い観察力を駆使して犯人を追い詰めていく。福家警部補シリーズ第一弾!

 福家警部補の挨拶

主役は福浦警部補。警察バッチがどこかにいってしまい制服警官に制止されて足止めを食らうことがお約束。小柄な女性でえ?あなたが警部補というリアクションが毎回のように飛び出すユーモアさ。酒豪で映画好きなどの一面を持っている。

それが事件になると一転、鋭い観察力を武器に犯人を追い詰めていく。関係者から聞き出した些細な矛盾を手がかりに事件解決へ結び付けていく王道パターン。鑑識の二岡は相棒的ポジション。

 

刑事にみえない福浦警部補と犯人達の駆け引きもから目が離せないぞ!

 

 

 ▼最後の一冊

犯人は天宮祥子。江波戸図書館の館長である。創設者である江波戸康祐が亡くなって遺産を相続した息子の宏久は、本に全く興味を示そうとせずに借金の返済のために図書館を売却しようとしていた。江波戸図書館を、本を愛する彼女にしてみれば私欲のための売却する行為は許さないでいた。

さて、深夜の図書館に祥子と宏久の姿があった。晩年、康祐氏が集めていた貴重な作品集。そのラスト一冊をついに手に入れることができたからだ。この本を手に入れたら真っ先に持ってくると康祐氏との約束を律儀に守った。空白のスペースにそっと本を差し入れてようやく揃えることができた。

そんな一連の流れをめんどくさそうに見つめていた宏久。二人が深夜の図書館にいる理由。それは本を盗むためであり、狙いは保険金だった。そして保険金が下りたら全額を宏久にあげるからその見返りとして図書館を売却するのは辞めるというのが二人に交わされた約束だった。

だが隙を見て分厚い本で一撃、撲殺してしまう。盗みに入って運悪く倒れてきた本棚の下敷きになって絶命したという偽装工作をして、図書館を去って行った。

 

翌日になり何食わぬ顔で出勤してきた祥子の前に刑事にみえない福家が現れた。現場に残された不可解な点を見つけてじりじりと祥子に迫っていく。そして、犯行があった夜に図書館にいたことが言い逃れがすることができない証拠品が明らかになり、ギブアップ。

それは、康祐氏が集めていた貴重な作品集のラスト一冊であった。

 

オッカムの剃刀

犯人は柳田嘉文。元科警研科学捜査部主任であり、現在は大学講師をしている。助教授の池内にある弱みを握られて脅迫されており殺害計画を立てた。近辺で起きていた強盗事件に見せかけて殺害した。復顔術のエキスパートで幾多の事件を解決してきた伝説の人物である。捜査に関わった経験と実績があり、殺害計画に抜かりはなかった。

だが、柳田の前に刑事にみえない福家が現れた。ふたりは面識があり、懐かしむように挨拶から会話がスタート。その後すぐに池内の死を知らせ、強盗の可能性が高いと報告した。だが現場の気になる点をありますとの指摘に上手にかわす柳田。福家との再会に危機感を覚えて少しの油断が命取りになると気を引き締めて次なるステージへ移行した。

強盗事件は、柳田が依頼して仕掛けたものだった。その男、今井も邪魔となり殺害。彼を身代わりとしてこの事件の関係者から外れる魂胆だった。だが、福家だけは池内殺しは彼の犯行ではないと見破っていた。もちろん柳田が犯人だとおおよその見当がついていたが、まだ足りないモノがあった。

科警研科学捜査部時代の驚異的な解決率を誇る柳田が担当した復顔の未解決事件。その中の一件に隠された秘密があったことを突き止めた。それが池内にバレてゆすりのネタになっていた。その点を踏まえて福家は柳田に罠を仕掛けることで自滅させることに成功した。

 

▼愛情のシナリオ

犯人は女優の小木野マリ子。今度のオーディションを下りるように脅迫してきた柿沼恵美を殺害しようと計画を立てていた。睡眠薬で眠らせて一酸化炭素中毒による窒息死させることに成功した。

そんなマリ子の前に刑事にみえない福家が現れた。デビュー間もない彼女が出演した映画を好きだと語る意外な一面をのぞかせた。だが事件のことになると厳しい顔つきへと変貌する。状況がどんどん事故ではなく、殺人事件だとシフトしてきた。そして、犯人としてマリ子を疑っていた。

恵美が飼っていた文鳥の餌の注文を犯行時刻にマリ子の携帯電話を無断使用していたことでジ・エンド。

 

 ▼月の雫

犯人は谷元酒造の社長・谷元吉郎。もうすぐ佐藤酒造との合併が迫っていた。だが社長・佐藤一成は酒のことを全く分かっていないと態度には出さないが今回の合併にも難色を示していた。彼のあくどいやり方には賛同できず、愛する酒のために殺害計画を立てたのだった。

佐藤は品質会で金賞を受賞した谷元酒造の月の雫を狙っていた。そこに狙いを定めて醸造方法を何とか盗み出すことができないかと深夜に忍び込んで誤ってタンクに転落して事故死したというシナリオ通りに殺害。しっかりと偽装工作も忘れない。

翌日になり谷元の前に刑事にみえない福家が現れた。ここではその外見では想像できないほどお酒にめっぽう強い一面をのぞかせた。だが事件のことになる切り替えが早い。合併のことを突き止めて谷元を疑い始めた。そして犯行現場にいなければ知り得ないことを明らかにされて言い逃れできなくなり試合終了となった。

 

感想/まとめ

面白かった。淡々と進み、淡々と終わるのであっという間の読み終えることができる。

これぞ倒叙ミステリーだとお手本のような見事な小説でしたね。

シリーズ物らしいので読んでみようかな!