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東野圭吾さんの「百夜行」を読んでみた ネタバレあり/感想

今回紹介するのは東野圭吾さんの「百夜行」です。ドラマや映画化もされた超大作ですね!

 百夜行

第一章

1973年大阪の廃墟ビルで質屋『きりはら』の主人である桐原洋介が殺されているのが発見された。建設が止まった今では子供たちの遊び場となっており、被害者と犯人はここで何をしていたのか当然疑問に挙がっていた。捜査を担当することになった笹垣潤三刑事は、『きりはら』で妻の弥生子や店長の松浦からアリバイを聞き、目的であった客の名簿を手に入れた。ここで息子の亮司と初めて対面する。

捜査が進むにつれて、洋介の足取りが明らかになってきた。事件当日百万円を銀行から下ろしており、名簿にも名前が載っていた西本文代という女性に会いに行ったことが判明した。ここで娘の雪穂と初めて対面する。

笹垣は、文代や『きりはら』の面々、文代と交際をしているという寺崎という男を念入りに調べるが、どれも決め手に欠けた。

進展のないまま月日が流れる。そんなある日、寺崎が交通事故で死んでしまった。車内から洋介のものとみられるライターが発見されて、共犯の疑いを持たれていた文代には取り調べで強く言及されることとなったが、最後まで否認し続けた。

その後、文代もガスが充満した自宅の部屋で死んでいるのが雪穂によって発見された。

こうして容疑者二人の死によって桐原洋介の事件は終わりを迎えたのだった。

 

▼主な登場人物

桐原亮司 :被害者の息子 小学生

西本雪穂 :被疑者の娘 小学生

笹垣潤三 :事件を担当する刑事

桐原洋介 :質屋『きりはら』の主人、被害者

桐原弥生子:亮司の母

松浦勇  :質屋『きりはら』の店長

西本文代 :雪穂の母

 

第二章

母親を事故で亡くして身寄りがいない雪穂は、親戚の唐沢礼子に引き取られた唐沢雪穂として暮らしていた。貧乏暮らしから一転、お嬢様学校の清華女子学園に通っていた。雪穂本人も知的で上品な女性に成長しており、周囲の評判も高い。その美貌の故、盗み撮りする男も現れた。逆に同性からは妬まれて良くない噂を流している者もいた。

一方、大江中学校に通う菊池文彦は、同じクラスの桐原亮司にある写真を一枚見せた。そこには、母親と松浦の浮気していた証拠が写されていた。しかし、一切亮司は認めようとしない。文彦がこの事件にこだわる理由があった。第一発見者が弟で貧乏だった彼の家族は警察に発見者以上に疑われていた。過去の出来事だが未だに根に持っていた。

雪穂は親友の川島江利子と帰宅途中に同じ清華女子学園に通う藤村都子が両手両足縛られて倒れているのを発見した。上半身裸で下もスカート以外は脱がされており悲惨な姿だった。現場には、キーホルダーが落ちており、そこから菊池文彦が容疑者として名前が挙がった。警察に疑われる文彦だったが、亮司の証言によりアリバイが成立、疑いが晴れた。、

例の写真を貸した友人の秋吉雄一は、手伝うよと助け船を出したがもう興味がないと文彦は拒絶。離れていく彼を首をかしげたまま見送った。

 

▼主な登場人物

桐原亮司     :大江中学校に通う中学生

秋吉雄一     :亮司の同級生、雪穂を隠し撮りしていた

菊池文彦     :亮司の同級生、亮司に助けられる

唐沢(西本)雪穂 :清華女子学園に通う中学生

川島江利子    :雪穂の親友

藤村都子     :噂を流した張本人

唐沢礼子     :雪穂を引き取った

 

第三章

園村友彦と村下は、桐原亮司から時給3千300円のアルバイトを紹介された。女性と話をするだけのお仕事。胡散臭く心境は揺れ動いたが、結局はその誘いに乗ることにしてとあるマンションへと向かった。そこで待っていた主婦相手に売春することが仕事の内容だった。お酒も進み友彦と村下は、流れのままに体の関係を持ってしまった。性行為後、トラブルの元になるから絶対に個人的には会うなよと亮司と約束をしたのに、友彦は密かに連絡先の書かれたメモを渡されていたのだった。

その後も頻繁に会うようになった女性とホテルで性行為後、なんと死んでしまった。相手の旦那と警察からマークされて絶体絶命の中、頼ったのは亮司でした。自業自得だと見捨てるつもりだったが彼のプログラムの知識に目を付けて偽装工作をして助けることにした。この件で恩を感じ、友彦は亮司の仕事を手伝うことになる。売春に参加した主婦の一人西口奈美江を経理係に抜擢して、亮司をトップに無限企画というプログラム販売会社を立ち上げた。

 

▼主な登場人物

桐原亮司 :集文館高校に通う高校生

園村友彦 :亮司の同級生。トラブルを解決してくれたことに恩を感じ、亮司の仕事を手伝うことになる

西口奈美江:無限企画の経理

 

