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米澤穂信さんの「本と鍵の季節」を読んでみた ちょっとネタバレ/感想

今回紹介するのは米澤穂信さんの「本と鍵の季節」です。図書委員の男子高校生二人が遭遇する青春ミステリー。甘いだけでなくほろ苦さも青春のひとつ。また謎を解明した後の二人の関係が変化していく過程にも注目して読んでほしい。

 本と鍵の季節

▼913

騒がしい三年生が引退して静まり返る図書室。静かさという定位置を取り戻した図書室の今日の当番は僕こと堀川次郎と松倉詩門だ。松倉とは今年の委員会会議で知り合った仲だ。三年生が騒いでいた頃も一歩引いて自分から騒ぐことをしないという彼の立ち位置に共感を覚えてよく話すようになった。

誰も来ない図書室で今日も黙々と作業して終わるかと思いきや、引退した三年生の一人、浦上麻里先輩がやってきた。二人にお願いがって、亡くなった祖父が遺した開かずの金庫を開けてほしいとのこと。

なんだかんだで最終的には口車に乗せられて日曜日には浦上家にお邪魔していた。金庫のダイヤルには0から90までの数字が刻まれていた。あてずっぽうでは到底無理だ。ヒントや情報を求めて祖父の部屋を捜し始めた二人だったが、、、

 

▼感想

初っ端から驚きの結末を迎えましたね。

913という数字。図書館をよく利用する僕としては身近な数字でしたね。

 

▼ロックオンロッカー

夏の暑さに備えるために髪を切ることにした二人。ちょうど割引券を持っていた堀川が松倉を誘い行きつけの美容院へ向かった。この店は、荷物はロッカーへと、財布などの貴重品はビニールバックに入れて手元に置いて髪を切るシステムになっている。

随分フランクの店長に迎えられて席に着いた。カットを終えて店を出でから松倉がそうだと呟き、面白い見世物が見られると言い出した。

二人の目の前で起きた事件。傍観者になった瞬間だった。

 

▼金曜に彼は何をしたのか

テスト期間中に窓ガラスが割られたことからテスト問題を盗もうとして疑われている植田昇。彼は堀川と松倉の後輩の兄だった。後輩から兄のアリバイを証明してくれと頼まれて動き出した。

 

▼ない本

先週自殺した香田が読んでいた本を探してほしいと図書室を訪ねて来た友人の長谷川。彼は死ぬ何日か前に誰もいない教室で本を読んでいた香田を目撃していた。その時に彼が手元にあった便箋を本に挟んだことを思い出して、あれは遺書だったのではと思うようになった。しかし、本を読まない長谷川はどこを探していいのか困り切っていた。ここは、図書委員の堀川と松倉の出番である!

 

▼昔話をきかせておくれよ

松倉からの珍しい提案で昔話をすることになった。堀川は子供の頃の苦い思い出で父親から正しさを教えられてことを話した。

松倉は自営業者と泥棒のお話し。

ある日のこと自営業者の近所で空き巣が発生した。空き巣を警戒して現金をどこかへと隠したが、その本人が死んでしまい隠し場所は不明のままだ。残された息子は六年間の間に知恵を絞って、あらゆる場所を探したが見つけることができないでいた。ここまで話せば鈍い堀川でも松倉自身のことだと気が付く。

松倉は疑ってしまう、堀川は疑わない。これまで遭遇してきた幾つもの謎もこの二人の真逆の感性があってこそ解決してこれた。自分には備わっていない武器を持っている堀川に期待もしていた。照れながらもいい人だと最大限評価する堀川と協力してお宝探しを始めることになった。

 

▼友よ知るなかれ

あの形でお宝探しを終えた堀川と松倉。

しかし、ありえないことに気がついた堀川は独自に追加調査をするために図書館を訪ねていた。そこで判明した真実。嫌な予感がしたんだよと現れた松倉からの口で語られた真相。

別の意味を持ってしまったお宝探しを続行するつもりでいる松倉に対して

もう少し、ただの図書委員でいてくれないか

と、堀川からの言葉は届いたのか分からない。

 

また月曜に図書室で会おうと約束をして別れた。

 

感想/まとめ

面白かった。堀川くんと松倉くんは正反対な感性を持っていて謎に対しても違った解釈をしている。どちらが優れていると言えない点が素晴らしいですね。お互いを認めているのでいい距離感で友人関係を続けられているのでしょう。男女の恋愛が絡まない青春もたまにはいいですね。

二人とも頭の良さは抜群だ。それでいても会話の中に高校生らしさもあり、変に凝っていない。

(金曜に彼は何をしたのか)で窓ガラスを割った理由で松倉くんにはちょっと引いてしまった。堀川くんが戸惑うのも無理がない。

 

堀川くんが松倉くんを図書室で待つシーンで終わるので、来るのか来ないのか。捉え方は読者の自由。明かされないまま終わるので友を待つ心境をこっちまで味わえることができるのがちょっぴり憎い。

 

堀川くん視点ではなく、松倉くん視点の物語だったらまた違った印象を与える小説になったいたのかもしれませんね。