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浅ノ宮遼さんの「臨床探偵と消えた脳病変」を読んでみた 感想

今回紹介するのは浅ノ宮遼さんの「臨床探偵と消えた脳病変」です。臨床医師として活躍する西丸豊を描いた短編集。『片翼の折鶴』を改題文庫化!

 臨床探偵と消えた脳病変

▼血の行方

重度の貧血で入院中の男性。原因を特定するためにさまざまな検査が行われたが出血場所を特定するまでには至ってはいない。彼には自分で血を抜く行為、、、瀉血という前歴があるため担当の女性医師はそこに原因があるのではと追及する。しかし本人はもう瀉血はやっていないと訴える。

 

▼幻覚パズル

少年は幼なじみの少女の家を訪ねるが何者かに頭を殴られて意識を失ってしまう。事件に関わっていると思われる人物を目撃した祖母と少女双方の言い分を照合するが、どうも辻褄が合わない。鍵は認知症にあるらしいのだが、、、

 

▼消えた脳病変

医科大学の脳外科臨床講義初日のこと、初老の榊講師は意外な問題を学生に投げかけた。海場硬化症という病気で通院している患者いる。その患者が昏睡に陥ったので、検査してみると、なんと病変が消えていたのだ。病気によって変性してしまった脳は自然修復しないのが常識だ。海場硬化症もまた自然治癒する病気ではないと榊講師は経験談を語り

諸君には、これから二つの謎に取り組んでもらう。

一、患者が昏睡に陥った原因は何か。

二、海場硬化症による病変が消えてしまったのはなぜか。

 最初に正解した者には試験で五十点をプラスすると学生たちから歓喜この声があがった。だが難易度が高く正解に辿りつけない学生たちが続出する。すると先ほどまでの態度から一変し医者として考えることを辞める行為は患者の死を意味する。医者としての覚悟はあるのかと厳しめの言葉で檄を飛ばす。

静まり返る講義室の中でただ一人、西丸豊だけは真相に辿りついた。

 

▼開眼

四肢まひの男性が呼吸困難で運ばれてきた。これまで何度か同様の症状で運ばれてきており、そのたびに喘息に沿った治療が施されてきた。今回もマニュアル通りに喘息発作の治療開始したのだが、容態は一向に回復する兆しが見えない。一体何故なんだ?

 

▼片翼の折鶴

癌に体を蝕まれ、余命わずかな妻の願いを叶えるためにある決意をした夫。その裏に隠されていた想いとは?

 

感想/まとめ

面白かった。専門的でもありながら、僕のような一般な人にも楽しめた。

医者であり、探偵でもある(本人は否定するが)西丸豊の人柄にも好感が持てる。冷静さ、時に必要な冷淡さ。厳しさと優しさは紙一重なんだと気付かされる。

▼消えた脳病変が特にお気に入り。ホームズのあの言葉になぞられて解答を導く手腕にテンションあがりました。

 また一人楽しみの作者さんが増えました!