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有栖川有栖さんの「ダリの繭」を読んでみた ネタバレ/感想

今回紹介するのは有栖川有栖さんの「ダリの繭」です。サルバドール・ダリの心酔者である社長が殺された。事件解決に立ち上がった火村&アリスが挑む、作家アリスシリーズ第二弾!

 ダリの繭

推理作家・有栖川アリスの最新作完成と臨床犯罪学者・火村英夫の三十三歳の誕生日を祝ってフランス料理店でささやかな乾杯をしていたところに、全国展開している宝石チェーン店オーナー社長の堂条秀一が秘書の女性同伴で入店してきた。シュールレアリスムの巨匠、サルバドール・ダリの心酔者としても有名な彼は、ダリを真似てそっくり同じ形をした髭を生やし、トレードマークとしていた。

あんまり人様をじろじろ見るのも失礼だと話題を火村のフィールドワークに変えた。最近警察からお呼びがかからないと語っていたが、世に犯罪の種は尽きないと物騒なフラグを立てたせいか、それから一週間と経たないうちに彼の言葉は的中する。

堂条秀一が週末を過ごす六甲山の邸宅で殺されているのが発見されたのだ。フロートカプセルと呼ばれる瞑想機械の中で発見された死体は、彼のトレードマークであった髭が剃られており、他にも不可解な点がいくつも見られた。

火村に警察からお呼びがかかって捜査協力することになった。偶然にもアリスの友人が事件の関係者になってしまい、アリスも彼のフィールドワークに同行することになる。

 

堂条秀一:ジュエリー堂条オーナー社長。シュールレアリスムの巨匠、サルバドール・ダリの        心酔者であり、ダリを真似てそっくり同じ形をした髭がトレードマーク

堂条秀二:ジュエリー堂条専務。秀一の弟

長池伸介:ジュエリー堂条デザイナー

湯川元雄:ジュエリー堂条営業部長

相馬智也:ジュエリー堂条商品企画室長

鷺尾優子:ジュエリー堂条秘書

吉住訓夫:大手広告代理店に勤める。アリスの友人。秀一の腹違いの弟

 

週明け無断欠勤した堂条秀一社長のことを心配した専務の秀二、営業部長の湯川と秘書の優子は、彼が週末を過ごす六甲山の邸宅を訪ねると、殺されているのを発見した。

 

死体は、フロートカプセル内を裸で浮遊していた状態だった。おまけにトレードマークだった髭がきれいに剃られていた。何故か脱いだ服がなくなっており、下着だけが伏せた籠の下から発見された。犯行現場はリビングで、犯人によってフロートカプセルに入れられた。凶器も不明。いつもは40分にタイマーをセットにしているが、この日は50分になっていた。

 

近隣に人家がないことから、目撃者がいる可能性は低い。凶器も不明で、後始末も完璧であるが、事件現場から浮かび上がってくる、妙なちぐはぐな様子から感じられる。多くの不自然さんが、犯人の望んだことなのか、予想外のことなのか火村も現時点では説明しきれないでいた。

 

社長という立場から、利害関係を重点的に洗い出していく警察。社員はもちろんのこと、特に住吉が何か隠しているのではと疑っていた。

犯行があった日に社長に呼ばれてフロートカプセルに入っていた。カプセルから出ると、服が血まみれになっており、倒れている社長を発見した。冤罪を恐れて、偽装工作して逃げ出したことを認めた。

だが、実際に下した実行犯は別にいる。判明した凶器からあぶりだされた犯人とは?

 

感想/まとめ

面白かった。

サルバドール・ダリの子宮内楽園説と彼の心酔者でフロートカプセルを胎内回帰願望に見立ていた堂条秀一。自我を防衛するための殻、逃避場所、コクーニング、オタク等、ストレス社会の現在を見据えたミステリーとも感じ取れた。

 

特に気になったアリスは小説を書くことが繭だと言う。高校生の頃、想いを寄せていた女の子に恋文を手渡した。胸を高鳴らせて、前向きな返事を期待した翌日、登校すると彼女が手首を切って自殺したことを知った。後日彼女が洩らした、生きててもつまらないとの言葉はアリスを虚構の世界に誘い、一心不乱に本格推理小説を書きづづけた。

そんな過去があったなんて。

まぁ今は火村先生とよろしくやっているアリスだが、ちょっと仲良すぎて引いてしまっている自分もいた。

隣人の真野早織さんと進展するのかちょっと期待して次のお話しへ行ってみようと思います。