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辻村深月さんの「かがみの孤城」を読んでみた 感想

今回紹介するのは辻村深月さんの「かがみの孤城です。2018年本屋大賞受賞作品になります。いじめ、家庭問題、人間関係を主題にファンタジーからミステリーまで詰め込まれて、読み応えあり、またメッセージ性が強い作品になっている。積み重なって迎えるあのラストは感動すること間違いないでしょう。

 かがみの孤城

▼五月

雪科第五中学校の生徒である安西こころは、いじめが原因で学校に通うことができず不登校になってしまう。こころと同様な子たちが通う「心の教室」を見学して、優しさにあふれる喜多嶋先生と出会う。「心の教室」初登校の日、これまで同様におなかが痛くなり、結局行くことができなかった。両親の顔色を伺うが、こころにもどうしていいかわからない。

 

ある日、こころの部屋にある姿見が光っていた。鏡を触ろうとして、手を伸ばしてみると鏡の中に吸い込まれてしまった。ファンタジー世界にありそうなお城がそびえ立ち、そこでオオカミの面をつけた女の子と出会った。戸惑うこころに対して「あなたは、めでたくこの城のゲストに招かれました!」と告げた。驚いて逃げ帰ったが、翌日また光り輝き姿見を確認して今度は自分の意思で入った。

 

今日はこころの他に同じ年頃の男女六人がいた。主催者?なのかオオカミの面をつけた女の子、オオカミさまと名乗る彼女の説明によると、この城は願いが叶う城だという。この城には誰も入れない、願いの部屋がある。入れるのは一人だけだし、願いを叶えることができるのは一人だけ。こころたちに今日から三月までの期間この城の中で願いの部屋に入ることができる鍵探しをしてもらいたい。

 

注意点としてこの城で活動できる時間は朝九時から夕方五時まで。これは絶対であり、このルールを破るとペナルティーを課せられる。一人でも違反したら連帯責任でオオカミに食べられてしまう。どうなってしまうのだろう。一通り言うことを終えたオオカミさまは最後に自己紹介して仲良くしろよと言い残し、消えてしまった。

 

▼登場人物(現時点)

安西こころ:雪科第五中学校、中学一年生。いじめを受けて不登校になってしまう。

アキ   :中学三年生。ポニーテールの女子。

リオン  :中学一年生。イケメン、サッカーが得意。

フウカ  :中学二年生。メガネの女子。

マサムネ :中学二年生。ゲーム好き。

スバル  :中学三年生。背が高い。

ウレシノ :中学一年生。小太り、食べるのが好き。

 

▼六月、七月

こころは未だに鏡の向こう側へ行ってなかった。どうしても臆病風に吹かれて鏡を前に躊躇してしまう。時間だけが過ぎていき、行動する気が失せてしまう。これでは学校やスクールと一緒だ。でも、あの童話の世界の部屋で過ごせることは魅力的にも感じている。妙な親近感が湧くあの子たちと関わることで何か変化することができるかも。そして叶えたい願いのために、鏡の世界へと飛び込んだ。

 

ゲームやお菓子、鍵探しと各々目的は違うが、不思議な世界で過ごす内に仲間意識が芽生え次第に仲良くなっていく。惚れやすいウレシノが女の子を順番に好きになっていくといった迷惑な出来事もあったが、女子三人がより仲良くなるきっかけにもなった。こころが両親にも口にしなかった不登校の理由を話す決意をした。

 

「真田美織を、消すこと」

こころがどうしても叶えたい願いだ。物怖じせずクラスで目立つ存在。小学校の頃、こころのことが好きだった池田という男子。真田美織は彼と付き合うようになってからその事実を知り、いじめのターゲットにした。家にまで押し掛けるようになり、仲間を引き連れて、威圧し恐怖で支配する行動に出る。心配するだろうお母さんには相談できずに、なかったことにした。その日を境におなかが痛くなるようになり、学校に行くことができなくなってしまった。二人とも真剣に聞いてくれて、我慢の堤防が崩壊して涙があふれるこころ。

 

▼八月、九月

フウカの誕生日プレゼントを買うために外出したが、お目当てのショッピングモールまで行くことができなかった。今のこころにはコンビニで買ったお菓子が精一杯。それでも喜んでくれたフウカを見て、頑張ってよかったと思う。

