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東野圭吾さんの「祈りの幕が下りる時」を読んでみた ネタバレあり/感想

今回紹介するのは東野圭吾さんの「祈りの幕が下りる時です。今回起きた一つの事件が恭一郎に大きな転換を持つことになる。日本橋にこだわる理由、母親の失踪理由などこれまで語られなかった真実が明らかになるシリーズ第10弾!

 祈りの幕が下りる時

加賀恭一郎の元へ母親の田島百合子が亡くなったことが綴られた手紙が届いた。すぐさま返事を出して、遺骨と遺品を受け取りに仙台へと向かった。恭一郎を迎えてくれたのは宮本康代という女性だった。失踪してからすぐに彼女の店で働き出しこと、親しく付き合っていた男性がいたことなどを生前のことを知らされた。母親が住んでいたアパートで遺品整理を行い、この地で過ごした16年間の思いを詰めた段ボールを家へと送った。これでようやく息子と一緒に住めることになる。康代にお礼を述べて別れる際に、綿部俊一という男性ことについて何か分かりましたら連絡を下さいと手がかりについては忘れなかった。

さらに10年以上の歳月が流れた。その間に東日本大震災原発事故が日本を襲い、小説のみならず、現実でもあの時の恐怖は今も忘れることはない。

そして、物語は下町のアパートで女性の他殺死体が発見された事件へと移っていく。

 

小菅のアパートで滋賀県在住の押谷道子の遺体が発見された。その部屋の住人である越川睦夫という男性は行方不明となっていた。捜査一課の松宮(加賀のいとこ)は、職場や交友関係、東京へは何しにきたのかを調べるために滋賀へと向かった。彼は、新小岩の河川敷でホームレスが殺された事件との類似点があることが気になっており、関連性を疑っていたが、現時点ではそこまで重要視されてはいなかった。

滋賀へと到着してさっそく勤務先や営業先で聞き込みを開始してみたが、成果が得られなかった。しかし、『有楽園』という老人ホームに入居している問題のある女性が、中学の同級生で演出家・脚本家の浅居博美の母親だと見抜いた。本人は否定しているが、道子は母親の件で上京していたことを突き止めた。

 

現在、明治座で博美が演出を担当している舞台『異聞・曽根崎心中』が公演中である。松山は話を聞くために博美の元を訪ねて、道子と久しぶりの再会をしたことは認めた。さらに母親との軋轢が明らかになる。夫と娘を捨てて、男に走り、店のお金の持ち逃げ、さらに多額の借金まで残していった。それが彼女の人生や父親の死にも影響しており相当恨んでいた。

 

道子の上京目的は分かったが、殺害された理由が未だに分かっていない。殺害現場となった小菅のアパートとの関連性も見つからず、住人である越川睦夫は依然行方不明のままであり、捜査は難航していた。松宮は、捜査一課の先輩でもあり従兄でもある加賀に事件の相談をした。日本橋署が主催した剣道教室で博美とは知り合いだったことを教えられて、加賀が持つ人間の本質を見抜く力にも期待していた。そこで、松宮が気にしていたホームレスの事件のことを話してみると、DNA鑑定に使用した所持品をすり替えた可能性があることを指摘された。こうしてもう再度鑑定をしたところ、新小岩の遺体と行方不明だった越川睦夫のDNAが一致したのだ。二つの事件は完全に繋がったのである。さらに越川睦夫の部屋から押収されたカレンダーが解決へのスピードを加速させる。各月ごとに書き込まれた日本橋にある橋の名前と加賀の母親の遺品にあったメモの内容が一致していたのだ。筆跡鑑定も同一人物で間違いないと示していた。こうして加賀も捜査に加わることになる。

 

越川睦夫と綿部俊一が同一人物だと判明したまではいいが、繋がりや接点が掴めず、手がかりも得られない。橋巡りをするという加賀に松宮も同行して進捗状況を確認した。そこで橋洗いという行事があることを教えられて、誰かが撮影した写真に写っていることに一縷の望みに賭けて写真集めに動き始めた。父親の件でお世話になった金森登紀子の弟(カメラマン)にも協力を依頼した。そして、あちこちからかき集めた中に浅居博美の姿があったのだ。

 

捜査本部でも浅居博美が事件に関わっている説が濃厚になっていた。そして、押谷道子と浅居博美の接点である小中学校時代へと遡って捜査を広げてみると中学の時の担任だった苗村という教師が行方不明だと突き止めた。博美が過ごした養護施設や当時の同級生、苗村の元妻の妹さんからの聞き込みで博美と苗村の深い関係性も次第に浮かび上がってきた。一方加賀は、博美が剣道教室で接触してきたのが偶然ではなく必然だと考えていた。その証拠も徐々に捉え始めており、博美とも接触して絶対的な証拠も手に入れていた。

 

新たに原発の作業員であった横山一俊という男性が浮かび上がってきた。松宮は当時の作業員から下請け会社の名がワタベという情報に正解を感じとっていた。越川睦夫、綿部俊一、横山一俊とつながりを見え始めた男性の正体とは?

 

そして物語は佳境を迎える。

 

ネタバレ/感想/まとめ

面白かった。まさにシリーズのラストにふさわしい大作でしたね。形は違うが、離れ離れになってしまった二人の親子の絆がテーマになっている。それが正しいことなのかは分からないが、生きるために必死になる姿を描いた内容に最近涙もろくなっている僕には読むのが楽しくもあり辛くもあった。

 

忠雄が残した母親の生きた証、離れていても息子のことを第一に考えていたこと、幸せだったと綴られた手紙を読んでどう感じるのか。

とにかく一段落したのだから、今度は本人が幸せになる番でしょうね。食事の誘いまでは描かれていましたが、加賀恭一郎と金森登紀子との関係はどうなっていくの気になります。「卒業」の沙都子や「眠りの森」の美緒が懐かしいですね。

 

評判がいい阿部さん主演の実写ドラマも観てみたいですね。

後、松宮さんが主役の新作が出たみたいですね。こちらも是非読んでみたい。

 

 

▼母親のこと

水商売をしていた過去を親戚から攻められ、さらに介護や育児疲れがたまり精神の病気であるうつ病を発症していた可能性があった。当時はうつ病に関する知識が身近でなく、本人も病気だとは自覚していなかった。それでも何年間も耐え抜いたが、我慢の限界が来て家を出て行った経緯があったのだ。加賀は捜査一課にこないかと誘われているが、綿部俊一という人物を捜すため、メモの意味を解き明かすために日本橋に留まっていのだ。

 

 

▼綿部俊一の正体

綿部俊一の正体は、浅居博美の父親、忠雄だった。自殺したことになっていたが、別人の死を利用して存在を消していたのだ。博美は逃亡生活で出会った原発作業員の横山一俊から襲われそうになり、逃れるために反撃をしたが殺してしまったのだ。ここから忠雄は横山一俊としての生きることになり、博美は養護施設に入れられて離れて暮らすことになった。決して誰にも正体がばれてはいけないので密かに繋がっていた親子。例のカレンダーの橋の名前は待ち合わせ場所だったのだ。娘の成功と陰からの父親の支え、二人の絆は最後まで強かった。

これで、ようやく加賀も区切りをつけられたのではないでしょうかね。

 

▼犯人

押谷道子と苗村を殺害したのは、忠雄だった。両方とも正体がばれてことに口封じのためだった。そして、父親を殺害したのは博美だった。忠雄は人生に疲れもう限界だった。ならば娘である自分の手で愛する人を手にかける、、、舞台『異聞・曽根崎心中』のラストシーンを彷彿とさせました。

う~ん、なんとも切ない。