安生正さんの「レッドリスト」を読んでみた 感想
今回紹介するのは安生正さんの「レッドリスト」です。東京を襲う異常事態。有名作『生存者ゼロ』の著者さんですね。
レッドリスト
記録的寒波が近づく東京。
ある病院に感染症を発症した患者が運び込まれてきます。
第一波では、舌のもつれ、顔面の強い引きつり、痙攣と歩行障害
第二波では、高熱、激しい下痢、痙攣、血圧低下、顔面蒼白、意識障害
次々と運ばれてくる患者で収容しきれない患者で病院は大混乱に陥ってしまう。原因を特定するために国立感染症研究所へ連絡がいく。
厚生労働省健康局の降旗一郎は、国立感染症研究所へ向かっていた。そこで室長の都築博士から今回の患者は破傷風と細菌性赤痢が原因だと知らされ、さらに赤痢の方は新種であることも判明した。動物学に精通した村上教授にも助言を求め、二人は今後対応を検討する会議に参加することになる。
▼東京を襲う生物
地上では全身をヒルに襲われて女性が死亡してしまう。下水道内で繁殖して地上で活動を繰り返しており都会はヒルにとって環境のいい場所になっていた。
さらに地下鉄のトンネル内でバラバラとされた人間のパーツがネズミに食われて損壊していた。警察は何者かによってバラバラにされて、地下鉄内に放置されたあと、ネズミに食われたと考えているがはっきりとした手ごたえがなかった。
地上と地下からの侵略と見えない犯人像に捜査は難航していたが、防犯カメラの映像からようやく不審な人物を捉えることに成功した。
今度は、全身痙攣、呼吸困難に陥る患者が発生していた。狂犬病である。野犬の少ない東京での発症に深刻さと異常さが見える。さらに人を襲うコウモリまで出現した。
ヒルの感染症から始まり、死体を食うネズミ、狂犬病の発症、人を襲うコウモリの出現と複数の事件が同時進行する中、悪化する天候が物語の鍵となる。一連の流れは、ここ最近都心で起きている不可解な事件にどんな関係があるのか?
劣勢の人間側に勝機はあるのか?
▼立ち向かう者達
次に何か起こるか予見できない状態が続いて疲れ切っていた。
解決に向けて対策している会議では、いらだちと責任のなすりつけがお役人さんのリアルさを表していた。経験を積んだだけで、成長したと勘違いする典型的な人達多い印象でしたね。
今作の主人公である厚生労働省健康局の降旗一郎は、自分の意見を封じて上司に従うタイプであった。学生時代のあまり目だ立つことなく日影の人生を送ってきた彼は、世界を変えるために必死に勉強してこの世界に入ったのに現実は非情であった。
失敗することもあり多くの人々に迷惑をかけてしまったこともある。それでも逃げることなく、最後まで真相究明に動いた事実。
上司に立ち向かう姿勢、信頼する仲間、自身の強い意志が見られ、一番物語で出世した人物だったのではないでしょうか。
感想/まとめ
面白かった。虫が苦手な方なのでグロさに参った。
ハラハラドキドキする展開で人間側頑張ってと応援していたが、その人間側にあまり魅力的な人がいなかった点が残念かな。
生物が都会の生活に合わせた成長したいうことは、田舎から出て来た若者が都会に染まっていくイメージなのかな。
都築博士の娘さんがアレルギーで苦しんでいる描写。僕もアレルギー持っているし人事とは思えない。村上教授の過度の食品衛生、清潔で空調の利いた住環境、抵抗力の低下することを選んだ愚かな人類の進化という響いた言葉。狂気すぎて彼のことは嫌いでしたが、語っていることは引き込まれていた自分がいた。
『生存者ゼロ』も読んでみたいですね。