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井上真偽さんの「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」を読んでみた ネタバレ/感想

今回紹介するのは井上真偽さんの「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」です。結婚式中に発せした毒殺事件。数多の推理と論理的否定が飛び交う中で奇蹟探偵・上苙は、奇蹟を証明出来るのか?

 聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた

▼第一部

とある目的のため、地方の田舎町を訪れたフーリンは以前金を貸していた山崎佳織と接触した。彼女の車で田畑を走っていると、祠を参拝しているワンピース姿の女性とすれ違った。明日結婚式を挙げる瀬那(花嫁)さんですよと教えられ、娘の双葉が花嫁の付き添い役を務めるんですよと自慢げに語っていた。この地域の言い伝えで、祠にはカズミ様(不本意な結婚を強いられたカズミと言う若い娘が男衆を皆殺しにした)が祀られていること。また、瀬那が嫁ぐ相手の俵屋家の評判は良くないとこっそり教えてくれた。

 

山崎親子の勧めもあり、フーリンは結婚式を見物しにいった。古式ゆかしい作法に則った婚礼は、圧倒されるものがあった。炎天下の中、ゆっくりと進められた花嫁道中はようやく花婿の屋敷に到着した。典型的な日本庭園の武家屋敷。その大座敷で挙式は行われることとなる。

 

挙式は、祝辞、挨拶、婚礼品の交換と滞りなく進められた。それが終わり、親族による〈大盃の回し飲み〉で毒殺事件が起きてしまう。同じ盃を回し飲みした八人のうち三人(花婿、花婿父、花嫁父)とムギ(犬一匹)だけが殺害されるという不可解なものだった。盃を回す順は、花婿、花嫁、花婿父、花婿母、花婿上妹、花婿下妹、花嫁父、花嫁伯母という順番だった。双葉が飼っているムギが乱入して酒を舐めてしまうハプニングがあったが、それ以外は進行通りに見えた。死因は砒素によるもので、瀬那の鞄から砒素が見つかり、周囲から疑いの目で見られてしまう。そんな殺伐とした雰囲気の中で少年探偵の八ツ星(上笠丞の元弟子)が現れて事件の現状を説明する。

 

回し飲みの順から、被害者の間に必ずあなたがた誰かが入っている。単純な花嫁単独犯人説では成しえない。全員飲んだふりをした共犯者という解釈もできる。不可解な「飛び石殺人」のこの事件のトリックを明らかにしない限り、警察はあなたがたを疑い、立場も危ない。小さな名探偵八ツ星の説得に応じて、論理的な検証を行うことになった。

 

〈奇数番殺害説〉〈時間差殺人説〉〈一人前殺人説〉〈犬故意乱入説〉等、次から次へと出てくるバリエーション豊かな仮説と親族の醜い一面。八ツ星は、そのどれもが花嫁の砒素が使用されたことを論拠に犯人は誰かに濡れ衣を着せるために、花嫁の砒素を使ったという論理を披露して仮説を否定していく。

 

そして第一部のラストはフーリンが自らが犯人であると自白した。

 

▼第二部

事件から一週間後、フーリンはかつて所属していた組織のボス・シュンに呼ばれて客船に乗り込んでいた。そこで双葉が飼っていたムギ、旅行中にはぐれたシュンの飼い犬だったことが判明する。飼い犬の死に怒りがおさまらないシュンは第一部の事件の関係者を拉致して、フーリンに尋問するよう命じた。

八ツ星が助けに参上するが、エリオ(シュンの愛人)やリーシー(フーリンのかつての仲間)による仮説の否定の否定で撃沈する。絶体絶命の中で、上笠丞が満を持して登場する。シュンがフーリン犯人説に辿りつくが、その可能性をすでに考えていた上笠は否定して、カズミ様による奇蹟だと譲れない信念を持ちだして、反証し始めた。

 

▼第三部

花嫁伯母から真実を知らされる。

 

感想/まとめ

面白かった。ノベルズ版を読んだんですが、表紙がキラキラして目がちょっと痛かったのはご愛敬。

今作も無限にある可能性がいっぱい、いっぱい登場しましたね。それを真っ向から否定する上苙探偵相。変わらず頭を使う小説でパンク寸前ですが、引きずり込まれてしまう魅力がある。いわゆる普通の名探偵とは違った推理に目が離せない。

 

何はともあれ、みんな無事でよかった。次回作も期待したい。