~読んできた本の足跡~

~のんびりまったり日々読書~アニメや雑談も~

西澤保彦さんの「スナッチ」を読んでみた 感想

今回紹介するのは西澤保彦さんの「スナッチです。突然降り出した雨に襲われて意識を失ってしまった。目を覚ますとそこは31年後の世界だった。一つの体に「僕」と「ぼく」二つの人格が存在していて、さらに殺人事件までが起きてしまうSFミステリーをご覧あれ!

 スナッチ

▼ビフォア・パラレル

舞台は昭和52年--1977年1月16日高知県高知市

奈路充生ことぼくは、生駒美和子と待ち合わせをしていた。大学卒業を目前に控えたある日のこと、結婚を前提に付き合っている彼女のご両親に挨拶をするために東京から高知まで訪ねて来ていたのだ。

しかし、待ち合わせ場所に現れたのは楡咲純花という女性の方で親戚に不幸があってこれないと美和子から伝言を預かってきたとのこと。旅館に電話してもちっともつながらないと彼女が嘆いていたと言われ内心焦った。(昨夜ある女性と関係を持ってしまったいた)

用件を済ませてバイバイとすぐに解散しないで結婚のお祝いでとお昼をごちそうになり、その後は彼女が通院している鍼灸院近辺まで散歩がてらご一緒することになった。

だが、突然降ってきた雨が体を包むように貼り付いて離れない。周囲の人間も飲みこまれて阿鼻叫喚の地獄絵図。ぼくも最後は力尽きるようにそのまま意識を失ってしまった。

 

▼ロスト

目を覚ますとそこは平成20年2008年の世界だった。さらに驚いたことに「ぼく」の体にもう一つの人格「僕」が存在していた。いや、正しくは53歳になった「僕」が体の主導権を握っており、「ぼく」は指一本動かすことができないでいた。「僕」の中に「ぼく」がいるという受け入れがたい現実が待ち受けていたのだった。

「僕」に連れられて紹介された専門家からあの雨の正体が教えられた。宇宙からやってきた異種生命体によるもので、あの雨に襲われた人達は身体を乗っ取られてしまったらしい。その人たちをベツバオリと呼んでいた。そして、今回の状況みたいにベツバオリのなかでオリジナルの自我が蘇ることをサシモドシと呼んでいた。

そして、二重の自我が負担となってストレスが溜まり、百パーセントの確率で癌が発症している報告があるとも知らされた。治療方法は、ストレスを最低限に抑えることで自然治癒に任せることだけ。

31年間という貴重な時間を一瞬で失い、目が覚めたら死の宣告を受けたも同然の事実に「ぼく」は絶望するのだった。

 

そして、サシモドシしたきっかけとされる楡咲純花の死へと物語は移っていく。

 

▼ロスト2

楡咲純花はサシモドシなく心不全で亡くなっていた。当時中学生だった息子は、あの日を境に中身が変わってしまった母親を子供ながら受けたショックを引きずったまま死別して複雑な気持ちで整理がつかないでいると息子の妻から聞かされて、「ぼく」は31年前に息子ことを幸せそうに語っていた彼女のことを思い出していた。

その後、別れた美和子に連絡を取ろうとしたが何者かに殺害されたと衝撃のニュースが飛び込んできた。さらに同様な事件が他にも起きていた。一見すると繋がりが見えてこない被害者たちだが、現場や凶器から同一指紋が検出されており犯人が残したものとみて間違いなく、連続殺人事件の可能性が高まった。

そして、事件が始まったのがサシモドシの時期からだと結びつけて共通点の原点は「僕」にあるのではと考えるようになっていた。

その後も独自に捜査を進めて、過去に繋がりがあることを見つけた。とんとん拍子で辿りついたある人物。そう「僕」が睨んだ通り、サシモドシが絡んでいたのだ。

 

感想/まとめ

面白かった。西澤さんのSFミステリーは、好みなので反射的に高評価にしてしまう甘い僕をを許して欲しい。「七回死んだ男」は僕の中で一番好きな小説として未だにトップを守り続けているので、是非そちらも読んでみてくださいね。

 

事件の謎やイベントが最終的に回収されていく様は素晴らしい。31年前のあの女性ともあんな風につなげることで、最終的にあのような形になった「ぼく」も一人ぼっちにならなくて安堵した。

 

アレルギー話などの雑学はとても勉強になりました。