才羽楽さんの「君の思い出が消えたとしても」を読んでみた 感想
今回紹介するのは才羽楽さんの「君の思い出が消えたとしても」です。思い出コーディネ―タ―と名乗る女性から告げられた死の宣告。過去を向き合い未来へとつなぐ道、そして彼女に隠された秘密とは。
君の思い出が消えたとしても
予告なしに突然襲う閃輝暗点症という病に悩まされている遠藤達也。その病が原因で、今日も日雇いの仕事を遅刻してしまい、登録していた派遣会社をクビになってしまった。先が見えない完治という名の出口、なんでこんな人生を送らなければと日々の暮らしに絶望していた。
ある日、思い出コ―ディネーターと名乗る女性、月尾夢奈が達也の前に現れた。彼女は、一ヶ月後の八月三十一日にあなたは死んでしまうと告げて、思い出と引き換えに寿命を延ばすことができると説明した。信じられないでいる達也。しかし、本人にしか知らない後悔の過去を言い当てられ、信じるほかなかった。
ひとつ問題が発生しているという。寿命に変えるには、楽しかった思い出や嬉しかった思い出、幸せだった思い出が必要になる。しかし、達也には、上文の必要な思い出が一切なかったのだ。自覚していたつもりだが、他人に言われると辛いものがある。大丈夫!そこで思い出コ―ディネーターの私の出番だと明るい声で言う。
君がすることは私と友達になること。友達になって、良い思い出を作りましょうと言うので、彼女がそう言うなら、大丈夫なのだろう。あれよあれよという間に承諾してしまった。こうして二人は友達として繋がり、寿命を延ばすための思い出作りに動き出した。困難を乗り越え互いに惹かれ、距離を縮めていくふたり。しかし、彼女には大きな秘密が隠されており、、、
達也の後悔の過去と夢奈のやりたいことを書かれた四枚のカード。交互にカードをめくって、ゲーム形式で実行していく。
▼友人に謝れなかったこと
▼お兄さんに事実を伝えなかったこと
避けられない過去、これまで背を向けていた二つの後悔を夢奈に指摘された。このゲームの意図を汲み取れば、悪い状況のまま終わらせたから後悔となって苦しめている。今からでも何か行動を起こして、良い方向へと転換すれば良い思い出になる。敵の敵は味方になり、終わりよければすべてよし、というわけである。絶望しかなかったあの生活を抜け出すため、すべてをかけて彼女の言い分に一縷の望みを託すことにした。
感想/まとめ
面白かった。途中怪しい雰囲気だったけど、ハッピーエンドで良かった。
友人への謝罪、兄への劣等感などささいな勘違い、誤解による後悔。ひとつひとつの壁を乗り越えていく姿に思わずページの前で応援してしまう。
善因善果と悪因悪果に尽きる。
第14回『このミス』の隠し玉で登場した「カササギの計略」(もちろん読み終えてます)でもやられましたので、今回も何かあるのではと構えていました。ニヤリ、そうきましたか。
次回作も期待します!