第四章

大学生の中道正晴は、唐沢雪穂の家庭教師をしており、足を運ぶうちに雪穂に恋心を抱くようになっていた。

そんなある日、彼が所属する研究室で共同制作した『サブマリン』というゲームと類似しているゲームが『無限企画』という会社から販売されているのに気が付きます。『サブマリン』にとても似ており、誰かがプログラムを外部に漏らした疑いが高まりました。必死になって犯人探しする者もいたが、とうとう見つけることはできなかった。実は正晴は一度だけ雪穂にこのゲームのことを話したことがあった。話すだけでなくプログラムが収められていたテープも見せていた。しかし、複製する機械もない彼女の部屋で見せたのはほんの少しの時間だったため、彼女は犯人ではないと結論づけていた。

 

▼主な登場人物

唐沢雪穂:清華女子学園に通う高校生

中道正晴:雪穂の家庭教師

 

第五章

川島江利子は、唐沢雪穂と清華女子大学へと進学して、共にダンス部へと入った。永明大学と合同で活動しており、多くの男子部員が雪穂に夢中になるなか、篠塚一成だけは江利子のことが気になっていた。彼は、日本有数の製薬会社の御曹司であり、倉橋香苗という彼女もいて、当然江利子本人も彼に恋愛感情を抱くなんて笑い話にすぎないと思っていた。しかし香苗と別れて、一成の真剣な想いが江利子にも伝わり、恋人同士になることになった。恋愛パワーなのか、どんどん綺麗になっていく江利子の美貌に他の部員も驚きを見せるほどでした。

しかし、ある日を境に江利子から連絡が途絶えた。心配していた一成の元へ若い男から倉橋香苗に金を払えと伝えてくれと電話が掛かってきた。さらに、江利子が襲われていたことが判明した。通帳を管理していた香苗を犯人だと一成は決めつけていたが、雪穂に騒ぎ立てしたくないと止められて警察へ届けることはしなかった。

雪穂から江利子の別れの伝言を一成へと渡された。

 

▼主な登場人物

唐沢雪穂 :清華女子大学に通う大学生

川島江利子:雪穂の親友

篠塚一成 :永明大学ダンス部部長。大手製薬会社の御曹司

倉橋香苗 :一成の元恋人

 

第六章

園村友彦は、大学に通う傍ら桐原亮司とキャッシュカードを不正利用して金を引き出すことに成功していた。

一方、経理係の西口奈美江がプライベートでトラブルを抱えていた。銀行のお金を榎本というヤクザに貢いでいることがバレてしまったのだ。彼女を逃がすために亮司が立てた計画とは?

 

主な登場人物

桐原亮司 :無限企画で通信販売、裏では、、、

園村友彦 :信和大学に通う大学生、亮司を手伝う

西口奈美江:トラブルを抱えており、最後は、、、

 

第七章

高宮誠は、大学時代から交際をしている唐沢雪穂との結婚が間近に迫っていた。しかし、彼の脳裏に一人の女性の顔が浮かんで離れないでいた。派遣社員の三沢千都留である。ダンス部で共に汗を流した篠塚一成に胸の内を明かして相談するほど頭を抱えて悩んでいた。悩んだ末に彼女に気持ちを打ち明けることにした誠。一成のアシストもあり、千都留が泊る予定のホテルへ急ピッチで駆けつけて、あとは現れるのを待つだけだった。しかし、ホテルマンから部屋をキャンセルしたいという電話があったと知らされて、彼女とは縁がなかったと諦めて、雪穂との結婚を決めた。

 

▼主な登場人物

唐沢雪穂 :大学時代から交際していた高宮誠と結婚

高宮誠  :千都留に好意を寄せたが、雪穂との結婚を選んだ

三沢千都留:誠が勤めていた会社の派遣社員

 

第八章

時代の波に飲み込まれて『無限企画』も休業状態に陥ってしまった。園村友彦は、休業中に他のバイト先で中嶋弘恵と知り合いになる。現在は、桐原亮司を含め三人でパソコンショップ『MUGEN』を運営していた。ちなみに、友彦と弘恵は恋人である。

ある日、金城という男が店を訪ねてきて有名ゲームの海賊版を作らないかと誘われた。亮司は一旦はこの話を断りますが、今度は、質屋『きりはら』の店長だった松浦勇が同じ用件で訪ねて来たのだ。父親の事件後、お世話になった恩から危険承知で受け入れることにした。

悪い予感は的中して、警察に追われるようになった亮司。あの笹垣刑事もまた彼のことを追っていた。

 

主な登場人物

桐原亮司:警察に追われて行方不明になる

園村友彦:パソコンショップ『MUGEN』の店長

中嶋弘恵:友彦とアルバイト先で知り合いになる。恋人

松浦勇 :質屋『きりはら』の店長。ブローカー

 

第九章

高宮誠が勤める会社でシステムが外部に漏れている可能性が浮上していた。犯人は誰かのIDとパスワードを入手したという話を聞いて、誠は従業員証の裏にメモしていたことを思い出した。

