髙森美由紀さんの「ペットシッターちいさなあしあと」を読んでみた 感想
今回紹介するのは髙森美由紀さんの「ペットシッターちいさなあしあと」です。死期をにおいで正確に予知して、最後を看取るペットシッター「ちいさなあしあと」。依頼された大切な家族との別れには、それぞれの物語があった。
ペットシッターちいさなあしあと
斉藤陽太が社長を務めている「ペットシッター ちいさなあしあと」。ペットの看取りを行っている会社である。陽太は小学校の頃に遭った事故が原因で生物のにおいで正確な死期が判断することができるようになった。その能力のおかげで評判は良く、経営は安定していた。従業員は、動物の言葉を理解することができる小島薫とぽっちゃり体系でひとのいい笑みで人気の柚子川栄輔。かれらのもとを訪ねてくる依頼人にはさまざまな物語があった。
第一章 貴婦人の秘密
桐生夫妻(夫・清二 妻・珠緒)の飼い猫・啄木が老衰のためにあと数日で旅立とうとしていた。啄木はもともと家の前に捨てられていた猫であった。人懐っこい性格で家族の一員になるのに時間はかからなかった。
実は、現在認知症で施設に入所している清二の浮気相手が飼っていた猫であった。そのことを知っていていながらも珠緒は別れることはせずに、長年夫婦として付き添っていた。家族の寿命が尽きるこの区切りの日にその真実を清二にぶつけて清算した。珠緒にも死期が迫っており、夫より先に逝くことが彼女なりの復讐でもあった。
それでも動物の言葉を理解することができる薫がメッセンジャーとなり啄木の最後の言葉を珠緒に伝えたことで、わだかまりがとける結果となった。
第二章 起点
小学生時代の陽太。交通事故に巻き込まれて左手を骨折、入院中である。初めての入院体験に興奮していたが、いざふたを開けてみればつまらなく、暇を持て余していた。そんな時、患者の放つ強烈なにおいが気になるようになった。見舞いにきた友達は全く感じることがなく、陽太だけが感じ取っている模様。そして入院患者が亡くなりにおいを感じなくなったことで、人の死期がにおいで分かる能力を手に入れたと高揚していた。退院する頃には、においの強弱で正確な死期まで判断できるようになっていた。
それまで陽太の能力を好ましく思っていなかった母・住乃は態度を一変し、陽太の能力を生かしたビジネスを始めた。しかし、その能力が災いして誘拐されてしまう。無事に保護されたが住乃は責任を感じて死期を当てさせることをやめた。
大学に進学して将来のことを考える時期に来た陽太は人の下に就くことよりも上にたってやりたいことをやる、プラスこのよう能力を生かせる職業、、、ペットを看取る会社に狙いを定めて人生設計をたてた。ペットシッターのバイトでノウハウを学び、「ペットシッター ちいさなあしあと」を立ち上げたのだった。
第三章 可愛いあたし
海外勤務で家を開けていた父・智雄が日本に戻ってきた。久しぶりの再会に浮かれている住乃だったが、陽太は違った。死期が迫っている父を見抜いていた。
一方会社には依頼人として元彼女の小林絢が現れた。飼っているブルドックのピッグがそろそろ寿命の尽きるとのことで看取りを頼んできたのだ。
陽太が確認してみると、タイミングが悪いことにピッグの旅立つ日と二次元のイベントとの日が被ってしまった。そこでピッグのことを陽太に頼んだ。看護師としての激務をそのイベントのために頑張ってきた彼女はイベントの方を優先する予定でいた。薄情とも感じてしまうが、飼い主としてはまともであると陽太は評価している。イベントには大好きなキャラクターのコスプレをする人に会えるチャンスがある。彼の為に顔を整形するほど熱中していた。
メッセンジャー薫が伝えたピッグの気持ちに絢はどう応えるのか?
第四章 そういうこと
飼い犬の死ぬ日と、姪の出産予定日が重なってしまい陽太に看取りを依頼してきたご夫婦。逝く命があれば、この世に誕生する命もある。亡くなった智雄が、それはすばらしいことだと語っていた意味を知り、またひとつ成長した陽太。そしてこの依頼を通じて感情表現が乏しい薫のことを少し理解したのだった。
感想/まとめ
面白かった。
動物を見るのは好きだけど、実際に飼ったり、触れ合ったりするのは苦手な僕ですので、この本のようにペットとの別れを完全に理解することができないです。それでもペットの枠を飛び越えて、家族の一員として愛されていることは感じることができた。