有栖川有栖さんの「菩提樹荘の殺人」を読んでみた 感想
今回紹介するのは有栖川有栖さんの「菩提樹荘の殺人」です。アリスも知らない大学時代に探偵の片鱗を見せた火村の推理を含む「若さ」をテーマにした短編集。火村&アリスシリーズ!
菩提樹荘の殺人
▼アポロンのナイフ
東京都下で通り魔殺人が起きた。犯人は都立高校に通う二年生。未成年の為に顔写真と名前は伏せられているが、アポロンのように美しい容姿との噂にネット上では自称ファンで溢れかえっていた。現在は警察の見張りを掻い潜って逃走中である。そんな騒ぎが収まらない中、大阪で高校生のカップルが通り魔殺人と酷似した方法で殺されているのが発見された。わざわざ東京から大阪にまで出張してきたアポロンの仕業なのか。火村が掘り起こした事件に隠された真実とは?
こういう系は好きではないかな~
▼雛人形を笑え
人気急上昇中の若手漫才コンビ「雛人形」メビア(芸名)・矢園歌穂(本名)が自宅で死んでいるのが発見された。現場の状況から顔見知りの人間による犯行との見方が強まり、容疑者として名前が挙がったのは現「雛人形」相方・帯名雄大、初代「雛人形」メビア・小坂ミノリ、矢園の元相方・伊場裕伸の三人であった。突発的に起きた事件の真相とは?
火村&アリスみたいなコンビなら事件は起きないかもしれないね。
▼探偵、青の時代
偶然にも大学時代の知り合いと出会ったアリスは、法律事務所に勤めている彼女から火村&アリスの活躍を耳にしているとの報告とその流れでアリスの知らない大学時代の火村が探偵の片鱗を見せたお話しを聞くことになる。
勉強会という建前の飲み会に勘違いして参加することになった火村。火村以外の参加者たちが集まると、参加者の一人が実はみんなに聞いてもらいたいことがあると深刻そうにある告白をした。それを聞いたみんなの反応は大騒ぎになることはなかったが、火村の性格なら警察に行くべきだと主張するはずだ、このことは火村には話さないでおこうと意見が一致した。
その後、傘をささずに雨の中、自転車でやってきた火村はこのへんで事故があって警察に事情を聞かれたと、さっそく一同の秘密話に触れた。参加者の告白はこの事故の件であり、不自然に向けられた視線とみんながついた嘘をいとも簡単に見抜き、これからの判断は君たちに任せるよと帰っていった。
めちゃくちゃ面白かった。個人的にこれまで読んだシリーズ短編集で一番好きなお話しかもしれない。もっと火村さんの学生時代の話を読みたい。
▼菩提樹荘の殺人
アンチエイジングで人気のカリスマ・桜沢友一郎が別荘にある菩提樹の付近で死んでいるのが発見された。発見時、死体の上半身は池の水に浸かっており、トランクスを穿いていただけで、他に衣服を身につけていなかった。彼が着ていた衣服類は、池に浮かんでいた。
桜沢友一郎は女性に人気があった。とても五十三歳とは思えない若若しさ、甘いマスクに、聴衆を惹きつける話術に長けていた。本人も女好きで、複数の女性と交際しており、女性関係でのトラブルが殺害に繋がった可能性があると考えられたが、修羅場になることはほとんどなく、器用に別れるコツがあるのだと洩らしていた。
浮上した容疑者たちには一応のアリバイは証明された。そして捜査の為に池の水を抜いて発見された鞄を手がかりに事件の真相に辿りついた火村の推理とは?
桜沢氏クズすぎた。
年老いても若々しさを求めた桜沢氏とは違い、元気で達者な老人になることで若い人の希望になるような老い方をしたいと語る火村さん。価値観の違いだが、ためになるお話だった。アリスも若き日の苦い経験について触れ、いつの日か火村さんの過去についても語られる日がくることを楽しみに待っています。
感想/まとめ
面白かった。
火村さんの大学時代のエピソードがお気に入り。
もっと読みたいな~