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新堂冬樹さんの「紙のピアノ」を読んでみた 感想

今回紹介するのは新堂冬樹さんの「紙のピアノ」です。貧しい家庭でピアノを学ぶ環境とは無縁だった少女。優れた師と出会い、紙に書いた鍵盤で練習をして才能を開花させていく。ライバルたちとしのぎ合いプロピアニストを目指して厳しい世界をかけのぼっていくシンデレラストーリー。

 紙のピアノ

母子家庭で貧しさゆえにいじめに遭っていた白石ほのか。その日、児童公園で男子からいじめられていたほのかを助けてくれた二ノ宮という優しい男性だった。彼はピアノの先生だった。彼の教室から聴こえてきたメロディに合わせて動かした指の動きでほのかの才能を見抜いた二ノ宮。しかし、ピアノ教室に通うことも購入して練習することも現実的ではなかった彼女のためにスケッチブックに鍵盤を描いた『紙のピアノ』を手渡した。

二ノ宮先生のもとで指導を受けて、みるみる才能を開花していくほのか。

そして舞台は、音楽大学へ移っていく。プロピアニストを目指してコンクールに挑む彼女の前に。次々と現れるライバルたち。有名なコンクールにもなるとレベルが高い。一癖もふた癖もある天才たちがほのかの前に立ちふさがる。だが、強敵ぞろいのライバルの存在はレベルアップに必要不可欠。しのぎを削って、蹴散らす。勝つためには実践しかないのだ。

物語の終盤にもなると恩師との別れ、敗北、ほのかは大きな挫折を味わうことになる。自暴自棄になり、絵に描いたように慣れないお酒に逃げ込む描写は痛々しい。それでも次のステージへ登るには新たな白石ほのかを生みださなければいけない。初心に戻り、あのピアノを弾くだけで楽しかった幼少期を振り返り、何が必要で大切なのかを確認していく。

ピアノの音はね、弾く人の心を映すんだ。どう弾けたかじゃなくて、どう弾きたいか。

幼かったほのかにはその言葉の意味が分からなかった。その言葉の意味の重要性が分かる年齢になった今、一皮むけた彼女の物語が始まる。そして、二人の夢となった最高峰の舞台で頂点を取ることが最高の恩返しになると決意し、練習に励んでいく。

 

感想/まとめ

面白かった。みんなちがってみんないいだけでは勝ちのけれない戦い。

音楽のプロの世界で活躍できるのは一握り。その椅子を巡って争う女性たちの戦いは興奮ものでした。文字を読んでいるつもりが、文字を聴いている。音楽小説だとこの感想が一番響いてくる。

ピアノに片思いと両想い。いい言葉であり、その差は大きいのでしょうね。

出会いは最悪、後にほのかのライバルとなる存在、、、井沢舞華さん。敵を作りやすい性格をしている彼女だが、ピアノなら自分が一番上というゆるぎない気持ちが読んでいても伝わり、それも一つの才能なのでしょう。応援したくなる自分がいて、驚いた。こういう人はゲームだと攻略が難しいお嬢さんキャラになりそう。

二ノ宮先生との別れ方が残念だった。彼と今後も共にしないのなら男は出さなくてよかった気がする。女の戦いがこの小説のいい所の一つだからね。

 

ピアノ・ソナタ第十七番第三楽章 テンペスト

パガニーニによる大練習曲の第三番 ラ・カンパネラ

彼女らが演奏した上記の二つをyoutubeで見たが、ヤバすぎた。薬指と小指を自由自在に操って奏でていた。まるで独立した意思があるように、同じ人間なのか。自然と真似したら、指が攣ってしまったのは内緒。・