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西澤保彦さんの「夢魔の牢獄」を読んでみた 感想

今回紹介するのは西澤保彦さんの「夢魔の牢獄」です。

夢魔の牢獄

主人公の田附悠成(たづきゆうせい)は過去へ遡行し、その時代の人達に憑依することができる特殊能力を持つ。当事者の五感を通じて追体験できる一方で、誰に憑依するのか自分の意思で選ぶことはできない。

 

さて今作は22年前に迷宮入りした殺人事件の真相を探っていくことがポイントである。

1988年、10月のこの日。碓氷徳幸と乗富雪花の結婚式と披露宴が行われた。全てのスケジュールを終え、新郎新婦と親密だった吹奏楽部OBのメンバーたちで軽く一杯と三次会へ。

雫石灯子:吹奏楽部顧問

美濃越陸男:一学年上の先輩

加集惣太郎:一学年上の先輩

藤得未紘:二学年上の先輩

乗富木香:雪花の妹

上記のメンバーで心地よい余韻が残る時間を過ごした後、男性陣は四次会に、女性陣は帰宅する流れでお開きとなった。まさにその日の夜に一晩中無人となるはずだった雫石家で灯子の義理の息子・雫石龍麿が殺害されるとは思いも寄らなかった。しかも、この三次会に出席した八人のメンバーの中に、龍麿を殺害した犯人がいるのではないかと警察に疑われることになる。

悠成は友人たちや被害者に憑依し、事件の起きた日の関係者たちの行動や思惑などを追体験し、複雑に絡み合った事件の真相を暴いていく。

 

こちらには選択権がなく、他人のプライバシーをのぞく背徳感あふれる行為だが、今回のように登場人物の複雑な関係が事件の鍵を握っている場合などは大いに役立つ能力である。これまで本人しか知らなかったことを追体験で知ることができて、入手した様々な情報を読みとりながらパズルのように組み立てていく過程も読み応えアリ。

 

さて忘れてはならないのが濃密な性描写である。西澤作品には度々登場しますが、今作も強烈なアブノーマルで攻めてきます。悠成も男女問わず憑依し、性行為を味わうのですが、普通はあまり目にする機会のない類のセクシー下着に行く先々で遭遇する。冗談のようにふざけた話だが、ここから意外性を孕んだ人達との親密さが浮かんできて真相解明の後押しをする。

 

あの日を何度も体験したからこそ掴んだ驚愕の真相とは。

 

感想/まとめ

面白かった。

「七回死んだ男」と比較されがちですが、あの感じのノリで詠み始めると、大やけどしそう。それでもこのドロドロした感じが、まさしく西澤さんの作品なんだなぁと噛みしめながら読んでいると、つくづく相性がいいだと実感しますね。

 

僕は全作品の中で「七回死んだ男」が一番好きなので、そちらの方から読むことをおススメします。