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米澤穂信さんの「愚者のエンドロール」を読んでみた ネタバレあり/感想

今回紹介するのは米澤穂信さんの「愚者のエンドロールです。文化祭に出展する予定のクラスの自主製作ミステリー映画の試写会に誘われた古典部。だがその映画は犯人、殺害方法不明のまま終わっていた。続きが気になる千反田えるに負けて折木を始め、古典部のメンバーは結末探しに乗り出すことになる。古典部シリーズ第二弾!

 愚者のエンドロール

夏休みも終盤になり神山高校は文化祭の準備で慌ただしくなってきた。古典部も例外ではなく、文集「氷菓」を展示するための編集会議が部室で開かれていた。会議もひと段落して昼食休憩中に千反田えるがこの後予定がなければ試写会に行きませんかと古典部のメンバーを誘った。それは、文化祭に出展する予定の2年F組の自主製作ミステリー映画であった。

舞台を視聴覚室に移して待っていたF組の入須冬美から率直な意見を聞かせてほしいと頼まれる。だが鑑賞した映画は事件の結末が描かれておらず、解決編が空白となって未完のままだった。F組は映画の内容をミステリーと決めたのはいいが脚本をかける者がいなかった。そこでマンガを少し描いた経験のある本郷真由に任せた。ミステリーに全く触れたことがなかった彼女は一からミステリーを勉強してここまで脚本を仕上げることはできた。しかし、体調不良で力尽きこれ以上の頼れなかった。

この事件の犯人は誰なのか?入須から探偵役に指名された奉太郎。もちろん彼のことだすんなりと受諾するわけがない。それでも映画の結末が気になる千反田に押される形で犯人は誰かという推論の当否を判断するオブザーバーの立場で参加することで妥協した。省エネスタイルの彼は、また厄介事に関わることになった。

 

▼探偵役を志願したF組

『古丘廃村殺人事件』 撮影班 中城の推理

トリックなんか気にしないで、ドラマ性が正義だ。犯人はおまえだ!と決め台詞と犯人が涙ながらに動機を話す。これさえばっちり決まっていれば盛り上がること間違いなしだと主張した。

 

『不可視の侵入』 小道具班 羽場の推理

密室の現場は、小道具班の立場からザイルが使用されたと推理。2階の窓から侵入して脱出したと結論づけた。ミステリー通で周囲を見下す態度の彼に対しての古典部のメンバーの評判はさんざんであった。

 

『Bloody Beast』 広報班 沢木口の推理

ミステリーの定義が幅広いことを示した推理。ホラーもミステリーの一種だという盲点。さらに密室に対しても別にいいじゃない、鍵くらい!強烈すぎる言葉で締めくくった。

 

三者三様の推理を奉太郎はいずれも否定した。なぜならそれらは間違っていたからだ。

完成しない映画のことは気の毒だが、自分の役割は全うした。ここらへんが潮時だと考えていた奉太郎の前に現れた入須。説得を試みる彼女の言葉で探偵としての素質があり、期待されていると自覚した奉太郎は、乗せられた形でもう少し付き合うことになる。

 

『万人の死角』 古典部 奉太郎の推理

明らかになっている情報を元に組み立てていくと七人目の登場人物、カメラマンこそが犯人だと指摘した。撮影するという外からの視点で叙述トリックで上手く存在を隠されていた。密室の謎も解かれて犯人も判明。見事探偵役を務めることができた。

 

だが、入須に認められた奉太郎の推理は古典部のメンバーによって否定されることになる。

摩耶花は、ザイルの問題を指摘した。

里志は、シャーロックホームズの生みの親ドイル時代では叙述トリックはまだ存在していないと指摘した。

千反田は、なぜ本郷は親しい友人にトリックのことを話さなかったのか指摘した。

 

なら本郷が意図した結末とは何なのか?

思い悩む奉太郎を解決に導いてくれたのは一冊のタロット本だった。

女帝と呼ばれる入須の本当の狙い。それは本郷を悪者にしないために一芝居うつことだった。(エンドロールで彼女の本心が明らかになる)脚本を未完のままにして病気と偽り退場させ、クラスメイトを集めて推理大会を開かせた。しかし、実際はシナリオコンテストを行って秘密裏に映画の完成を目指していた。すべて彼女の思いのままに動かされていたのだ。

 

珍しく奉太郎は感情をぶつけたが、動じなく、恥なく、悪びれない。まさしく女帝のように美しく、感情が乏しく、冷厳にその答えを口にした。

奉太郎はその答えに安心するのだった。

 

感想/まとめ

面白かった。だが、やはり登場人物は合わない。

ほろ苦い青春ストーリーは好みなのでシリーズは追いますけどね。

 

あとがき『毒入りチョコレート』をモチーフに書かれているそうですね。よくタイトルは耳にするのですが、海外の作品は未読が多いのでいつも乗り遅れてしまう。

もう一作の我孫子武丸さんの『探偵映画』は読み終えていますのでこちらもどうぞ!

lbookneet.hatenablog.com

映画のシナリオとして失敗と成功。

探偵役として失敗と成功。

二つを失敗と成功を経験した繰り返した奉太郎の本心は揺らいだのか?

 

それにしてもチャットからも分かるように弟思い?のお姉さんですね~