昼間家にいないことがお母さんにバレて喧嘩になってしまう。スクールの喜多嶋先生はいじめのことに気が付いていることを知り、いままでの先生とは違う感じが伝わる。

 

スバルやアキが髪を染め、仲間内にも温度差が現れる。ウレシノも二学期から学校に行くと宣言して、不登校なのに陰でバカにしているみんなを見返すつもりでいた。しかしリオンだけは学校に行っていた。親元を離れてハワイの学校に通っていたのだ。黙っていたつもりはなかったが、タイミング悪かった。しかし彼にも悩みがあることは伺えた。

二学期が始まってしばらくして城に戻ったウレシノは傷だらけの姿で現れた。不登校の原因となった友達と喧嘩したという。ウレシノの判明したハルカという名前をいじりながら温かく迎えてあげた仲間がありがたい。

そして外の世界のこころ。久しぶりに会った喜多嶋先生本人から改めてこころの現状を知っていると教えられた。そんな彼女に対して信頼と親しみを覚えるようになる。

 

▼十月

マサムネとアキが招集をかけて鍵探しに本腰を入れることになる。皆で協力して探そうと疎通したが、いきなり現れたオオカミさまから衝撃の事実が伝えられる。願いをかなえた時点でここでの記憶を失うと、唖然とするみんな。記憶を失っても叶えたい願いがあるアキとのその他で隔たりが生じた。

 

▼十一月 十二月

集められた七人の共通点が判明する。雪科第五中学校の生徒だったのだ。リオンも留学しなければそこに通うつもりだったらしく間違いない。お互いの話題は避けていたことからこの時期まで気がつくことはなかった。あそこ出身だよ、あそこは何々だよなどローカルな話題に食いつき、ちょっとした記憶の違いはあるものの、近所に住んでいることを実感してより一層身近に感じ、距離感が縮まった。城の中の雰囲気も和らいだ気がする。

 

現実世界で担任の伊田先生が、真田美織の件で話があるので会いたいと連絡が入った。勇気を出してこれまでの件をすべてお母さんに話した。気づいてあげなくてごめんと謝り一緒になって闘おうといってくれた。久しぶりに一緒に出かけて、親と子の絆がひしひしと感じた。

 

城でクリスマスパーティが開催された。楽しいひと時を過ごした後、マサムネから相談があった。三学期の初日にみんな学校にきてほしいと。両親が転入手続きの動きを見せ始め、まだみんなとお別れするのは嫌だと少しの間先延ばしにする対策として、一日だけ通う姿を見せる必要があると訴えた。みんなは無理しない範囲でいける場所(保健室や図書室)ならと了承してくれた。約束は一月十日。

 

▼一月

そして、迎える始業式の日。お母さんに明日学校に行くと伝えた。でも、どうしてこんな急なのと心配気味に聞いてきて、始業式だからと返した。しかし始業式は六日でもう過ぎているよと教えられた。確認したらホントに六日だったのだがマサムネの勘違いかもしれないと翌日学校に行ったが、誰とも会うことができなかった。保健室の先生に名前を告げてもそんな生徒はいないと言われてしまった。

 

▼二月

一月中こなかったマサムネがやってきた。みんな学校にきたことは信じて疑っていない。ではどうして会えなかったか、この一ヶ月考えていた結論をみんなに話した。パラレルワールドからやってきて、みんな違う世界線に住んでいる。始業式の日程がずれていたのもこのためだ。期限が過ぎたら外の世界で会えないのか?

 

▼三月

それぞれの進む道が決めていたが、アキだけは取り残されていた。危惧していたことが起きてしまう。アキがルールを破り、その日、鏡の世界へ行かなかったこころを除いてみんな連帯責任で食べられてしまう。アキを助けるために、鏡の世界で鍵探しをするこころ。もう目星は付いている。この世界は赤ずきん」ではなく「オオカミと七匹の子ヤギ」をモチーフに作られたいたことを。

子ヤギが隠れた場所を辿っていくとみんなの記憶が流れて来た。みんなの気持ちを背負いアキの元へ急ぐ。

そう、こころはパラレルワールドではなく違う時代に生きているという真相に辿りついたのだ。一度は諦めた助け合って生きていける道があること、そして未来で再会できることを伝えなければいけない。

