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西澤保彦さんの「幽霊たち」を読んでみた 感想

今回紹介するのは西澤保彦さんの「幽霊たち」です。複雑に描かれた人間関係が、事件を複雑にする。さらに主人公だけが見える幽霊がこっそりと教えてくれる真実とは。現在から過去に飛び未来へとつながる本格ミステリーをご覧あれ!

 幽霊たち

入院中のミステリー 作家の横江継実のもとに、殺人事件の捜査をしている刑事が訪ねてきた。加形野歩佳(かなたのぶよし)という人物に心当たりはありませんかという話だった。野歩佳は知らないが、義理の母方の叔父と叔母にあたる加形家の広信(ひろのぶ)とは、同い年で高校まで一緒だった。しかし、加形家とはすっかり没交渉となり、ヒロ(広信の呼び方)ともここ数十年会ってないと答えた。

 

事件はビジネスホテルの一室起きた。被害者は、多治見康祐。自ら通報して殺害を認めたので逮捕された野歩佳だったが、肝心の犯行に至った経緯が一向に分からない。彼の供述も曖昧でピンとこない。ポケットから現金百万入りの封筒が見つかり、何か弱みを握られて口止め料を要求されてもつれた末の犯行だと判りやすいストーリが浮上したが、彼のその後の行動がしっくりこなくてすんなりと事件解決だといかない。こう着状態が続いていたときに、野歩佳が動機が知りたければ横江継実という人物に訊いて欲しいと語ったのだった。

 

それでは被害者の多治見康祐は知らないかと刑事に訪ねられたが、聞き覚えはあったが思い出せないでいた。すると彼にしか見えない幽霊の里沙から横やりが入って、そう言えばと思い出した。ジミタと呼んで、ヒロの家で遊んでいた遠い記憶のことを。その流れで康祐の妻も何者かに殺されていたことも教えてくれた。ここまで色々な接点が見えてきた事件だが、未だに謎は多かった。

 

現在から過去に飛び未来へとつながる構成になっているのだが、一つだけ特殊な点がある。それは継実には火事によって亡くなった理沙(親戚)の幽霊が見えることだ。継実やヒロやジミタと同い年でいっしょに中学生になるはずだった少女。現在幽霊となって彼のそばを離れないでいる彼女がのちに重要な役割を果たすことになる。

 

複雑に描かれた人間関係が物語にどのように作用するのか。

そして、なぜ継実の名前が出たのか。

明らかになる事件の真相とは?

感想/まとめ

家系図が複雑すぎてより人を選んでしまう小説になっている。西澤さんの自称ファンですが、別の作品をおススメしたいと思えてしまうほど、ちょっと今作は厳しいかな。

しかし、なぜ継実の名前が出たのか、この答えに辿りつくまでに計算されたロジックはさすがです。最後の最後におっと言わせる秘密もあり、楽しめたことには偽りないです。