~読んできた本の足跡~

~のんびりまったり日々読書~アニメや雑談も~

柚月裕子さんの「盤上の向日葵」を読んでみた 感想 ネタバレあり

今回紹介するのは柚月裕子さんの「盤上の向日葵」です。将棋界を揺るがす殺人事件。一人の棋士が将棋に懸けた生きざまを描いたミステリーをご覧あれ。将棋のルールを知らなくても感動や興奮を味わえる内容になっているので是非手にとって読んでみてください。

 盤上の向日葵

師走を迎え、将棋界が盛り上がる注目の対戦が組まれていた。若き天才棋士・壬生芳樹竜昇に挑戦するのは東大卒のエリート棋士・上条桂介六段。奨励会を経ず、プロになったという特殊な経歴と才能が何かと話題を呼び、ワイドショーで取り上げられ、世間一般での知名度も高い。成績は両者三勝三敗で並び、勝負は第七局の最終戦に持ち込まれていた。

壬生は、狭き門と言われるプロ棋士への道を14歳という若さで突破した。世間が注目したその後も周囲の期待を裏切らない活躍をしてどんどん成果をあげていった。将棋以外の部分でもテレビや雑誌への露出をして、世間一般に認知されるようになり将棋をしらない層の女性ファンも多い。

上条は、高校卒業後、東大に入学。外資企業に勤めた後、退職してソフトウェア会社を設立。年商30億を達成して大成功を収めたが、会社の株式を売却して実業家を引退。その後は将棋の道へと進み、アマチュアのタイトルを総なめにしていった。上条の存在を無視できなくなっていた連盟は特例でプロ試験の受験を認めて、プロ相手に勝ち越しを決めて合格したのだ。

将棋界の盛り上がりに貢献している二人の天才棋士。華々しくスター性が輝く壬生と異端児の上条。真逆な歩みを辿ったライバルが対戦する注目の大一番は、山形県天童市にあるホテルで行われている。

その大一番の解説が行われているホールで近況を見守る二人の刑事がいた。お目当ては、上条だ。ある事件を追って、辿りついた重要参考人。いったいどんな事件なのかは下記でもう少し掘り下げていこう。

 

白骨化された遺体が山中から発見された。遺体は殺されてから埋められた可能性があり捜査本部が立ちあがった。遺体と共に発見された将棋の駒。名は初代菊水月作といい、およそ六百万円もの値が付けられるたいへん高価なものだった。

なぜ、遺体と一緒に駒を埋めたのか。その謎が徐々に明らかになっていくストーリは、止まることを知らない。犯人が遺体と一緒に埋めた意図が判明したときの気持ちは、言葉ではいい表せないが胸にぐっとくるものがあったことは確かです。

物語は二つの視点を軸に進んでいきます。

口は悪いが腕はいいベテラン刑事の石破とプロ棋士を目指し奨励会にも所属したことがある佐野がコンビを組み、この事件を追っていくストーリーと上条桂介の人生が描かれたストーリー。

母親の死別、父親からの虐待、幼いころから壮絶な人生を歩んできた上条桂介。そんな彼の唯一の楽しみが将棋だった。将棋を通じて出会った唐沢先生。大学生になり、東京で出会った真剣師の東明。彼との出会いが上条の運命を変えてしまった。彼の将棋に魅せられて真剣師としての旅に同行することになった。そこで一幕があり、唐沢先生から頂いた初代菊水月作を勝手に売却して、失踪した東明。実業家として成功を収めて、駒は手元に取り戻したが、今度はどこかから聞きつけて金を無心にやってくる父親。同時期に現れた東明。売却した件で借りは返すといい、囁かれた言葉に選択したのは一線を越えた父親の殺害を依頼だった。切っても切れない関係になった二人は東明の願いで初代菊水月作で最後の勝負を指した。病気で身体が限界だった東明は、対局後自決した。

白骨化された遺体と一緒に埋められた駒の意図。それは香典だった。

 

背後に迫った刑事と対局の結末。どのような最後を迎えるのかは是非読んで確かめてほしいですね。

 

感想/まとめ

面白かった。分厚いページでボリュームがあるタイプの小説ですが、気にならないです。楽しさの方が勝るからですね。登場人物に魅力は残念ながら感じませんでしたが、ストーリの描き方には魅力を感じました。あの時の選択が分岐点となり、違う方を手に取っていればと考えてしまう。でもこの出会いや結末も将棋に導かれた彼の運命だったのでしょうね。

 

奨励会という佐野刑事に将棋で何か見せ場というか活躍する場面がもう少し欲しかったという欲を最後に締めたいと思います。

 

9月8日からNHKで実写ドラマ始まったみたいですね。

ようやく録画していたドラマを観ることができました。さっそく、おやっと感じた点を挙げると佐野さんが男性ではなく女性に変更されていましたね。原作改変は時には厳しい批判に繋がる手ですが、違和感なく溶け込んでいましたので原作ファンとしては満足でした。MC役の山寺宏一さんや解説役の加藤一二三さんも出演していて、ドラマ版ならではの、いい味を出してましたね。