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浦賀和宏さんの「記憶の果て 上」を読んでみた 感想

今回紹介するのは浦賀和宏さんの「記憶の果て」です。父親の自殺から始まった安藤直樹の物語。父親の部屋で見つけた「裕子」と名乗る、まるで生きているかのようなプログラムと接しているうちに心を通わせ、恋に落ちる。はたして、「裕子」に意識はあるのか?彼女の記憶の謎に迫る安藤直樹シリーズ第一弾!

 記憶の果て 上

お父さん死んじゃった。

高校卒業して後は大学入学まで暇を持て余している安藤直樹。そんな平穏な朝を破ったのは母親から聞かされた父親が自殺したとの知らせだった。昨夜の夕食の席では普段通りに小難しい顔をして口数少なく黙々と食べていた。当たり前のように続くと思われたこの平凡な日常が、何の前触れもなく終わってしまった。

振り返ると脳の研究をしていることしか最近の父親のこと知らなかった。父親が自分の書斎で首を吊ったこと、遺書があったから衝動的ではなく計画的に自殺したことは間違いなかった。

ふと何かを思い、入った父親の書斎で見つけたコンピュータ。電源を入れて起動するとディスプレイに「あなたは誰」と文字が表示された。その答えとして「安藤直樹」と入力すると「私は裕子」と返事が返ってきた。その名前に心当たりはなかった。その後も会話は続き、彼女に父親の自殺のことを聞かれたことで咄嗟に電源を落としてしまった。

冷静に考えてみると一見会話が成り立っているように見える。直樹が入力した文章を理解して、返答している。人工知能AIが浮かんできたが、なぜ父親はこんなものを用意していたのか。そして裕子と名乗る、彼女の正体とは。

 

友人の飯島鉄雄と金田忠志。直樹の数少ない友人だ。父親の自殺のことも話した。

飯島は、明るく誰とでも分け隔てなく話すことができるクラスの中心人物。金田は、考え方や物の言い方が理路整然としている屁理屈が上手い。小中学校は、同じだったが高校で道が別れた。それでも、友人関係は続いている。

そして、場は葬儀へと移り、安藤家にゆかりのある関係者が参列する中、物語の鍵となる人物、浅倉幸恵の姿もあった。

 

直樹は軽音楽部に所属してバンドを組んでおりピアノを弾くことができた。そして、最後の演奏として選んだコンサートで浅倉幸恵と出会う。彼女のバンドはキーボード不在で演奏する予定だった。しかし、予想外に周りが上手く自信を失くしていた所に鍵盤を叩いていた直樹の姿が目に入りお願いしたのだ。

直樹を加えた演奏は、拍手喝采を浴びて終えることができた。結果は準優勝で演奏は大成功。そして、直樹は彼女のことが好きになっていた。

連絡先を聞いて別れていたので、卒業式の後に一度会いたいと連絡を取った。彼女の態度から好感を持たれているのではと期待感もあった。しかし、結果はごめんなさい。

それ以降会うことはなかった。

 

萩原という父親の同僚に付き添って佐々木という女性が現れた。親戚一同が何故か慌ただしくなるなか、直樹を見るなり涙を見せる意味深な動きを見せた。彼女も二人の同僚らしいが、、、

また直樹は、裕子がプログラムされたコンピュータで未だに会話を続けていた。いつの間にか心を通わせて、惹かれて、恋に落ちていたのだ。彼女の意識はプログラムなのか実体なのか。息詰まった現状に友人である飯島と金田に裕子を紹介?して協力を仰ぐことにした。そして、その手の専門家である萩原に裕子の存在を隠して助言を貰いに行くことになった。

一方現実世界では、直樹の出生の秘密と裕子の正体が明らかになる。それが今後どう繋がっていくかは続編である記憶の果て下に持ち越しになる。

 

感想/まとめ

面白かった。ほんと不思議な作品。

安藤直樹は年齢的に子供でもなく大人でもない中途半端な時期の主人公。読んでいて彼にはイライラさせられることがあると思う。僕も好きじゃないタイプでした。それでも、最後まで面白く読めたことは文章に惹かれたのでしょう。終始暗い感じにも関わらずね。

 

音楽に興味がない僕にしては曲名を出されてもちんぷんかんぷんでした。