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知念実希人さんの「祈りのカルテ」を読んでみた 感想

今回紹介するのは知念実希人さんの「祈りのカルテ」です。研修医として様々な科を回り、患者と向き合っていく短編集。さんざん迷い、悩み、そして彼が見つけた進むべき道とはどこだ!もちろんお馴染みの医療ミステリーです。

 祈りのカルテ

▼彼女が瞳を閉じる理由

純正医大付属病院で研修医をしている諏訪野良太。医学部を卒業して研修医として臨床研修を受けている最中である。研修医としての二年間で内科、外科、小児科、産婦人科、救急など、様々な科を回り医者としての基礎的な力をつけていくのだ。家庭環境も影響してなのか相手の顔色を窺うのが抜群にうまい諏訪野。場の空気を敏感に感じて、読んでどのように行動すればいいかを判断できる。所謂いい人なんだが、時にそれが医者として欠点になることもある。

そんな彼が、研修中に様々な科を回り患者と接していくなかで、能力を生かし隠された謎を解き、進むべき決めるまでの道のりを楽しみながら注目したい。

 

諏訪野が救急部で当直をしていると患者が搬送されてきた。運ばれてきたのは山野瑠香、二六歳、女性、睡眠薬を多量服薬した後、自分で通報してきたとのこと。しかし、普段の救急搬送とは違う雰囲気に戸惑いを覚えつつも処置に当たった。ベテランの看護師から教えてもらった情報によると彼女はここの常連さんであり、これまでに何度も睡眠薬の多量服薬で搬送せれてきていたのだ。腕には煙草を押し当ててつけられた火傷の跡。「あきら」と元旦那の名前を痛々しく刻まれていた。元旦那の気を引くためにこのような行動をしているのか?彼女が言った、明後日には出ていくからという意味とは?

諏訪野が持っている能力が彼女の心を暴きだす。

 

▼悪性の境界線

今度は外科で研修中の諏訪野。『螺旋の手術室』で登場した、冴木真也の下で学んでいた。患者は高齢の近藤玄三。早期の胃がんと診断されて、本人も納得して内視鏡でガン細胞を切除することになっていた。しかし、スーツ姿の男が病室に現れてから一転、内視鏡の手術ではなく、腹を切って胃を摘出する手術へ変更してくれと、さらに来週中にしてくれと無茶な要望を出してきたのだ。わざわざリスクの高い手術を望む意味とは何か?

 

▼冷めない傷痕

今度は皮膚科で研修中の諏訪野。患者は、重い火傷を負った守屋春香という女性。火傷した個所は感染症に弱く、頻繁に軟膏を塗りや包帯の交換などの処置が必要となる。そのため病院に泊まり込みで諏訪野が処置に当たっていると、ある違和感を覚えた。彼女が説明したことを真に受けると、ありえない場所に火傷をしていることに。そして広がりをみせる火傷の正体と、彼女が隠していた嘘と秘密とは何か?

 

▼シンデレラの吐息

今度は小児科で研修中の諏訪野。患者は、八歳の姫井姫子。呼吸困難で搬送されてきた。幼い頃からぜんそくを持ちの彼女。この数年は落ち着いていたのだが、最近になってまた発作が起きるようになってしまった。検査してみると他の病院で処方されていた薬を飲んでいなかったことが判明して大騒ぎ。そして、入院中に出された薬も飲まずにゴミ箱に捨てられていた。一体誰が何のためにこんなことを?

 

▼胸に嘘を秘めて

今度は循環器内科で研修中の諏訪野。同僚の研修医の大半はすでに専攻する科を決めているなか、諏訪野はいまだに迷っていた。期限はもう今月末までと迫っているのに。今度の患者は、四十住絵里という女優である。VIP患者として入院している彼女の病名は拡張型心筋症。アメリカで心臓移植してから復帰する計画を立てており、病気のことは世間には伏せていた。しかし隠していた病気のことがマスコミに漏れてしまった。セキュリティー万全なはずなのにどうしてなのか。それは命を賭けて闘う彼女なりの布石だったのだ。

 

そして、諏訪野良太が医者として進んだ道とは?

 

感想/まとめ

面白かった。相変わらずの実体験のようなリアリティーとそれに負けない魅力的な医療系の謎で今回も楽しめました。

 

中身で注目していくと、まずは冴木真也の登場ですね。『螺旋の手術室』(旧ブラッドライン)は知念作品の中でも個人的に好きな方なのでよく読んでいます。まぁ、ぶっちゃけるとラストの犯人と対峙するシーンがお気に入りで、そこだけ繰り返し読んでいるというからくりなんですけどね。毎回泣きながら読んでいます。そのシーンだけで計数十回読んだかな。諏訪野に対しても面倒見がいい人感が溢れ出ていて、『螺旋の手術室』を読み終えた後だと、また別な意味で泣けてきますね。

 

そして、代理ミュンヒハウゼン症候群という病名?に聞きおぼえがと脳をフル回転して、あっ、、、確か天久鷹央シリーズにありましたよね。後で確認しておきます。

 

そして、やはり動かされるは人の死なのでしょうかね。腎不全の妹さんがいると言う文章であのラストを察してしまった。諏訪野さんの性格ならどこへいっても活躍できるでしょう。それにしてもあの観察力と推理力、、、探偵にも向いているような。

 

諏訪野良太が脇役として登場する『ひとつむぎの手』も是非読んでみたくなりましたね。