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歌野晶午さんの「密室殺人ゲーム王手飛車取り」を読んでみた 少々ネタバレあり/感想

今回紹介するのは歌野晶午さんの「密室殺人ゲーム王手飛車取り」インターネット上に集まって推理ゲームを楽しむ五人。しかし、彼らが行っているのはただの推理ゲームではない。ここで語られる事件はすべて現実世界で発生したもので、出題者の手によって実行されたものだった。

 密室殺人ゲーム王手飛車取り

頭狂人  :ダース・ベイダーのマスク。物語の視点になる人物

aXe   :ジェイソンのようなホッケーマスク、一人称がワタクシである

伴道全教授:黄色いアフロにレンズぐるぐるメガネをかけている。吾輩キャラ

ザンギャ君:水槽に入ったカメを映している

044APD :画像を粗くして素顔のまま、無口でボソボソ話す

 

この五人はインターネット上で知り合った。お互いニックネームで呼び合い、それ以外のことは何も知らない。むしろお互いを知らない方が好都合であった。

彼らはインターネット上で推理ゲームを楽しんでいた。映像と音声によるチャットでお互いの様子を見ながら進められて、問題は殺人に関するもの。一人が問題を出し、残り四人が答える。ここまでなら皆さんが想像する推理ゲームとなんら変わりのないことでしょう。しかしながら一つだけ決定的な違いがあった。

彼らが出題している事件はすべて現実世界で発生したもので、出題者の手によって実行されたものだった。

 

▼次は誰を殺しますか? 出題者:aXe

被害者は、ディズニー大好き女子短大生。意図的に操作された時計の針が四時を指していた。現場には意味不明なメッセージが残されていた。もちろんaXeの仕業であり、ヒントでもあった。頭狂人はマスコミの振りをして同級生に近づき、情報を引き出そうとインタビューをしたが不発に終わった。

第二の被害者は、山手線の車内で刺された男性。プロ野球観戦のため上京、中日ドラゴンズのファン。時計の針は三時を指していた。またしても現場にはメッセージが残されていた。

第三の被害者は、ジンギスカン店長の男性。時計の針は十一時を指していた。その後も出題者:aXeによる犯行は続けられるが、一向に正解者は現れない。ここまで数カ月が経過していて、モチベーションも低下してきた。それでもaXeは後二人でラストだからと強引に話をまとめてしまった。

そして最後の被害者は、全身蛇柄でかためて金運を上げている宝くじの男性。

ここでようやく044APDが何かに気づいたようだ。

 

▼推理ゲームの夜は更けて 出題者:伴道全教授

伴道全教授には実行する時間がないということで仮想で行われた。

特急列車内で男性が殺された。殺したのはもちろん教授だが、確固たるアリバイがあった。死亡推定時刻には別の特急列車に乗っており、偶然知り合った乗客が10分以上は席を離れなかったと証明したのだ。

しかし、以前乗ったことがあるという頭狂人があっという間に解決してしまったので、教授はお手上げ状態だった。

 

▼生首に聞いてみる? 出題者:ザンギャ君

公園で首のない身元不明の死体が発見された。三日後に自宅のアパートで首が発見されて身元が判明した。被害者は工場に勤める男性で首は花瓶の上に生けられていた。ちなみにアパートの前では工事をしており、警備員は怪しい人物はいなかったと証言している。こういった感じでアパート全体が監視されている状態で、犯人はどうやって首のない死体を公園にまで運んだのかが問題である。

 

ホーチミン浜名湖五千キロの壁 出題者:伴道全教授

アリバイ崩しのリベンジマッチ。

浜名湖サービスエリアの駐車場で女性が殺害された。教授はその時刻にベトナムにいたので犯行は不可能だと言う。はたして今回はぎゃふんと言わせることが出来るのか?

 

▼求道者の密室 出題者:044APD

安心安全を売りにした一戸建ての住宅街で男性が殺害された。全戸セキュリティ・システムの導入と警備員を常駐させて、外から出入りを二十四時間目を光らせている。人と機械、二重の監視網を突破しなければいけない。

044APDに勝利するために解答者の四人は一旦手を組んで推理することで一致した。強固なガードとして立ちふさがる密室を警備員や他の住人に気付かれることなく、どのようにして殺害したのか。

 

▼究極の犯人当てはこのあとすぐ!

クライマックスに向けて一息。

 

▼密室でなく、アリバイでもなく 出題者:頭狂人

自宅のマンションで倒れていた兄を帰宅した妹が発見した。通報後すぐさま病院に搬送されたが息を吹き返すことことはなかった。オートロックのマンションと鍵のかかった部屋に死体がある密室、、、解答者からは、また密室かと二番煎じの問題にブーイングが飛んだ。

その後、頭狂人はチャットでザンギャ君から現場を見に行って来たと言い、素顔を画面上に晒した。見覚えがある顔、、、そう生首に聞いてみる?事件の被害者の同僚で第一発見者の彼だった。頭狂人は話を聞きに行った際にリアルでザンギャ君と会っていたのだ。

そして今回の事件。身内なら妹なら密室の謎は関係ない。そして身元が割れるような問題は出さないという先入観を逆手にとった謎だった。

 

そして、主を失くした兄の部屋に入った頭狂人は、ある発見をする。どこか見覚えのある空間。パスワードを要求したパソコンのディスプレイに〈044APD〉と入力するとデスクトップ画面が現れたのだった。

 

▼誰が彼女を殺し(救え)ますか?

頭狂人に呼び掛けにより、オフ会が開かれた。

頭狂人  :新妻美夜子、大学生

aXe   :警察官会計課

伴道全教授:女子高生

ザンギャ君:工場の従業員

044APD :新妻輝悦、ひきこもり

 

上記のように身分を明かして顔合わせを済ませた後、突然頭狂人がゲームを仕掛けてきた。

説明によると、三人を椅子に座られて自分は別部屋で待機。頭狂人の椅子の下に爆弾が仕掛けており、起爆スイッチは四人の椅子の下に組み込まれている。本物の起爆装置は一つだけで、残りはダミー。立ってみないと分からない仕掛けになっていた。

冷めやすい性格をしている頭狂人は、兄を殺したことで推理ゲームにも飽きがきてしまった。次のステージとして、この生死をかけたゲームに刺激を求めていた。それなのに、あれほど人を殺してきた彼らがあたふたと理由をつけて説得に回っている姿は滑稽だった。

はたして彼らが選択する答えはいかに?

 

感想/まとめ

面白かった。結局最後どうなったのか知りたい感情が残ったが、続編があるらしいのでそちらに期待したい。

事件を解決するぞ!という気持ちはいつも通りなく、僕はスルーして登場人物に任せることにして純粋に彼らの物語を楽しんでいました。

彼らの遊びの為にトリックを使われて死んでいった人達が不憫でならない。合掌。

従来の推理ゲームと一味違った今作を是非読んでみてください。

 

 

内容とは関係ないけど頭狂人の「お兄ちゃん」呼びにアンテナが反応した。妹ものが大好きな僕としては見逃せないシーンだった。殺人者から出た言葉にギャップを感じ、萌え(古いか?)た。誰も注目しないシーンだろうがこの感情を残しておきたいがためにここに記しておく。