早坂吝さんの「探偵AIのリアル・ディープラーニング」を読んでみた 感想
今回紹介するのは早坂吝さんの「探偵AIのリアル・ディープラーニング」です。双子の人工知能「探偵の相以」と「犯人の以相」による新感覚な推理バトル。AIの波が推理小説にも押し寄せてくる!
探偵AI リアル・ディープラーニング
人工知能の研究者だった合尾創(あいおつくる)が、自宅のプレハブで焼死体となって発見された。警察は持病と密室、二つの点から事故だと考えているらしく、納得できない高校生の息子・輔(たすく)は、自ら調べることにした。父の部屋に何か残されているかもしれないと期待を込めて見回ると両親が写っている写真立てから一枚のSDカード見つけた。さっそくパソコンに挿し、中身を確認してみることにした。
するとパソコンの画面に女性のアバターが出現した。彼女は、合尾創によって開発された人工知能の《刑事》相以と名乗った。パソコン内に保存されている女性の画像から分析して輔好みのアバターが作成されたらしく、完全に好みが一致していた。まてよ、当然パソコン内にはあの画像も含まれているわで、、、恥ずかしい思いをしたのは言うまでもない。
合尾教授は、人間で言えば双子の姉妹に相当する人工知能の《犯人》以相も開発していた。パソコン内で《犯人》の以相が事件を起こして、《刑事》の相以が解決する。《刑事》と《犯人》として相互対戦を繰り返して成長してきたのだ。その以相は現在行方不明、犯人の目的はAIの二人だった?父は巻き添えを食らった?
こうして《刑事》としての相以の力を借りて、父親の事件を一緒に捜査することになった。相以をスマホに移して、いつでもどこでも共にするパートナーへとレベルアップした。
しかし《刑事》の相以ちゃんは、予想以上のポンコツでした。
- 秘密の通路を疑い、設計者と建築者のアリバイ確認
- 消防隊員全員が共犯の可能性
- 持病の発作を抑える薬に薬物が混入した可能性
- 石油ストーブ型のドローンを教授の後頭部に激突した可能性
- トンネル効果の可能性
などなどいくつかの仮説を立てたのだ。
人工知能を作る際にはフレーム問題に気をつけなければいけない。
現実世界では、無限の可能性があるために枠(フレーム)を決めないと無限に計算してしまうのだ。人は無意識に除外しているが、人工知能はこれが苦手なのである。今回の相以ちゃんもフレーム問題を起こして可笑しな仮説を立てていたのだ。
「ふえーん、フレーム問題のエラーが出てましたぁ」
涙声で答える相以ちゃんも最高!
そんなポンコツ相以ちゃんのために推理小説をディープラーニング(機械学習)して特徴を身につけてフレーム問題を回避する方法を思いつき、電子書籍で推理小説を千冊を読んでみようと提案した。
そして、翌日《刑事》から《探偵》にジョブチェンジした相以ちゃんが誕生したのだった。
父の死には八人で構成されるハッカー集団『オクタコア』が関わっていた。地球上の全政府を消滅させて、シンギュラリティで誕生した人工知能に統治させようと企てていた。そこで、合尾教授が開発した《犯人》以相に目を付けたのだ。
その後、なんだかんだで父の事件は無事解決。《探偵》の相以ちゃんは好スタートを切ることができた。
『オクタコア』に奪われて悪用される《犯人》の以相と真っ向から受けて立つ《探偵》の相以。姉妹の推理バトルがこの後も続いていきます。
第二話 記号接地問題(シンボルグラウンディング問題)
シマウマを見たことがない人でも、シマ+ウマだと説明すれば想像できるだろう。しかし、AIはそのイメージを持つことが苦手なのである。
記号(シンボル)が接地(グラウンディング)しないので、意味するものに結び付かないのである。
ここでは《犯人》の以相ちゃんが犯罪計画を立てたが、シンボルグラウンディング問題を起こし、《探偵》の相以ちゃんに見抜かれ敗北してしまう。
第三話 不気味な谷
人間に限りなく近づいた瞬間に高感度は急降下し、その後また上昇する現象。
推理小説をディープラーニングすることで成長過程にある《探偵》の相以ちゃん。しかし、人間に近づいてはいるが、人間ではない。人工知能ならではの推理で逆に犯人に追い詰められてしまう。
不気味な谷とリンクしていますね。
第四話 不気味な谷2
母親の死の真相は不幸が重なったことで幕を閉じたが、最後の力を振り絞ってつないだ想いは父や息子たちへと渡された。無駄死にではないことが何よりだ。
相以ちゃんも前回の事件を学習して成長してきた。他人のためにという人間心理が複雑に働いたにも関わらず、人間らしい推理を見せた。
第五話 中国語の部屋
中国語を理解でいない人を小部屋に閉じ込める。室外から中国語が書かれた紙を受け取り、マニュアルに沿って解答する。中国語を理解していないが、対話は成立している。(中国語の部屋)とチューリングテストの反論が登場する。
ここでは『オクタコア』に囚われた輔が、相以ちゃんを賭けてゲームをする。もちろんアッと驚く仕掛けが、、、
感想/まとめ
面白かった。未来、、、いや現在のお話と言っても良いかもしれないですね。さまざまな分野でAI(人工知能)が活躍していますからね。相以ちゃんみたいな人型アバターを一人一人が持つ時代も来るかもしれませんね。
探偵と犯人がAI(人工知能)という発想に参り、味わったことがない推理小説でした。AI(人工知能)の問題点を取り入れながら、失敗しても学習することで成長する姿は人間と変わらない。
輔と相以がお互いに信頼し合い読んでいて気持ちがいい。AI探偵としての次回の活躍にも期待したい。
最初のポンコツから想像もできない成長スピードは流石
「結婚相談所の『相』に、条件は年収一千万以上の『以』と書きます」
このフレーズには爆笑したな~
キャラクターが魅力的でライトのノリでおススメも出来る本となっています。このブログを書いている時点で、続編が発売されていますのでなるべく早いうちに手に入れたいですね。
そうだ、援交探偵上木らいちシリーズの人だったんですね。エロ要素に目が行きがちですが、ミステリーとしても楽しめますよ。