太田愛さんの「幻夏」を読んでみた 感想

今回紹介するのは太田愛さんの「幻夏」です。冤罪事件に翻弄された家族。引き裂かれてしまった運命が２３年の時を経て動き出す。

 幻夏

引っ越してきた尚と拓という兄弟と友達になって遊び回っていた小学生時代の相馬。夏休みを終えて初日の登校日に夏の最後の思い出と一緒に花火大会に行くことを約束していた。だが、忘れ物をしたと家に引き返したのを最後に尚は忽然と姿を消して戻ってくることはなかった。

それから２３年が経過したある日のこと、探偵・鑓水七雄の元に失踪した息子を捜してくださいと尚の母親・水沢早苗から依頼が舞い込んだ。妙な依頼人だと危険を感じながらも引き受けることになった。ある事件で命を助けられた恩があり鑓水にいいように使われている修司と共に調査を開始した。

一方警察官となった相馬は、発生した少女誘拐事件の目撃情報を当たっていた。いなくなった少女は大物人物の孫娘で警察内部はスピード解決のため慌ただしく動き回っていた。連れ去られた現場で相馬は「//＝｜」という記号を発見した。それは、２３年前に尚が失踪した現場にも残されていた記号だった。見間違えるわけがない。相馬は上に報告をしたが警察組織の中ではぐれ者にいる彼の意見は取り合ってもらえなかった。

小学生時代の相馬、尚、拓の過去と水沢早苗の依頼と少女誘拐事件を追う現在を行き来する形で物語は進められる。鑓水&修司は水沢尚の行方を調査するために、二人が知らない子供の頃の尚を知る相馬はあの夏に向き合うために協力関係を結んだ。

そして調査をしていくうちに尚や拓の家族が引き裂かれた事件。犯人として逮捕された父親・柴谷哲雄は冤罪だったと判明する。無罪が証明されて釈放後に事故死しており、この冤罪事件は世間では騒がれることもなく埋もれたままだった。事故死した現場は尚の家の近くで、その四日後に尚が失踪した。そこに「//＝｜」という記号と少女誘拐事件はどのように関わってくるのか。

冤罪によって、引き裂かれた者たち。その物語は２３年の時を経てようやく完結を迎えようとしていた。何重にも思惑が重なり複雑に絡み合い、悲しい運命と真実となった物語。

感想／まとめ

普通でした。感想に覇気が感じられないのはあんまり警察小説は好きではないので申し訳ないです。完全に好みの問題なのでスルーしてください。冤罪系は、特に苦手です。

シリーズもので、今作は二作目にあたるそうです。

鑓水探偵の残った言葉

「彼にとって、尚は幼なじみになるはずだった。あなたと、ここのマスターみたいに」

そういう未来もあったのかもしれないと思うと残念でならない。

最後に尚、拓と相馬が出会うシーンを持ってくるのはストーリーの鉄板ともいえる展開だが、ウルッときてしまった。尚の友達になれるといいなと真っ白な心境が読後感の苦みを和らいでくれたのが救いでありました。