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飛鳥部勝則さんの「殉教カテリナ車輪」を読んでみた 感想

今回紹介するのは飛鳥部勝則さんの「殉教カテリナ車輪」です。

殉教カテリナ車輪

学芸員の矢部は、とある理由から画家の東条寺桂(とうじょうじけい)のことを調べていると、彼が遺した『東条寺桂の手記』と出会った。その中に二重密室殺人事件の顛末が記されていたのだ。地方の無名の画家である東条寺桂は38歳の時に自殺している。製作期間は、1976年から81年までのわずか5年間あまり。年齢にして33歳から38歳までの短さである。まして独学で本格的に絵を描き始めたのが、30代前半という遅さ。それなのに生涯計算で五百枚以上もの絵を描いたとされた。家庭そっちのけで、何かに憑かれたように一心不乱で絵を描き続けて、やがて自殺した東条寺桂の人生とは何だったのか。

 

東条寺桂が絵を描くきっかけを作ったのは、同年に起きた継父・豪徳二の還暦パーティーでの死であるだろう。1976年12月24日、自宅の浴室で何者かに刺殺されているのが発見された。また、ほぼ同時刻にパーティーに参加していた大学生・佐野美香という学生も死亡していた。ちなみにふたりの関係は、ある賞の審査員と受賞者であった。鍵の掛かった二つの部屋、ほぼ同時の悲鳴、豪徳二を刺した凶器が佐野美香の首に刺さっていたこと。外は雪が積もり、犯人が逃走した痕跡は残っていない。こうして不可能犯罪は完成した。

 

彼が遺した絵を専門的に図像学の視点で読み解いていくと、やはり二重密室殺人事件が浮かび上がってきた。絵に込められた東条寺桂という画家の想いや叫びなどの心情も鑑賞していきたい。

 

感想/まとめ

面白かった。

著者自らの絵を引き合いに出して図像解釈学と絡めていくのが素晴らしい。またひとつ新たな言葉を知ることができた。どっちの分野にも才能があるなんてうらやましいですね。

 

こういった手記は疑って読むことが大切だと心しておく。