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石持浅海さんの「崖の上で踊る」を読んでみた ネタバレ少々/感想

今回紹介するのは石持浅海さんの「崖の上で踊る」です。復讐のために集まった男女十人。三人のターゲットの内一人を始末して次なる殺人のために休息を取った彼らだったが、仲間一人が変わり果てた姿で発見された。なぜ仲間内で殺しが?疑心暗鬼に陥いる中で復讐を完結することはできるのか?

 崖の上で踊る

家庭用の高効率風力発電機を開発して販売した株式会社フウジンブレード。取りつけが簡単で場所を取らない、電気代の負担も少なく初期投資もすぐに回収できるとの観点から瞬く間に流行りヒット商品となった。

しかし一方で発電するときに発生する低周波音が原因で偏頭痛に悩まされるトラブルも起きていた。同じ悩みを抱えた人たちが集まった被害者の会は、弁護士と協議してフウジンブレード者を相手とって訴訟を起こした。しかし、裁判では非を認めようとしないばかりか、いくらなら納得するのですかと金で解決しようと提案してきた。金目当てで訴訟を起こしたとマスコミを味方につける方法で次第に被害者の会の立場が危うくなっていった。あきらめて泣き寝入りを選択する者も現れたが、絶対にあきらめきれない憎しみが勝った者もいた。その者たちはフウジンブレード社に対して復讐することを企てて、特に責任の重い三名(専務、開発責任者、開発部長)を選択して殺害計画を立てた。

 

復讐のために集まった仲間

高原絵麻:香水を調合するパヒューマーだったが、偏頭痛により嗅覚を奪われた。調香師になる夢を断たれたことで復讐を決意。物語の語り手になる人物。

雨森勇太:恋人を失って復讐を決意。物語の探偵役を担う人物。

一橋創太:元フウジンブレード社員。開発にも携わっており、低周波音の可能性に気が付いて社内で問題提起したのだが、上司に一喝されて飛ばされた。

花田千里:フウジンブレード社員だった弟が連日の深夜残業で心身を病み自殺。勤務記録などの偽装した会社を恨んでいた。

江角孝人:風力発電機を設置したことで、高校受験を控えていた息子が偏頭痛を訴えた。最終的には自殺してしまう。

諏訪沙月:生まれてくる子どもの為に節約しようと風力発電機を設置する。しかし、沙月は偏頭痛に悩まされるようになり流産してしまう。次第に夫との仲も悪くなり、離婚。

菊野時夫:開発に協力したにもかかわらず、成果を全て奪われて父親が経営する会社が倒産。大学を中退して家計を支えている。

奥本瞳:営業マンだった夫はフウジンブレードを担当していた。早朝深夜問わずむちゃな要求を押しつけて夫は鬱状態になり、会社を辞めてなくはいけなくなった。

吉崎修平:消費者団体を主宰。手段を選ばない方法で悪徳企業を潰していた。

福王亜佳音:団体のメンバー。女子大生。吉崎を心酔している。

 

フウジンブレードの保養所で開発部長を殺害したところから物語は始まる。犯行後には心が昂ぶり一刻も早く残りのターゲットも始末したいところだが、相手側のスケジュール的に明後日にしようとみんなの意見は一致した。

次なる殺人のために休息しようと一旦解散したが、次に集まった彼らが目にしたのは一橋創太の変わり果てた姿だった。見るからに自殺や事故ではなく殺されていた。この保養所に外部の人間が隠れているかもしれないと確認してみたがいなかった。出入り口も施錠されている。ここにいる九名の中に犯人がいることが決定的となった。

 

予期せぬ事態に見舞われた彼らの復讐劇はどうなっていくのか。

 

感想/まとめ

面白かった。自分たちで作りだしてしまったクローズドサークルに追い詰める側なのに追い詰められた。誰が敵で誰が味方か分からない状態で復讐することは難儀なこと。まるで復讐の上書き保存ですな。

 

復讐という名のダンスを踊りきることができたとしても後に残るのは何か?こればっかりは本人たちしか分からない。

 

登場人物を憶えるまでは苦労した。