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河野裕さんの「いなくなれ、群青」を読んでみた 感想

今回紹介するのは河野裕さんの「いなくなれ、群青」です。捨てられた人が暮らす階段島。この島にやってきた人は記憶を失っていた。高校生・七草は、この環境に順応して平穏な日常を送っていたが、幼なじみの真辺由宇との再会でこの世界の秘密に迫ろうと動き出す!階段島シリーズ第一弾!

 いなくなれ、群青

捨てられた人が暮らす階段島。およそ二千人が生活しているこの島の人々は、どうしてこの島にやってきたのか、知る人はいない(この島を管理している魔女は例外だが)。高校生の七草(ななくさ)も捨てられてこの島にやってきた一人だ。彼の場合、四日間の記憶が失われて何の脈絡もなく島の海岸に立っていた。それでも悲しみや混乱することなく捨てられてこの島にいるという事実を素直に受け入れてここでの生活に順応していった。

 

島での平穏な生活を送る傍ら、謎が多い階段島について七草はある仮説を立てていた。現実離れした仮説だし、この島での生活も悪くない。ある意味安定した階段島の生活を捨ててまで、真実なんてものを求めるつもりなど彼にはなかったが、幼なじみの真辺由宇(まなべゆう)との再会が望まない変化へ足を踏み入るのであった。

 

真辺由宇とは小学4年生の時に出会い、ある一件で親しくなり、彼女が転校する中学2年生まで付き合いがあった。正義感が強く、正しさを信じてやまない真っ直ぐな少女。自分が納得できないことをとことん嫌い、もちろん階段島の仕組みについても噛みついた。正しさを求めるあまり、たびたび他人と衝突している。

クラスメイト水谷(委員長)は、背の低い女の子でみんなのまとめ役。佐々岡は、音楽・ゲーム大好きで活発な男の子。堀は、コミュニケーションが苦手で口数が少ない女の子。その代わり七草とは文通で意思疎通をしている。

クラス担任で白い仮面で顔を隠しているトクメ先生は謎が多い女性だ。相手によって名前を変えるナドもいる。七草には100万回生きた猫として相手をし、屋上が彼の特等席だ。郵便局員の時任は、日中に赤いカブで島を走り回っている。メールが使用できない島では手紙が主要であるため彼女の働きには大助かりだ。

 

島で生活するために必要な場所や食料などの衣食住は完備されており、日常生活を送るには問題ない。島は海で囲まれており、立地の関係で船も数多くみられる。遠目には陸が確認できるが、船で脱出を試みても辿りつくことはできない。そう、この島を出る為には失くしたものを見つけるしかないのだ。

 

七草のクラスに編入することになった真辺はさっそくクラスメイトや担任を前にして自己紹介と挨拶代わりにこの島から脱出すると宣言して周囲を驚かした。彼女の言葉は直線的で思ったことを口にしてしまう。険悪なムードになる雰囲気を察した七草がフォローをして場をつないでなんとか事なきを得た。七草が誰かに反論する珍しい光景を前に二人の関係性について突っ込まれたが、七草自身もよく分かっていなかった。

 

敵や壁のような障害のない不自由の中の自由での生活に反発する真辺。とにかくこの島の変化を望む彼女は七草を連れだって動き始める。すると相原大地という小学二年生の男の子と出会います。こんな低学年の子まで捨てられたという事実に感情を爆発させて魔女を敵認定する真辺だった。寮に戻って大地を管理人さんへ預けると堀からの手紙が届いていた。いつのも長文ではなく一言「真辺さんは危険」と書かれていた。二人の関係は良好で毎週手紙のやり取りをする仲である。口数が少ないけど繊細で言葉を丁寧に扱おうとする彼女の気遣いは十分に伝わっていた。それでも真辺の理解者である自分が隣にいなければいけないと優しく返事をするのであった。

 

島で連続落書き事件が発生する。デフォルトされた星と拳銃のイラストに簡単な文章が添えられていた。これは魔女へ向けられたメッセージであり、七草が魔女と直接交渉をするために行っていた。現実世界の自分自身に捨てられた人格が階段島での七草であると確信していた。悲観的な人格を捨てて、現実世界では幸せな未来を過ごしている。

ここまでは納得したが、たったひとつだけ許せないことがあった。

真辺由宇は七草にとって考え方や生き方は真逆の英雄であった。真っ直ぐなまでの正義感を持ち、理想を抱えて、極端すぎる正論が故にぶつかることが多かった彼女。そんなありのままの彼女が七草の理想であったのにも関わらず、階段島での再会が許せなかったのだ。彼女が捨てることを望んでいたことが。その件に自分が関わっていたことも。

 

やがて答えを見つけるために階段を登りはじめた七草と真辺。

母親との複雑な感情を捨てなければいけなかった大地。

彼を巡っては意見が対立するばかりで平行線のままだ。

両極端までの価値観の違い。それだけお互いに思っている。その感情は恋愛なのか?それとも、、、

そして、二人が出した結末とは。

 

階段島シリーズ開幕です!

 

感想/まとめ

面白かった。

階段島の一部の謎は明かされましたが、まだまだ謎は多い。

七草や真辺以外の登場人物の物語も深堀されていくみたいなので次回作を楽しみにしたいですね。