似鳥鶏さんの「そこにいるのに」を読んでみた ネタバレ少々/感想
今回紹介するのは似鳥鶏さんの「そこにいるのに」です。日常生活でありそうな状況で誰もが遭遇しそうなホラー短編集。だからこそ怖い。おっと今あなたの後ろに、、、何か、、、
そこにいるのに
▼六年前の日記
六年前に市内の小学校に通う女の子が自宅に侵入した強盗に殺された事件。彼女は病弱で大半を自宅のベットや病院で過ごす生活を送っていた。事件当時も両親不在で二階の自室で寝ていた所を襲われたと思われる。なお事件は現在も未解決であった。
それから六年が過ぎ、区切りをつけるために娘の遺品を整理していたら日記帳が見つかったので是非記事にしてくださいと連絡してきたのだ。許可を取り読んでみると、日記帳の中身は交換日記であり、仲の良い友達と他愛もないやり取りが綴られていた。
そして最後のページには「たすけて おかあさん」と母親に助けを求めるメッセージが走り書きで残されていた。これを記事にしていいのか迷っていると、メッセージの横に大きめなシールが貼ってあることに気がついた。不審に思い貼られたシールを剥がすとそこには、に ころされる
▼写真
田舎の風景を撮影していると老人からそっちは撮っては駄目だと注意を受けた。すみませんと謝罪して切り上げ、自宅に帰ってパソコンにデータを移して整理していると、白い服をきた人みたいなものが写っていた。なぜか嫌な胸騒ぎがして、オカルト雑誌の知り合いに写真を送り助言を求めてが、その人には人の姿が見えないらしい。その後も何度かやり取りをしたが、求めていた解答は返ってこなかった。
なのに私だけが写真の中の白い服の女(目視で確認できる)をはっきりと姿が捉えることができ、一歩一歩確実に近付いてきていた。
怖くなって急いでパソコンの電源を落としたが、暗くなった画面には私の顔と、、、
▼おまえを見ている
「その家」の二階に黒い人影のシルエットに気付いた。全く動かないのでおかしいと思いながらもその日は家に帰ったが、次の日も次の日も「その家」の前を通ると動かない人影が見える。まるで、私を待っているかのように。
気味が悪くなり母に相談すると、その家の人は数か月前に首を吊って死んでいると教えられた。では、私が見ているあれは何なんだ?
▼陸橋のあたりから
こわいひとがみえるぼく。それはいえにまでついてきている。
▼二股の道にいる
東京に引っ越してきて僕は、帰宅するルートをいつも変えて知らない道を探索するのが趣味になっていた。そのことを学校の友達に話してみると「Y字路おじさん」がいるからやめたほうがいいと忠告を受けた。
本気にしなかった僕だったが、もう少し真剣に彼の言葉に耳を傾けるべきだったことをこの後知ることになる。
▼痛い
平凡で普通な私が自分の名前でエゴサーチしてみると、一件の動画が見つかった。半信半疑でクリックしてみると、確かに私の映像だった。盗撮されたと思うと気味が悪くなり、辞めてくださいとメッセージを送ったところ、今度は未来の映像まで投稿されるようになった。そこに映った私は、、、
▼なぜかそれはいけない
頭をよぎる警告に従っていれば、あんな目に合わなかったのに。
そうだもう一度やり直せば避けることが出来るかも知れない。
死んでしまった私は時間を超えて、生きている私に警告を送る。
▼帰り道の子供
立ち食い蕎麦屋の店員の私。遅番の日の帰り道、ある場所でいつも同じ服で、同じ位置に立っている女の子がいた。いつもは無視するのだが、今日は「七人目だよ」と声をかけられた。何が七人目なのと聞いても、微笑むだけで答えようとしない。
確かあの女の子は今日と言った?なら今日何かがあったんだと推測して今日一日を振り返ってみると、常連さんの中に一人、疲れた顔の人がいたことにはっとした。次の日から昨夜の常連さんを探してみたがもう来ることはなかった。その日以降余計なことを考えるようになり注意が散漫、仕事にも支障が出始めた。
そして、ある遅番の日に疲れた顔の男性が現れたのだ。普通のかけそばを注文してため息をつきながら、少しずつ口に運ぶ。ゆっくりと時間をかけて食べ終えた後に丼を返却。その際に「ありがとうございました。お疲れですね。無理されないでくださいね」と心をこめて祈るように声をかけて見送った。
そして、いつもの場所に立っていた女の子の前を通ると「今日で八人目だよ」と返ってきた。駄目だったのかと脱力気味の私に女の子が語った八人目だよの続き、、、
逆転する真実にあなたも涙を流すことでしょう!
▼随伴者
主人を守るぬいぐるみ。さぁ狩りを始めようか!
▼昨夜の雪
小学生の女の子が誘拐、殺害された。犯人は逮捕されたが、遺体の場所がはっきりしない。誰かが作った雪だるま。少しづつ溶けてはいるが、形ははっきりしている。その意味するものとは。
▼なかったはずの位置に
恐怖を思い出すたびに近づいてくるナース服の女。数十年前から始まり数年、半年、半月、おととい、昨日。そして数秒後、汗だくの私の後ろに、、、
ストリートビューの怖いお話し。
▼視えないのにそこにいる
警察官の父が行方不明になって七年が経過して形式上の死亡が確認された。息子たちが父のアパートを訪ねると行方不明になる前に担当していた事件のメモが書かれたノートを見つけた。それを手がかりに痕跡を辿っていくと視えない敵と遭遇してしまう。窮地に陥った二人を助けたのは、父が残したあるものだった。
感想/まとめ
面白かった。シンプルで読みやすく、それでいて怖い。だが、結局クママリとは何ぞ?
クマリならネパールの女神のことだと下記で知ったのですが。
好みは断トツで▼帰り道の子供ですね。思わず泣いた。(ホラー小説読んでいてこれを一番手と選択していいかちょっと迷ったのは内緒)
店員さんの言葉が逆に追い打ちになっているのではと考えてしまい怖かったのですが、そうゆうオチで安心した。この短編集のなかで清涼剤の役割でしたね。
視ルな昨随帰な痛二陸お写六。目次でタイトルの一文字を逆から読むと、、、