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周木律さんの「教会堂の殺人」を読んでみた 少々ネタバレ注意/感想

今回紹介するのは周木律さんの「教会堂の殺人」です。これまでの館とは一味違い、訪れた人を死へと誘う教会堂。「真理」を求めて幾つもの罠が仕掛けられたゲームに挑む。シリーズ第五弾!衝撃的ラストを見逃すな!

 教会堂の殺人

真理を求めて教会堂へと向かった小角田雄一郎が溺死体となって発見された。検視結果から事件の臭いを感じた船生警部補は単身で調査へと向かった。目的地である教会堂は、かつて船生が担当した事件である双孔堂を彷彿とさせて、同様に訪ね人に対して妙な威圧感を与えていた。

呼び鈴を鳴らすと、フードをかぶった怪しげな男が現れた。私は、沼四郎が設計したこの教会堂の守り人だと答えた。この場所では、人は常に賭けに挑まなくてはいけない。そう、それはゲームみたいなものだと言う。船生は、小角田もこの男が言うように「真理」を求めて、ゲームに挑戦して負けたから死体となって発見されたのかと想像する。それほどの魅力がこの先にある。彼女もまた、このゲームに興味を抱きつつあった。

 

教会堂へ向かう前に脇宇兵の元を訪ねた小角田が行方不明になったと知り、彼もまた「真理」という言葉に導かれるように旅立っていった。

 

その日は司にとって何をやっても空周りになる日だった。そして、百合子との関係にも頭を悩ませていた。理由は分かっている、彼女が自身に対する疑問を抱くようになったのだ。いつか話さなければいけないことだし、その時期がきたと思えば楽なのだがやはりためらっていた。真実が妹の危険につながるのではないかと、これまで以上に危ない目に巻き込まれしまうのではないかと、結論を出せないでいた。彼にとって珍しい逡巡。妹のことがほんとうに大切なことが表れている。

そして、運命の分かれ道になる一通のメールが届いていた。

小角田、脇両名の死の知らせ

教会堂へと向かった船生から連絡が途絶えたこと

これから僕(毒島)も教会堂に行きますと書かれていた。もし僕に何かあれば、警視正がこの事件を引き継いでくださいと遺言のようにもとれる文面もあった。

そして気になる言葉、誰もが「真理」を求めて赴いたと。

彼にとっての真理とは何か。どんな危険が待ち受けているか知らないが、行くしかない。百合子のためにとーー力強く決心したのだ。

 

善知鳥神も百合子に接触して二十二年前のあの日の真実、シリーズの核心へと迫りつつあった。彼女の口から事の顛末と私や百合子、そしてあなたのお兄さんもその場所にいて、事件から逃げ延びることができた生き残りだと教えられた。神もまた、百合子が求める解が存在している教会堂へとを誘っていた。差し出されたその手を取ってしまうのか、はたして。

 

感想/まとめ

今作は神の見えざる手、ナッシュ均衡、パレート効率的、囚人のジレンマ等もゲーム理論をテーマにしている。これまでの数学的ばかりではなく、趣旨が違っていて専門的部分に読んでいて初めて面白さを感じた。

教会堂の仕掛けは囚人のジレンマをモデルとしている。挑戦する人をあざ笑うかのような仕掛けにハラハラドキドキ。次の一手で「死」がまとわりつくので緊張感が半端ないです。

 

ここまでは良かった点を挙げましたが、、、けどあの人を退場させるのは駄目でしょう。ショック過ぎて本を文字通り投げ出してしまいましたよ。

感動する小説ではないタイプで泣いたのは久しぶりです。この涙はいらなかった。百合子さんのお兄ちゃんがもう聞けないなんて。

これまで堂シリーズ好きだったですが、その感情は無くなった。後はどういうラストを迎えるか、リーマン予想をどう証明するのかを機械的に読むだけでしょうね。