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結城真一郎さんの「プロジェクト・インソムニア」を読んでみた 感想

今回紹介するのは結城真一郎さんの「プロジェクト・インソムニアです。

プロジェクト・インソムニア

特殊睡眠サプリメント「フェリキタス」で有名なベンチャー企業のソムニウム社による社運を賭けた極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア

年齢、性別、属性の異なる7人が90日間、夢の世界で生活を共にするという、そのプロジェクトの被験者に選ばれた蝶野恭平は、自身が抱える疾患、ナルコレプシーの治療にも何らかの効果があるのではと期待していた。

 

肉眼で辛うじて確認できるサイズのチップを頭に埋め込み、睡眠状態に入ると、チップは被験者の脳にアクセスを開始する。脳波を分析し、その人が見ている夢の内容を突き止めるのだ。チップが収集した各データは、瞬時にサーバー上で統合されて処理されることになる。そのおかげで被験者の夢の生活の共有を可能とした。

 

みんなを引っ張るリーダーのショータ。穏やかな老婦人のキョーコ。金髪ギャルでみんなを盛り上げるカノン。妖艶な大人の女性のモミジ。無口で神経質そうな紳士のアブ。恰幅の良い中年男のナメリカワ。セーラー服の女子高生のミナエ。被験者たちは、夢の中で顔合わせと自己紹介を済ますと90日間のプロジェクトが始まった。

 

夢の世界はなんでも自由に生みだすこと〈クリエイト〉ができる。特にこれといった問題も無く、慣れてくると思い思いの理想の夢を楽しんでいた。ここに集まった被験者たちは一癖も二癖もある何かを抱えている。現実世界で人々を縛るしがらみや世間体はここでは何一つ意味がない。すべてを脱ぎ捨てて、本当の自分になれる理想郷なのだ。また、夢か現実を見極める手段の一つとしてシンボルを探すことである。実験の舞台である〈ユメトピア〉の架空の存在、「胡蝶」が確認できればそれは夢の世界だと証明されるからだ。

 

しかしこの世界に潜む正体不明の悪意が理想郷をおぞましい悪夢へ変貌させる。夢の世界で起きた殺人事件は現実世界でもリンクして起きてしまう。自覚を保つことが何より重要とされる〈ユメトピア〉では恐怖や不安は毒である。

犯人だって、ここに夢や希望を抱いて実験に参加したはずなのに、なぜ凶行を繰り返すのか?最後の最後まで覚めることのない衝撃をどうぞ!

感想/まとめ

面白かった。

まさに夢のようなお話しでしたね。

現実で嫌なことがあると、夢の世界に逃避したくなる気持ちは共感できる。自分の願望を具現化できる理想郷と聞こえはいいが、今回の事件のような抜け道を辿り、夢と現実、今自分はどちらにいるのか曖昧になる恐怖感も味わえた。

 

現実と夢の世界両方に重点を置き、この実験とルール上でなければ成り立たない、動機と伏線回収はお見事である。