私生活では雪穂との結婚生活は上手くいっていなかった。彼女の株や店舗運営などの成功体験を身近で感じて劣等感を抱くようになっていた。

ある日、ゴルフ教室に通わないかと誘われて夫婦で見学に行くことにした。雪穂は急遽仕事が入ってしまい誠一人で参加することになった。そこで三沢千都留とばったり再会します。

その後色々あり、誠と雪穂は離婚することになった。

 

▼主な登場人物

高宮(唐沢)雪穂 :誠と離婚して独り身に戻る

高宮誠      :千都留と再会して想いを実らせる

三沢千都留    :誠と再会して想いを実らせる

 

第十章

三年前、今枝直巳は調査会社にいた。そこで高宮誠が勤めていた会社のシステムが盗まれた件について調査をしていた。調べていくうちに秋吉雄一という男が浮上したが、正体は最後まで分からず、依頼も打ち切りとなってしまった。

現在独立した今枝の元へ篠塚一成がある女性を調べてほしいと訪ねてきた。一成の従兄で篠塚康晴と現在交際している女性、、、雪穂のことだった。彼女と深くかかわった者に何らかの形で不幸な目に遭っていることを説明した。

雪穂と直に対面して半信半疑だった疑いが確信へと変わりつつあった今枝探偵。藤村都子が流した噂と代償、手塚(川島)江利子が意図的に雪穂と離れていった理由、雪穂の裏の顔へと着々と迫っていた。

 

▼主な登場人物

今枝直巳     :探偵

篠塚一成     :雪穂の件について今枝に調査を依頼した。

手塚(川島)江利子:結婚して暮らしていた。雪穂とは疎遠

 

第十一章

雪穂を調査していた今枝は何者かに狙われます。

ある日喫茶店で朝食を食べていると亮司と雪穂を追っている笹垣刑事と知り合う。彼からの情報で秋吉雄一という男は桐原亮司で間違いないことが判明した。一つのことが崩れると、すべて繋がっていたのではと何かを掴んだ。誠との結婚から離婚まですべて雪穂の計画だったのではないかと疑います。

 

主な登場人物

今枝直巳:あと一歩のところまで迫ったが、、、

 

第十二章

薬剤師の栗原典子は秋吉雄一と同棲していた。彼から青酸カリを手に入れることはできないかと頼まれる。ミステリー小説のためだという言葉を信じて、病院から無断で持ち出し彼に渡した。しばらく姿を消していた彼が戻ってきて増えた荷物。今枝探偵事務所のファイルと量が減った白い粉末。これが意味するものとは。

篠塚一成の元へ笹垣刑事が訪ねてきました。今枝が行方不明になったことを教えられ、彼の身に何か起きたと考えていました。時効を迎えた18年前の事件の決着をつけるためにここまで辿りついたことを説明した。

雪穂を引き取って育ててくれた唐沢礼子が亡くなった。葬儀に参加していた一成は、従業員からオープンが間近に迫っており、忙しくなる前に亡くなってよかったと話を盗み聞きしていた。お荷物になりそうな礼子を殺した?背後に亮司が居ることを知っている一成は、バカバカしい考えだが捨てられないでいた。準備を終えて二人っきりになって、改めて雪穂の魔力を身を持って感じたのだった。

 

主な登場人物

栗原典子:薬剤師、同棲していた秋吉雄一に青酸カリを渡していた

 

第十三章

その後、雪穂は康晴と結婚します。康晴には、前妻の子供が二人いて娘の美佳は雪穂のことを毛嫌いしていた。幼い娘にも容赦しない雪穂は、男に襲わせて自らが助けることで絶対的な支配下に収めることに成功し、妻であり母という安息の地を手に入れた。

説得を諦めていない一成は、笹垣を連れて康晴の元を訪ねた。彼女の本性が詰まったエピソードをぶちまけますが、惚れている康晴はまったく信じようとしない。しかし、ある証拠品が見つかり、大きく動き出すことになる。

雪穂の店舗が大阪にオープンした。刑事を引退している笹垣は、亮司が今日絶対現れると雪穂の身辺を見張っていた。

 

そして、運命の時が訪れた。

どんな終止符を迎えるのかは、是非読んで確かめてほしい。

 

19年にも及ぶ月日が流れて、めまぐるしく時代が変化した。亮司と雪穂が主役の物語なのは間違いないはずが、多くを語らず、関係者の視点で固められた小説。二人が直接会う描写は無いはずだが、二人を結びつける強い絆。背景にあるのはおぞましい過去であり、決して誰にも悟られず、別々の人生を歩んで行った。残忍、冷静、覚悟、ダークな部分が目立ち、心を失った人間たちの悲劇。

愛なのか、贖罪なのか、それとも、、、

 

感想/まとめ

東野圭吾さんと言えばこの作品は外せないでしょう。厚さ、重さ、幅と読み応えしかない。面白さもしっかりと背後をピタッとマークして付いてきて、読後まで周回遅れすることなく終えることができた。残念ながらあまり好みではなかったことが悔やまれますが。