木下半太さんの「悪夢のエレベーター」を読んでみた 感想
今回紹介するのは木下半太さんの「悪夢のエレベーター」です。エレベーターに閉じ込められた四人。すぐには救助が望めない密室に精神的に追い詰められていく。そして、ついに事件が起きる。笑いと恐怖に満ちた傑作コメディサスペンス。
悪夢のエレベーター
小川順が目を覚ますと、故障して停止したエレベーターで横たわっていた。後頭部の強烈な痛みの影響か記憶があいまいである。それよりも三人の顔が、心配そうに小川を覗きこんでいた。うさんくさく無精ひげを生やした富永、オタクっぽいとこかバッタを連想させる牧原、自殺願望があるコズロリ少女カオルであるとそれぞれ名乗りあった。彼らの話では、小川が乗り込んだ直後、エレベーターが急降下し、その時の衝撃で壁に頭を打ち付けて気絶していたらしい。
そんなことより小川は今すぐにでも帰宅しなければいけない事情があった。妻の麻奈美から産気づいているという連絡を受けていたのだ。非常ボタンはうんともすんとも言わず、大声で助けを呼ぼうとするが、息が合わない。気がつくと携帯電話も腕時計も無くなっており、外部との連絡はできない状況である。その後もあの手この手で脱出を試みようと奮起するが、深夜のマンションでは絶望的である。
小川の焦りとは裏腹に妙にのんびりとした様子の三人。それでも閉じ込めらたもの同士の連帯感が生まれ、なぜこのエレベーターに乗り込んだのかをお互い話し始めた。そして、ちょっとしたゲームのつもりで始めた秘密の告白が思いもよらない展開を巻き起こす。
▼カオル
ひきこもり生活を送っており、姉だけが心の拠り所であった。ある日のこと、娘のことを心配した両親がカウンセリングを受けさせようとした。自宅に派遣された先生との会話を無視続けていたら、次第に姉と仲良くなってしまう。姉を取られると勘違いしたカオルは派遣先の青少年センターを放火した過去があると秘密を打ち明けた。
▼富永
空き巣常習犯の富永は、高級住宅街のあるお宅に忍び込んだ。家族旅行の隙を狙って忍び込んだものの、一人娘がベットで眠っていた。静かに寝息を立てている彼女を見て魔が差し、用意していた薬品で深く眠らせレイプしたと秘密を打ち明けた。
▼牧原
パチンコ屋の駐車場で一人で遊んでいた幼女に声をかけて車に誘いこんだことがあると、幼女誘拐の秘密を打ち明けた。
身の危険を感じ取った小川もまた不倫していること、このマンションに浮気相手が住んでいることをしぶしぶ打ち明けた。三人からこのまま救助が来なければこのまま命を落とす可能性を指摘され、レコーダーに妻に向けての謝罪と本心を録音することになった。
ところがこのタイミングどこからかアラームが鳴り響き、失くしたはずの腕時計が発見された。何か隠し事をしていると感じ取った小川は三人の関係性を問い詰めるが、逆に反撃に遭い、薬品を嗅がされ、また眠ってしまう。
この後は富永を中心に彼らの視点で物語は続いていくが、目的はいったい何なんだ。
最後の最後までどんでん返しに目が離せない。
感想/まとめ
面白かった。
小川さんも人生最悪の夜だと嘆いていたが、自業自得でもあるからあんまり同情できないね。
このシリーズは笑いも絶えないから大好き。特に一番のお気に入りは悪夢の観覧車です。
テニス選手のアガシ。懐かしすぎる。