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住野よるさんの「よるのばけもの」を読んでみた 感想

今回紹介するのは住野よるさんの「よるのばけもの」です。日中は人間で学校に行く僕、夜になるとばけもになってしまう僕。二通りの僕が描かれた先に見つけた本当の僕の姿とは何か?

 よるのばけもの

▼夜

夜になると突然変異でばけものになってしまう僕。全身を黒い粒で覆われ、六つの足と八つの目玉が特徴な大きなばけもの。最初は混乱したものの今では受け入れており、自分の意思で大きさを自由自在に操ることができるようになっていた。この姿になってから夜の探検へと日々出かけるのが日課になっていた。

 

ある夜、学校に宿題を忘れてばけものの姿のまま取りに行くことにした。目的の宿題を回収して帰ろうとした時、「なにし、てんの?」と声をかけられた。彼女は、クラスメイトの矢野さつき。僕の正体を安達、あっきー(あだ名)だとすぐに見破った。言葉の切る場所が独特な彼女は夜の学校で夜休みをしていたという。お互いこのことは秘密にしようと約束してまた明日と解散した。

 

▼昼

矢野さつきはいじめられていた。空気の読めない行動によりいじめのターゲットにされていた。僕も彼女の行動一つ一つが原因で自業自得だと正当化を理由に関わらないようにしていた。クラスメイトから夜に怪獣が出るという噂を聞くようになる。

 

▼夜

夜ばけものの姿になって学校に行くと矢野さつきがいた。どうして夜の学校にいるのと尋ねてみた所「昼休、みがないから、夜休みに遊びたく、て」と返ってきた。彼女にとって昼の学校の休みは無いに等しい。だから夜に学校に来て休んでいるという。警備員も協力して夜の一時間だけ見逃してくれているらしい。

今できることをしようと、二人で夜の学校探検することになる。噂に危機を感じ、見つからないようにイメージでばけものの分身を作りだし、周囲の偵察と警戒にあたらせる。学校の七不思議的な理由に音楽室へと向かったが特に変化はなし。夜休みのタイムリミットの時間になり、帰る前に伝えたかったこと昼に彼女のことを蹴ってしまったことを謝ったが、「お昼のこと、を夜に謝、らないで、よ」と断られた。

 

▼昼

一切の躊躇なくクラスメイト側へと立場を置くことができればいいが、それが下手な人間もいる。その代表格がクラスメイトの井口である。誰にでも笑顔を振りまく優しい人間の彼女は、矢野がいじめられている姿を見て、気にしている。そんな彼女にちょっとした事件が起きる。矢野が落とした消しゴムを拾ってしまったのだ。身体が勝手に反応したのだ。無視すればいいのに井口には矢野を無為する習慣がなく、その優しさが仇となりクラスメイトとの関係に亀裂が入った。

 

▼夜

火を吹くことを取得した僕。

 

▼昼

僕の最悪な予想が的中して井口のノートに落書き、あの件が原因で標的にされていたのだ。その日、日直だった僕と井口は放課後の教室で二人だけになった。気にしないほうがいいよと無責任なアドバイスを送ったが、しょうがないよと受け入れている様子だった。私も矢野さんに同様なことをした因果応報なんだと口にした。

 

▼夜

矢野のノートに落書きしたのは強制されたからで、井口は悪いことをしたと謝っていたと伝えたところ、何を勘違いしたのか僕が井口のことを好きな人だと決めつけてしまった。別れ際の「いい子が傷つ、くのはやだ、ね」と言う言葉が反芻して残った。

 

▼昼

前触れもなく井口をビンタした矢野。ちょっとした荒れと発展した教室。先生が何とかその場を収めたが、矢野のことがさらにわからなくなってしまった。

 

▼夜

「いぐっ、ちゃん無視され、なくなったでしょ」

矢野さつきは頭のおかしな奴という前提条件が崩れてしまいそうになった。無視されても挨拶して、いじめられてもにんまりと笑い、毎日登校する。そんな奴だからこの状況もしょうがないと思っていたが、それが違っていたら。彼女なりに必死に考えて行動、生きているんだとしたら、どうなんだろう。これまでのクラスの判断は、、、とここで僕は無理矢理思考を停止して考えることを辞めた。

 

その後、噂を確かめるようにクラスメイトが夜の校舎に忍び込んで襲撃するイベントが発生。防戦になりピンチになる場面もあったが、僕は追い払うことに成功した。

そして矢野さつきのにんまりと笑う表情の意味を知る。楽しいから笑っているわけではなく、怖いから笑っていた。クラスメイトとの方向性のずれを恐れるようになる僕。知らぬ間に矢野さつきと過ごす夜に依存していた。昼と夜どちらの姿が本性なのか。自問自答して答えを求めたが、判断できなかった。

 

▼昼

「おはよ、う」と朝教室に入る時に矢野は挨拶をする。

無視されると分かってても挨拶してにんまりと笑う。

頭のおかしい故いにやっているのではないことを知ってしまった。

昼の僕と夜の僕。どっちを選択するかいまだに決められないけど咄嗟にでた言葉が、

「おはよう」だった。

「やっと、会え、たね」

無理のない自然な笑顔えを向けてくれた。

この行為により、これからの学校生活は茨の道になることは容易に考えがつく。

どっちの僕も僕だ。

この選択を理解してくれる可能性を信じて待つ。

 

その夜、久しぶりにぐっすり眠ることができた。(了)

 

感想/まとめ

面白かった。

いじめがテーマなので躊躇していましたが読んで良かった。ただのいじめの物語なら読まなかったと思います。昼と夜の二面性を用いてばけものという対象を生みだした。その巧さに引き寄せられた。

ぐっすり眠ることができたということはばけものにならずに済んだ証。しこりが取れたということなのでしょう。領域外の読者から見れば、異常に見えるこの現状も正当化するに値する行動なのでしょう。

彼らは、まだ中学生。これを忘れてはいけない。

色々と考察する部分があるようですが、僕は苦手なので省略します。委ねられるタイプの小説だと個人的には残念ですね。

 

矢野さんが語っていた三人とは誰のことを指しているのか推理するのも良いかもしれませんね。

「いじめるのが好、きなふりし、て本当は誰かを下に見、てないと不安で仕方な、い女の子?」

この女の子は誰を指しているのか。候補は少ないので予想しやすいはずですが、はたして。

「頭がよ、くて自分がどうす、れば周りがどう動、くか分かって遊んでる男、の子?」

これは笠井くんのことを指しているのでしょうね。矢野さんも緑川さんも彼のことをよく思っていない感じからして間違いないでしょう。

 

「喧嘩しちゃっ、た元友達が、ひどいことされてて仲直りも出来な、くて、誰に対しても頷くだけしか出来、ない癖に責任を勝手に感、じて本人の代わりに仕返、しをして、る馬鹿なクラスメイ、ト?」

これは緑川さんのことでしょうね。条件に当てはまるのは彼女しかいませんからね。

 

そして能登先生の正体も掴めない。矢野さんと先生とのつながりがあるからこそ安心して夜の校舎で安達くんと密会できていたのかな。プレゼントを贈るほど仲がいいと思える描写もありましたからね。

 

こうして振り返って考えてみるとまた違った面白さが見えてきますね。

楽しめました。ありがとう!