米澤穂信さんの「満願」を読んでみた 感想
今回紹介するのは米澤穂信さんの「満願」です。
第27回山本周五郎賞受賞
2015年版「このミステリーがすごい!」第1位
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「ミステリーが読みたい!」 第1位
2014年のミステリー年間ランキングで3冠に輝いた、クオリティの高いミステリー短編集です。
満願
夜警
柳岡巡査部長は、部下である川藤巡査の葬儀を終え、彼が殉職した事件を振り返っていた。
夫から浮気を疑われ、刃物で襲われていると通報を受けて現場に駆け付けた。そこで、新人の川藤は、先に突っ込んできた犯人に向かって発砲。命中したが、川藤も反撃を受けた。即死ではなかった。首を切られ手で押さえながら、しばらく生きていた。
そして、生死の最後につぶやいた。
「こんなはずじゃなかった、上手くいったのに」
この言葉の意味とは?柳岡が辿りついた真実とは。
なるほど、そのためでしたか。
人間だものミスを隠したい気持ちはわかりますがね。
死人宿
恋人である佐和子が失踪して2年、山奥の温泉宿で仲居をしているという情報が入り、車で向かった私。
この宿が、自殺の名所「死人宿」と呼ばれていることを説明された。
そこで、佐和子から脱衣所で遺書の落し物が発見された、宿に泊っている3人のうち誰が書いた遺書か突き止めてほしいと相談を受けた。失踪の原因が私にもあり、変わったところを見せるべく引き受けた。
ほっとしたのも束の間でしたね。この宿に何か魅せられるものがあるのでしょう。
負の連鎖は止められない
柘榴
美しさに誇りを持っていたさおりは大学時代に知り合った成海と結婚した。成海は、ほとんど家に帰らず、働こうともしないダメな男だった。離婚には両者納得したが、娘二人(夕子、月子)の親権をお互い譲らない。裁判所の判断に委ねられるが、育てたのはさゆりであり、現状問題なく、親権はさおり側になるはずだったが、裁判官の説明に衝撃を受ける。
大人になったらこの姉妹どうなるのか、気になる。純粋な故の不気味さがいやに残る。
柘榴(ざくろ)読めなかった。
万灯
海外で働く伊丹は天然ガス、資源開発に挑んでいました。日本と違い、賄賂や手荒い手段が日常茶飯事。それでも、仕事一筋の伊丹は奮起していた。
拠点を置きたい村の村長は、エネルギーは我々の国の物だ。他国へは渡さない。一向に話を聞いてくれない。
このままでは埒が明かないとある計画に乗り出す。
超えてはならない一線を越えてしまった男。
関守
桂谷峠のカーブでドライバーたちが峠道から崖の下に転落して死亡する事故がこの4年で4回も起きている。
ライターである私は取材に訪れ、おばあさんが一人で営業しているドライブインで聞き込みをした。
怖い、怖い、怖い。おばあさんの話に聞き入ってしまった。
彼は、記事を書けたのでしょうか。
満願
弁護士を目指して、勤勉に励んでいた頃、下宿先でお世話になった人がいた。その彼女が殺人を犯した。司法試験に合格し、弁護士として一歩を踏み出していた矢先の知らせ。もちろん彼女の弁護を担当し、少しでも刑を軽くなるよう準備を進めていたが、夫の死を聞き罪を認め、控訴を取り下げた。
刑期を終え、待ちわびた電話を受けた私はあらためて振り返った。
タイトルにもなっているお話し。彼女にとって満願とは。
感想/まとめ
全体的に後味が悪い短編集でしたが何故か読後感は悪くない不思議な本。
目的のために手段、選択をそれぞれ取った彼彼女ら。
その結果の一例がこの短編集に詰まっている。
やはり僕は青春ものの方が好きらしいです。
米澤さんの本ならこれらを押したい。