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深水黎一郎さんの「世界で一つだけの殺し方」を読んでみた 少々ネタバレ/感想

 今回紹介するのは深水黎一郎さんの「世界で一つだけの殺し方」です。「不可能アイランドの殺人」&「インペリアルと象」二つの怪事件に芸術探偵・神泉寺瞬一郎が挑む!

 世界で一つだけの殺し方

▼不可能アイランドの殺人

十歳の天才少女のモモちゃんは、パパとママの三人での久しぶりの家族旅行をとても楽しみにしていた。ただちょっと心配事があり、ホテルに到着するなりママが体調不良でダウンしてしまう。ひとまずパパと二人で周辺をぶらぶらすることになり、名残惜しく見送るママを安静にしてゆっくり休んでと気遣いホテルを後にした。

 

それから二人並んでしばらく歩くが、パパは特に何も言わない。だからモモちゃんも黙って歩き続けた。ところでこの街はあまり観光地らしさもなく、何の変哲もない、どこにでもある地方都市なのではと印象を受けていた。しかし、この後からそんな退屈さを吹き飛ばすような摩訶不思議な現象が次々と起こりだす。

 

警察に追われているスリ男が池の水の上を普通に地面の上を走るように渡っていく姿を目撃し、広場で売っている屋台は一瞬目を離したすきに焼きそば、茶そば、明太子スパゲティと変化していく。

掲示板に張られていた紙を手に持つと一瞬のうちに跡形もなく消してしまう女性に目を疑い、トンネルに入った列車消失、巨大な石垣消失、先ほどのスリ男が一瞬で消失する消失三連続を味わう。

ディナーのために寄ったレストランで窓の外から見える噴水がありえない動きをしてモモちゃんを始め、その他大勢のお客さんを驚かせていた。

 

ここでとうとうパパからネタばらしの時間。実はこの街全体が、不可能を可能にする科学のテーマパークであり、〈不可能アイランド〉と呼ばれていた。今日モモちゃんが目撃した不思議な現象全てが映像や錯覚ではなく、化学現象を利用して不可能を可能にしていたんだよとパパは自慢げに披露した。実は、パパもテーマパーク建設に関わっていたんだよと明かされて納得。モモちゃんは、今日一日楽しませてくれたことに感謝したのであった。

 

しかし、物語はここで終わらない。ホテルに戻るとお風呂場でママが亡くなっていたのだ。睡眠薬が効きすぎて眠ってしまったことが原因の事故死として処理される可能性が高まった。これに待ったをかけたのがモモちゃんである。知り合いの芸術探偵・神泉寺瞬一郎に相談してこれまでのことを説明すると多分分かったとの返事があった。

 

意を決した小さな探偵モモちゃんが犯人であるパパを告発する時間がやってきた!

 

▼感想

和希ママが男性だった、モモちゃんに何か秘密があるのか、など意味不明な予想を立てていた自分が恥ずかしい。この年で二人のママの愛を失ってしまったことは悲しいことだが、愛されていたことはモモちゃんならきっと理解してくれるでしょう。

 

▼インペリアルと象

象使いのタウィと旅行客のメグミ。大地震により発生した津波を象たちの異常暴走により助かった物語が冒頭に挟まれている。

 

動物園で坂巻繁雄のピアノリサイタルが開催された。動物園は楽器を演奏する環境に適した会場とは言えない。問題や課題も山積みで園長が新たな試みを心配する者もいた。しかし、いざ蓋を開けてみると心配をよそにこの試みは大成功を収めた。そして記念すべき第十回目を迎える今回は世間一般に名の知られたピアニストを呼べるまでの規模に成長したのである。

 

さて今回も問題もなくクライマックスを迎えるかに思えた矢先に象が突然暴れ出し、飼育員の男性を襲って殺してしまう。状況から見ても事故だと判断するのが正しいかと思われたこの事件を芸術探偵・神泉寺瞬一郎が導き出した驚くべき真相とは?

 

▼感想

登場人物の葉子さんに注目した。象のことをゾウちゃん呼びで心が震え、絵に描かれた二次元の女の子にしか興奮できない男の人みたいとの発言では、グサッとくる言葉で心が震え僕のライフはゼロになりましたとさ。

情報量が多く、パンクしそうになった音楽関係の専門用語はほぼ飛ばしてしまったことは申し訳ない。

 

感想/まとめ

面白かった。

初めて深水黎一郎さんの作品を読みましたが、芸術探偵・神泉寺瞬一郎さんが活躍するシリーズ?ものでした。

バラバラだった三つの物語がリンクするような構成がお見事です。モモちゃんママのやりたいことをやって、後悔しない人生を歩いてね。この言葉が、エピローグのタウィとメグミに反映されており、物語の締め方にも拍手を送りたいです。

プロバビリティの犯罪、、、覚えておこう。