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芦沢央さんの「火のないところに煙は」を読んでみた 感想

今回紹介するのは芦沢央さんの「火のないところに煙は」です。怪談をテーマとした短編集。どのお話も背筋が凍ると言う言葉を体験できるほど完成度が高い。可能なら昼間に読むことをおススメします。(深夜読んで失敗した体験談からのアドバイス

 火のないところに煙は

 

私の元に神楽坂を舞台にした作品を集めた「神楽坂怪談」の短編小説の依頼が舞い込んだ。今回は断るつもりでいたのだが、神楽坂という地名を聞いて思い当たる節があった。忘れようとしながらも、心のどこかにずっと存在しているある体験の後悔。このタイミングでの依頼は偶然なのか、それとも。洋室のクローゼットの奥に保管されていた書類が詰め込まれた箱。思い浮かべるのは小さな染みのことだった。

 

▼第一話 染み

八年前の私は編集者として出版社で働いていた。ある日、オカルト話や都市伝説をまとめた本をSNSで紹介したところ大学時代の友人である瀬戸早樹子から相談があると連絡を受けた。友達の角田尚子さんが困っていて、その本の著者である榊桔平さんからお祓いする人を紹介してもらえないかというものだった。

角田さんは結婚を考えていた人がいた。二人の将来をよく当たる占い師に占ってもらいに行ったら『不幸になるから、結婚しない方がいい』という結果だった。その後から彼氏の様子がおかしくなり、最終的に電柱に突っ込んで事故死したそうだ。

それでは終わらず今度は角田さんの仕事に不可解な現象がおきる。担当している広告に染みが付くようになる。どこでついたのか全く不明。さらにその染みをルーペ越しに覗き込むと「あやまれ」という無数の文字で書かれていたのだ。

榊さんに相談したところ、俺が知っている人のことを指しているのならヤバイ。彼氏はその人を怒らせてしまった。まずは占い師に謝るべきだと助言を受けて、すぐさま角田さんに電話をかけたが繋がらない。仕方がない長文になるがメールならと急いで打ち、よし終わったと思った瞬間に早樹子から連絡が入った。それは角田さんも車にはねられ亡くなったという連絡だった。

それから半月後、早樹子も交通事故でなくなった。三人とも共通して交通事故死ならび事故の直前に何かを目撃した?

 

榊さんがヤバイと評価する神楽坂の母は何者なのか?

これ以上進むのはまずいと感じながらも、もう戻れない所まできてしまったのかもしれない。この機会は、用意された舞台なのか。乗り越えないといけないことなのか。私は友人の死と向き合えずにいた後悔からの脱却するために、依頼された短編を書くべきだと決意して物語は進んでいく。

 

第二話から最終話までは簡単あらすじ

 

▼第二話 お祓いを頼む女

知り合いのフリーライターの鍵和田君子さんの体験談。当時ライターして働いていた君子さんが書いたオカルト特集を読んでお祓いを頼みこんできた平田という女性。私は祟られており困っており、さらに家族にまで危害が及んでいて助けてほしいと求めてきた。私は専門外ですと言ったのに一向に聞こうとしない。困惑しながらも辿りついた祟りの正体は意外なものだった。

 

▼第三話 妄言

榊さんからの情報。塩谷さんご夫婦は、長年の夢だった家を購入した。なかなか条件に合う物件がなく中古になってしまったが、住み始めて正解だと思えるようになった。しかし隣人の女性が次々とおかしなことを言い始めた。

妄言なのか、それとも。

 

▼第四話 助けてって言ったのに

結婚して、夫と義母と暮らし始めた智世さんの体験談。一緒に生活するようになってから生きたまま炎に焼かれて死ぬ、奇妙な夢を見るようになった。実は義母も同様な夢を見ており生死の境をさまよう体験をしたのだという。

家族で相談して引っ越すことに決めたのに、あんなことになるなんて。

 

▼第五話 誰かの怪異

 四月から一人暮らしを始めた大学生の岩永さん。古さは目立つが格安物件のアパート見つけすぐに入居を決めた。しかし次第に誰かの気配を感じるようになり、どうするか対処に困っていたところ、友人の知り合いで霊感のある岸根さんを紹介された。しかし、お祓いは失敗。岩田さんもすぐに退去の決断をした。いったい何があったのか?

 

▼最終話 禁忌

榊さんから指摘されたあることを巡り、私の中で疑惑が膨らんでいく。

最終的に明確な答えは示されないまま終わりを向かるが、また連絡すると別れた榊さんと連絡がつかない。

 

感想/まとめ

面白かった。本屋大賞ノミネート納得。意気揚々と読み始めたのはいいが、めちゃくちゃ怖くて深夜に読んだこと後悔しましたよ。一話一話完成されており、恐怖心も読みごたえも抜群でした。全話で繋がりがあるだろう占い師の正体は不明のまま終わりを迎えたが、読者にもやもやを残す感じがまたいやらしくも感じた。

 

虚構と現実の区別がつかないラインを攻めてくる不安定な物語。いつのまにか語り手である私にも怖さを感じるようになり、こちらも感情が不安定になってしまいましたよ。平常心平常心。縁にもさまざまな種類があり、その忠告は忘れずに心に閉まっておくことにします。

 

みなさん染みの「あやまれ」には気づきました?しっかりと再現されていましたね。これは誰でもビビりますよ。

 

小野不由美さんの残穢を思い出しましたよ。

lbookneet.hatenablog.com