ヰ坂暁さんの「舌の上の君」を読んでみた 感想
今回紹介するのはヰ坂暁さんの「舌の上の君」です。異世界へと迷いこんでしまった料理人と自身の身体を調理して、食されることを願う少女の愛の物語。人を食べる描写がありますのでご注意を。
舌の上の君
異世界へと迷い込んだ料理人・厨圭(クリヤケイ)は、現地人の少女アイサに救われる。その後は、アイサ一家に厄介になり、次第に体力が回復してきたケイも現地の人と交流を図るようになった。言葉が通じずに苦労したが、アイサが先生となってくれて徐々に現地の言葉を理解することができるようになってきた
そして料理人としての立場からこの世界の食文化に興味を持つようになった。この地で採れる食材でお世話になっているアイサ一家に料理をふるまいおいしいと言って食べてくれたことが、嬉しくて久しぶりに心から充実感を味わえた瞬間だった。
慣れてきた生活で食に関して気になることが見えてきた。死にかけていた時に食べたアレ。全細胞がみなぎり、死から復活することができたこの上ない美味さの正体。アイサにも聞いてみたが知らないと返された。
もう一つは、この地で料理人が携わる習慣についてだ。食葬といい、故人の遺体を解体して、調理し、葬儀の際に集まった親戚に振る舞う風習。人を食べることが禁忌とされていた世界からやってきたケイからしてみれば、戸惑いを隠せないでいた。
ケイの噂を聞きつけた国王からのお前の世界の食の叡智をこの正解に広めてほしいと命を受けて宮廷料理人として働くことが決まった。料理修業が始まって三か月が過ぎた頃に正式な料理人として認めれ任官祝いの宴が開かれた。
その席でアイサの真実が明かされることになる。ケイが死にかけていた時に食べたアレの正体はアイサの血だった。この地では、恐ろしく美味い血を持った子が生まれてくる。その子を『サカラ』と呼ばれていた。『サカラ』は神からの贈り物とされ、『熟す』時まで宮廷で教養されることとなる。
「私を、料理してください」
それがアイサの願いでもあった。
そして、ケイが選択した未来に待ち受けていた運命とは?
感想/まとめ
面白かった。食人をテーマに禁忌を描いた小説で運命に抗おうと生きる道を示した料理人と食材の少女の恋愛ものでもある。
人肉の描写で読んでいるだけで気持ち悪くなってきた。遺伝子レベルで身体が拒否しているのがしみじみ感じた。何故禁忌と呼ばれているのか身に染みました。万人受けする小説ではないが、たまにはこういうタイプの小説も欲しているのかもしれない。
表紙の少女がかわいいのが唯一のお口直しで癒しだった。