 

▼開城&エピローグ

すべてが明らかになる。

 

▼登場人物(確定版)

安西こころ:2006年の世界からやってきた。雪科第五中学校、中学一年生。いじめを受けて不登校になってしまう。それでも仲間たち、喜多嶋先生、両親の理解を受けて、狭まった価値観である学校がすべてではないと知ることができ、転校しないで二年生から通うことになる。そこでリオンと再会する描写が最後にあった。

 

喜多嶋晶子(旧姓井上晶子)アキ:1992年の世界からやってきた。中学三年生。ポニーテールの女子。父親から虐待を受けていて、友達とも上手に付き合えなかった。みんなそれぞれ進む道があることに焦りと孤独を感じて帰りたくなかったアキはルールを破ってしまったが、最後にこころに救われた。エピローグでは、彼女の人生のその後が描かれており、結婚して喜多嶋先生と呼ばれるようになっていた。序盤から登場していた喜多嶋先生は大人になったアキだったのである。

 

水守理音 リオン:2006年の世界からやってきた。中学一年生。イケメン、サッカーが得意。幼い頃に亡くなった実生(姉)の存在で母親とあまり上手くいってなかった。病気の姉と元気な弟を比べれて子供ながら窮屈な生活を強いられていた。得意なサッカーが認められてハワイの学校に通っているが、本心は皆と同じ雪科第五中学校に通いたいとずっと心に秘めていた。二年生になり、日本に戻りこころと再会する。

 

長谷川風歌 フウカ:2020年の世界からやってきた。中学二年生。メガネの女子。はっきりと物事を言う性格。幼い頃からピアノの才能があり、お母さんと頑張ってきた。しかし成長するにつれ才能と言う言葉に限界が近づいていた。喜多嶋先生と出会いフウカにとって何が大事なのかを教えてもらうことになる。拒絶していたウレシノといい感じになりそうな予感。はたして再会できるのか?

 

政宗青澄 マサムネ:2013年の世界からやってきた。中学二年生。ゲーム好き。理屈っぽい話し方と態度がきつい。嘘をつくことが自分の居場所を作っていた。ホラマサと呼ばれていており、周囲を傷つけていたことある。両親が極端な学校嫌いなため、本人も学校、先生を見下す発言をするのはその被害者だとも言える。ただ読んでいて気分のいいものではなかった。ゲームに関する嘘をスバルが本当にしてしまう仕掛けには驚いた。キラキラネームをいじられる姿はいいね。

 

長久昴 スバル:1985年の世界からやってきた。中学三年生。背が高い。祖父母と暮らしいる。髪を染めたり、ピアスを空けたりしても誰も見咎める人がおらず、自分がどうなってもいいと思っていた。マサムネとのゲーム製作の約束を守ったことが時を超えて証明された。

 

嬉野遥 ウレシノ:2027年の世界からやってきた。中学一年生。小太り、食べるのが好き。惚れやすい性格をしており、女子三人とも好きになる。自分の性格を周囲の人間がどう感じているか敏感で自覚している。マサムネとの約束のために学校に登校して喜多嶋先生と会い、嬉しそうにしている描写が素晴らしい。さてさて、フウカと再会を果たせるのか?

 

オオカミさま 水守実生:最後にリオンに正体が見破られた。抜けていた年代の1999年は彼女だったのだ。城が閉じる三月三十日は姉の命日から推測してリオンだけが分かった真実。リオンが願った一緒に学校行きたい、遊びたいから作られた世界。感謝の言葉と最後にみんなのことを憶えていたいと願い、実生は善処するといい役目を終えた。

 

感想/まとめ

すごいお話しでしたね。ここまで書いて疲れましたが、それだけボリュームがり大作であるのは間違いない。終盤にかけての追いこみは興奮した。ミステリー部分は楽しめたので満足。

ただ、いじめや不登校系はやっぱり苦手ですね。もちろん感動したりしましたが、良い気分にならない。どっちかというと、いじられ系だったのでそれが影響しているのかな。それにしても学校や教師を見下している発言がどうしても違和感が最後まで拭えなかった。頑張っている人もいるだろうに。

 

 

この後今邑彩さんの「金雀枝荘の殺人」を読んでなんてタイミングだと笑ってしまいました。