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中町信さんの「模倣の殺意」を読んでみた ネタバレ/感想

今回紹介するのは中町信さんの「模倣の殺意」です。今では定番となったあのトリックを用いた初の国内ミステリー。それゆえにミステリー好きにはある程度察しがついてしまうかもしれません。後の作品に多大な影響を与えた今作を、初心に戻り純粋な気持ちで楽しみましょう!

 模倣の殺人

坂井正夫の死から物語は始まり、彼と交流のあった中田秋子と津久見伸助の二人を視点に語られていきます。まったく違った視点でアプローチしていき、それぞれに登場する疑わしき人物を追求していく。

坂井正夫という男の死の裏側には何があったのか。

あなたは気付くことができるでしょうか?

 

▼坂井正夫の死

七月七日、午後七時、作家の坂井正夫が青酸カリにより中毒死した。自室のドアの鍵は、内側から施錠されており、現場は密室を指していた。鍵も特殊で簡単に合鍵を作ることはできないし、第一発見者の証言により自殺説が濃厚かと思われた。

問題は動機だった。部屋を探索しても、遺書らしいものは発見されなかったし、意欲的に創作活動に取り組んでいたという話もある。

それでも総合的に見て現場の状況と創作に対する煩悶もあったとし、自殺として処理された。

 

▼中田秋子

出版社に勤めている中田秋子は坂井正夫の自殺が信じられなかった。仕事やプライベートでも付き合いがあった秋子は、坂井がふさぎがちになった原因とでも言えそうな出来事を思い出していた。坂井の部屋を訪ねたときに偶然居合わせた遠賀野律子という女性。坂井の自殺とどうつながっているのか不明だが、彼女の出現が坂井の人生に影を落とすことになったと思えてならない。秋子は真相を確かめるために律子の元を訪ねてみることにした。

 

そこで律子の姉・真佐子の息子が行方不明になる事件が起きていたことが判明。この事件に生前、三百万という大金が入ることを示唆していた坂井が関わり、その報酬としてお金を支払う約束をしていたのではと推測し、さらに秘密を完全に抹消するために毒を盛ったのではと律子にぶつけてみた。バカバカしくて失笑している彼女に向かって、証拠をそろえればいいのでしょうと反発し、律子の事件当日の行動を追うことにした。

 

津久見伸助

ルポライター津久見伸助は坂井正夫の死を記事にするように依頼を受けてさっそく調査に乗り出した。すると彼の作品がある有名作家の作品を盗作したのではないかとの疑惑が浮上した。坂井との確執があり、盗作原稿であることを見抜けなかった編集長の柳沢邦夫に説明を求めた。

 

坂井の死は自殺ではなく他殺であったと、誰かに毒殺されたという考えを基準に記事を書くことに決めた津久見は、しつこく柳沢を追及していく。そして、ある理由から激しく憎んでいた坂井に対して盗作事件を利用して彼を殺したのではと推測をぶつけてみた。飛躍した推理をバカにしながら否定する彼を前に、万全な調査で記事にしますと柳沢の事件当日の行動を追うことにした。

 

 

感想/まとめ

面白かった。

今ではすっかり定番となったあの叙述トリックが初めて使用された小説、この破壊力抜群の一文に尽きるでしょう。

 

同姓同名の坂井正夫が二人いた。

秋子が調べていた坂井正夫(坂井A)が七月七日、午後七時に自殺する。

一年後、津久見が調べていた坂井正夫(坂井B)が七月七日、午後七時に殺される。

一年の時差がこのトリックの正体でしたね。