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石持浅海さんの「水の迷宮」を読んでみた 感想

今回紹介するのは石持浅海さんの「水の迷宮」です。一人の男の夢と死が水族館を舞台に想いを乗せて交差する。

 水の迷宮

▼序章

片山は水族館で飼育員として働いていた。彼が勤務する「羽田国際環境水族館」では、さまざまさ生物が展示されている。唯でさえ生き物を扱っているおり、毎日トラブルが起きないか神経を尖らせて勤務しているが、ここ数日は特に忙しくろくに眠っていなかった。片山にはやりたいことがあった。しかしそれを実現するには大変な労力や各所の協力が必要だった。まずは、自分ひとりで出来る限りの準備と計画を練って館長を説得することを目標に日々頑張っていた。

この日も残業。さらに追い打ちをかけるようにトラブルが発生。

水槽の異常を知らせる警告がモニターに表示されて現場へと向かっていた。水槽を泳ぐ生物たちの動きの鈍さに危機を感じて、移し替える為の予備水槽に反射的に手を突っ込んだ瞬間、痺れと共に心臓は動きを止めた。

 

▼本編

深澤と古賀を中心に物語は進む。二人は大学時代に同じダイビングサークルに所属していて社会人になった今でも付き合いがある。三年前、過労による心不全と診断されて亡くなった片山の後輩でもある。深澤は、命日には必ず水族館に足を運んでくれて今日がその日だった。

片山に推薦を受け古賀が働き始めたころは、経営破たんしてもおかしくない状況だった。それを、一変させるために現館長である波多野館長を招聘させて次々と策を講じていった。それらによって見事に水族館は生まれ変わり、人気のスポットになった。深澤も勤めていた電機メーカーがクラゲに悩まされていて際に、その手の研究をしていた水族館を紹介して実績を作り、都から改修の予算を認められた。壁として立ちはだかっていた資金問題の解決に手を貸しており、深澤も一員といってもいい。

挨拶を済ませ、事務室で職員達と談笑していた所にアルバイトからドアノブにぶら下がっていたと紙袋が届けられた。中身は、プリペイド式の携帯電話。待ち受け画面には金魚の画像が表示されていた。身に覚えのない物にいたずらでしょうとすぐ忘れられるはずだったが、携帯電話が鳴り響いた。

メールに東京湾の汚染はひどいですね』

いち早くその意味を理解した館長が、東京湾をモチーフにした水槽に職員を向かわせるとアルコールが投げ込まれていた。生物たちは予備水槽へ避難させて一応無事だったが、職員は憤りを感じていた。

すぐに、金魚を一匹百万で買いませんかと脅迫メールが届いた。

その後も送られてくるメールに職員たちは対応していくが、見えない敵に後手に回るしかなかった。

そんな中、職員の一人が死んでいるのが発見された。片山と同じように水槽付近で倒れており、心不全としか思えない状態だったのだ。

この水族館や職員にとって特別な存在だった片山。掘り起こされる過去。

脅迫犯と事故?殺人?両方を対応しなくてはならなくなった。

立場上部外者となる深澤を中心に事件を追っていくことになるが、はたしてどうなる。

 

感想/まとめ

碓氷優佳シリーズの人だと知って読んでみましたが、面白かったですね。

ラストの展開、贖罪の仕方には驚きましたね。犯人を捕まえて終わる物語ではなく、そこから始まる物語。関係者全員がある意味共犯者となる。根本にあるのは、片山さんの夢である。

特別な存在であった彼の夢を実現させるために必要な処置ですが、好みの別れる展開なのは間違いないです。僕としてはこの終わり方は好きですが、登場人物の皆さんは好みではなかった点が残念。

それでもこの世を去った片山さんも天国で喜んでいることを願いたい。

 

ミステリーとストーリー両方が楽しめる小説となっているので是非。

 

あまり関係ないけど、心臓マッサージと人工呼吸の描写で気道を確保するシーン。名探偵コナンの映画でもあったなぁと懐かしい気持ちになった。