~読んできた本の足跡~

~のんびりまったり日々読書~アニメや雑談も~

東川篤哉さんの「館島」を読んでみた ネタバレ少々/感想

今回紹介するのは東川篤哉さんの「館島」です。異能の天才建築家によって建てられた異形の館、で起きた摩訶不思議な事件。嵐が警察の到着を阻む中で招待された女探偵と若き刑事が果敢に立ち向かう!コミカル&ユーモアが光る筆致にも注目したい!

 館島

異能の建築家・十文字和臣が自ら設計した六角形の奇抜な外観と内部に秘められた巨大な螺旋階段、その他もろもろが付属している四階建ての別荘で命を落とした。螺旋階段の踊り場で変死体となって発見された彼の死因は転落死ではなく、墜落死と判断された。しかし建物の周辺には墜落現場が見当たらない。捜査員の懸命の努力にもかかわらず、墜落現場はどこからも発見されることなく、捜査は早々と頓挫した。

 

事件から半年が過ぎたその年の夏、岡山県警捜査一課の若手刑事相馬隆行は、康子夫人に誘われてふたたび十文字家の別荘を訪ねていた。彼女とは遠い遠い親戚関係(ほぼ赤の他人)であり、事件の際は久しぶりの再会にも喜び合う雰囲気ではもちろんなかった。依然として捜査の状況は芳しくないし、捜査本部は解散。縮小された捜査員が細々と継続して捜査をしているだけなので成果の望みは薄いことに対して申し訳なく思う一方で、すでに捜査の担当を外れているし夏休み休暇だと割り切って素直に楽しむことにしていた。

 

▼登場人物

十文字和臣:異能の天才建築家。自信が手掛けた館で墜落死した

十文字康子:和臣の妻。十文字工務店社長

吉岡俊夫:十文字家の主治医

野々村淑江:県議会議員

野々村奈々江:淑江の娘

鷲尾賢蔵:十文字工務店副社長

十文字信一郎:十文字家長男

十文字正夫:十文字家次男

十文字三郎:十文字家三男

青柳新之助:別荘の管理人

栗山智治:フリーライター

相馬隆行:岡山県警捜査一課の若手刑事。康子夫人と遠い遠い親戚

小早川沙樹:私立探偵。康子の姪

 

外観は銀色に染められた巨大なオブジェのようであり、中心が螺旋階段になっている六角形の館。内面は至ってシンプルな造りになっており、円を中心に台形の部屋が六つ配置されていた。部屋割りは一月の和臣墜落死事件の時と同じであり、今回初めて滞在する隆行、沙樹、奈々江は適当な部屋を割り振られた。一通りの挨拶が済んだ後、雑談が続く関係者たちから離れて館の探検&捜査のために三人は抜けだした。隆行が館の案内をかねて、和臣墜落死事件の状況を随時説明していく。そして、和臣が最後の夜を過ごした屋上の展望室へ辿りついた。

 

下から見上げた展望台は大きなドーム状を描いており、内部は四方に延びた十字型の廊下と区切られた四つの部屋で構成されていた。どういうわけかしらないが、廊下には屋根がなかった。また、廊下の中心には六角形の台座と日時計が意味深と設置されていた。事件の夜に和臣は寝室でビールを飲んでいたことを聞いた沙樹は、事件当時の彼の行動を再現するべきだと主張し、旨そうにビールを飲み始めた。事件の謎を解き明かす捜査は小休憩タイムに入り、そのタイミングで十文字信一郎が奈々江をクルージングに誘うためにやってきた。

夏の日差しと快晴の空を肌で感じ最高のクルージング日和になるはずが、海の上でパラセーリングを楽しむ栗山をよそに奈々江との結婚を目論む兄弟が口喧嘩を始めてしまい無茶苦茶になったクルージングは、その夜の晩餐にも尾を引いた。

 

深夜に電話で奈々江に呼ばれた隆行は下心丸出しで彼女の部屋を訪れた。途中展望台に向かう信一郎と遭遇するハプニングにあったが、一刻も早く奈々江に会いたかったためにお互いこの後に待つお楽しみの健闘を称えあうかのように別れた。冷静になり、はて、彼は一体誰と会うのだろうと素朴な疑問が胸をよぎった。様子から察するに愛引であることは想像できるが、奈々江ではないことは間違いない。でも、そんなことより今は自分の事だとホクホク顔で案内された部屋の先には酔っ払って一升瓶に謝っている沙樹の姿があった。予定とは違ったが、三人での酒宴はいい気分転換となった。

 

さて翌日になると屋上の出入り口の扉の前で塞ぐように死んでいた信一郎が発見された。展望台側には生存者の三郎がいたが、昨夜手紙で呼び出されて用意されていた睡眠薬入りのワインを飲んで眠ってしまい事件とは無関係だと無実を訴えた。警察も嵐の影響で行けなくなり、隆行だけが頼りだ。康子夫人に事件解決の依頼を受けた沙樹も捜査に加わり、真相究明に向けて動き出した。

 

その夜、監禁されている三郎が人が墜落する姿を見たと大騒ぎしたのでその確認をすると、外で栗山が死んでいるのが発見された。死因は墜落死であり、和臣墜落死事件と同じように墜落現場が見当たらなかった。

 

未だに事件の真相に手が届きそうにない隆行とは対照的に沙樹は事件の輪郭を掴んで後一歩のところまで辿りついていた。そして康子夫人にこの館の名前を尋ねて、この館に名前はないとの返答に満足そうにうなずいた。

 

そして犯人との直接対決を迎え、六角形の館の驚愕の仕掛けが明かされる!

 

感想/まとめ

面白かった。壮大すぎるスケールの仕掛けと探偵、刑事、ヒロイン、犯人などの関係者一同がそれぞれの役割を全うして楽しませてくれた。

 

ランドルト環やがらんどうなどの単語から周木律さんの堂シリーズがすぐにパッと浮かんできました。そのため動くという仕掛けにはそれほど驚きはなかったものの、まさか館がネジとナットの役割を担っていたとは想定外でした。まさか、パラセーリングがヒントになっていたとは。それにしてもフフフ、、、ごめんなさい。奈々江ちゃんのトーイングマシンをソーイングマシンと勘違いする天然ボケで爆笑してしまった。間の抜けた会話が今作も光ってましたね。

特にお気に入りだったシーンが、沙樹さんが女探偵の不遇を嘆いて岡山から田舎に帰りたいけど帰れない理由。それは岡山が地元だったからである。このブログを読んで何いってだこいつと思われるかもしれませんが、不意打ちでこの文章は効果は抜群だ!

 

隆行、沙樹、奈々江の三人にまた会いたいな~