大山誠一郎さんの「アリバイ崩し承ります」を読んでみた 感想
今回紹介するのは大山誠一郎さんの「アリバイ崩し承ります」です。タイトル通りアリバイ崩しがメインの物語です。全7話から構成された短編集になっています。一話一話トリックがしっかりと練られており、おススメですよ。
アリバイ崩し承ります
4月から県警本部へ異動したばかりの新人刑事の僕。今日はなかなか休みが取れない日が続いた中、ようやく取れた貴重な休日の日だ。引っ越してきたばかりでほとんど知らないこの地を、散歩がてら歩き回ってみることにした。
駅に着き、商店街をぶらぶらしていると腕時計が止まっていることに気付いた。ちょうど目に留まった時計屋〈美谷時計店〉に入ることにした。電池交換をお願いすると女性店主がお迎えしてくれた。名前は、美谷時乃(ミタニトキノ)祖父の先代の跡を継いで営んでいると教えられた。
店内には「時計修理承ります」「電池交換承ります」という張り紙の他に「アリバイ崩し承ります」「アリバイ探し承ります」と怪しげな張り紙があった。職業柄アリバイという言葉に敏感な僕だが、間の悪いことに?アリバイでちょうど困っていたのだ。成功報酬で5千円、、、お安いのか?
捜査情報を喋ると守秘義務違反に該当するが四の五の言っていられてない。この出会いは何かの縁だ、担当する事件で悩んでいたアリバイ崩しをお願いすることにした。
第一話 時計屋探偵とストーカーのアリバイ
大学教授の女性が自宅で殺されているのが発見された。犯人として名前が挙がったのは元夫だった。別れた後もお金をたかりに現れてストーカー行為を働いていていたのだ。本人に確認してみたところ居酒屋で友人二人と飲んでいたと自信満々な答えが返ってきた。
第二話 時計屋探偵と凶器のアリバイ
死亡推定時刻に鉄壁なアリバイがある男性。さらに凶器に使用されたと思わしき拳銃は死体より先に発見されていたのだ。
このふたつが意味する答えとは?
第三話 時計屋探偵と死者のアリバイ
犯人は交通事故で瀕死の状態を負った。たまたま居合わせた僕に犯行の自白を残して力尽きた。その住所に駆け付けるとほんとに女性の死体が発見されたのだ。動機、物証、自供があり、書類送検するには十分な証拠が揃って簡単な事件かと思われたが、アリバイが成立してしまったのだ。
第四話 時計屋探偵と失われたアリバイ
ピアノ教師が殺されているのが発見された。被害者の妹と揉めていると情報を入手して本人に会いに行ってみた。すると犯行の日に真面目な彼女が無断欠席していて、服には血が付着しいたという。夢遊病に悩まされていて寝ている間に殺してしまったのか。
夢遊病と言う難敵を前にアリバイを探し出すことはできるのか?
第五話 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ
時乃のお祖父さんの思い出話。
小学生の頃にお祖父さんが考えたアリバイ崩し解けるかな?
第六話 時計屋探偵と山荘のアリバイ
休暇中に訪ねたペンションで殺人事件に遭遇した僕。ペンションにいた人間が犯人であることは間違いないのだが、一人だけアリバイがない人物がいたが、中学一年生の少年だった。彼がどうしても犯人だと信じられない僕は今回も時乃を頼ることにした。
第七話 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ
自宅で男性の死体が発見された。親族が土地を売却するため庭の手入れを業者に依頼したところ木の根元から白骨死体が発見された。白骨死体を辿っていくとその息子が復讐として犯行に及んだという可能性が浮上した。しかし、彼には友人と部屋にいたアリバイとその日だけ配信されてダウンロードできた音楽が壁として立ちはだかる。
感想/まとめ
面白かった。読み終えて一言見事な安楽椅子探偵でした。アリバイものに特化した短編集。新人刑事の僕が情けないと思いながらも一般人の時乃さんに依頼してあっという間に解決してしまうといった繰り返し。書いてみると単調ですが、崩す仕方がスピーディで爽快感が気持ちいい。
ちょっと無能くさい新人刑事くんですが手柄だけがどんどんポイントみたいにたまってしまい、これから刑事として成長できてるのか変に心配してしまう。彼女に頼れば万事オッケーみたいにならないでほしいですね。
トータルで見てもいろんなお話しが楽しめてグー。
続編ありそうなタイプなので期待してまっています。
小柄で兎みたいな女性、表紙の方が時乃さんなのでしょうかね?