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北山猛邦さんの「『クロック城』殺人事件」を読んでみた 感想

今回紹介するのは北山猛邦さんの「『クロック城』殺人事件」です。世界の終焉が迫った混沌する日常の中で探偵の元へある依頼が舞い込む。依頼人に連れられて向かった先で現在、過去、未来を刻む三つの大時計が待ち受けていた。名は『クロック城』といい今作の惨劇の舞台となる。

 『クロック城』殺人事件

1999年に終わることが運命づけられた世界。終焉の時が刻一刻と迫っており、混沌とする日常の中で探偵の南深騎(みなみみき)と幼なじみの志乃美菜美(しのみなみ)の元へ依頼人が現れた。女性は黒鴣瑠華(くろくるか)と名乗り、私の家に棲む〈スキップマン〉という怪物を退治して欲しいとのことだ。深騎は普通の探偵ではなく幽霊退治の探偵であり、どこかから評判を聞いて訪ねてきたらしい。瑠華から聞いた話をまとめるとクロック城には得体の知らない何かが眠っており、屋敷の地下に人面が壁に浮き出たり、〈スキップマン〉の謎を始め、他にも様々な異常現象があることが予想された。依頼を引き受けることになり、翌日にクロック城へ向かうことになった。

 

暗闇にそびえ立つクロック城。真っ先に目に飛び込んできたのは巨大な三つの大時計だ。真ん中の時計は現在の時刻を、左の時計は十分遅れた過去の時刻を、右の時計は十分進んだ未来の時刻を指していた。屋敷も中央を「現在の館」と、左右に「過去の館」、「未来の館」と壁一枚を隔てて分かれた構造になっていた。

さっそく、問題の地下室へと向かうと部屋一面にびっしりと顔が浮き出ていた。それぞれ違った表情で深騎を見つめてくる。その異様さに飲みこまれてそうになってみんなが待つホールへ早足で戻った。

 

ここまでは準備運動。これから始まる惨劇の序章に過ぎなかった。突如鐘の音が鳴り響いた夜に「過去の館」と「未来の館」のそれぞれ四階で首無し遺体が発見された。二人の首は、「現在の館」の四階で眠り続ける美女の脇に揃って置かれていた。

これが意味するものとは何か?

「過去の館」と「未来の館」で殺人を犯し切断して、「現在の館」で首を置く。この一連の行為をするには「現在の館」にあるホールを行き来するしかない。犯行時刻に人の目によってホールを通過した人間は誰もいないことが判明する。二つの殺人事件は人間には不可能だと示している。これは不可能犯罪だったのだ。

 

このほかにも

▼世界の終焉

ゲシュタルトの欠片

▼幽霊専門の探偵

▼〈スキップマン〉という怪物

▼地下室の壁を覆う人面

▼世界の運命を左右する〈真夜中の鍵〉を巡って二つの組織「SEEM」と「十一人委 員会」が競う

ナルコレプシーなどの睡眠障害

SFだー、ファンタジーだーと好きな人には叫びたくなる用語が飛び出すが、なんといっても注目は不可能犯罪の匂いがする殺人事件だろう。深騎がどこに着目してどのようにして推理していくか楽しみながら読んでほしい。

 

感想/まとめ

面白かった。

ぐちゃぐちゃに混ぜられた世界観で当初は否定的な立場だったにも関わらず、本格ミステリでもあり、ファンタジーでもある世界観にいつの間にか酔いしれている。そんな自分がいたのだから驚きだ。

 

終盤に行われる推理対決が見どころでしょう。探偵と犯人による攻防戦に目が離せません。二転三転してどこで終えるのか、緊張の連続で楽しい疲れを頂いた。

またメイントリックも素晴らしい。これぞ物理トリックなのですね。まさしく物理的にタイムスリップしているようで読んでいて高揚感すら感じました。

時計が読めないという点と首を切断したという点が、一つの線になってつながったときは、椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。切断した頭を〇〇に代用する、、、猟奇的でもしっかりとした意味があったんですね。

 

SFやファンタジー要素は、最終的にはそういえばどうしたの?で消化不良のまま読み終えてしまいましたが、本格ミステリにおいては大満足です。全体像を俯瞰してみれば、好みが分かれる作品には違いないでしょうが。