東野圭吾さんの「十字屋敷のピエロ」を読んでみた ネタバレあり/感想
今回紹介するのは東野圭吾さんの「十字屋敷のピエロ」です。手に入れた人は必ず不幸になると曰くつきの人形ー悲劇のピエロ。現持ち主の自殺を皮切りに十字屋敷を舞台として新たな事件の幕が上がった。
十字屋敷のピエロ
手に入れた人は必ず不幸になると曰くつきのピエロ人形。そのピエロ人形を購入して現持ち主となった竹宮家が物語の舞台である。竹宮家の邸宅は建物を上空から見下ろすと十字の形をしていることから十字屋敷と呼ばれていた。
さて物語は竹宮産業社長である竹宮頼子が自殺したことで始まる。彼女がピエロ人形を購入した本人であった。そして四十九日を迎えた今日、竹宮家の人間が十字屋敷に集まった。物語の視点である姪の竹宮水穂は一年半ぶりに戻ってきた。
次の日に頼子の夫である宗彦と秘書の三田理恵子が地下室のオーディオルームで死んでいるのが発見された。仕事上に留まらず私生活においても宗彦と理恵子は深い仲であった。
その後の捜査で、ある証拠品が決め手となり犯人が明らかになった。頼子の従兄で竹宮産業取締役である松崎良則でした。彼は建設を巡ってある特定の業者と癒着する収賄行為を行っていた。その証拠写真が地下室に保管されていると無記名の手紙が自室に届いていたので確かめに行った。すると地下室では宗彦が寝ていたが、音をたてないように証拠品を探し始めようとした瞬間、背後から襲われてしまう。相手はナイフを持っており、防衛のためしばらく揉み合っていたのちに動かなくなった相手を確認すると、脇腹にナイフが刺さっていた。一目散に部屋に逃げ込み一睡もしないで朝が来るのを待っていた。落ち着きを取り戻して自首しようと結論付けたが、騒ぎになった現場に行くと外部犯に見せかけた工作と理恵子が死んでいて驚いたと語った。そして、理恵子の殺害容疑については完全に否定していた。
ではいったい理恵子を殺害した犯人は誰なのか?松崎発言からさまざまな角度で捜査が進められた。すると今度は十字屋敷に下宿している大学院生の青江仁一が殺されてしまった。彼は再三、意味深な会話で事件解決までもう少しだと匂わす発言をしていたので犯人の逆鱗に触れてしまったのか?
水穂とピエロ人形の回収を望む人形師の悟浄真之介は、青江が残した足跡をベースに推理を組み立てていった。そして見えてきて犯人像。それは意外な人物で予想もしない思惑が隠されていたのだった。
感想/まとめ
面白かった。
この小説の注目点は何と言ってもピエロの人形でしょう。ピエロ視点で目撃した事件を語る描写を随所に挟んでいる。もちろん読者以外には彼の語りに気がつかないし、真相を教えてもらって事件解決だ!とはいかない。
また、どこか抜けている発言するピエロに思わずほっこりしてしまう。不気味なイメージの外見とのギャップがまた堪らない。暗闇にまぎれてピエロが置いてあったら絶対ビビると断言できる。
相変わらず登場人物の名前が一致せずに序盤は混乱したけど、それさえ乗り越えればミステリーの海に思う存分飛び込めるので脱落しないようにね。
十字屋敷といった興奮する舞台に建物の形をトリックに応用。さらにピエロが現場に置かれていた理由も納得するほど計算尽くされた構成はお見事です。
探偵役もどんどん入れ替わって最終的にパズルのように完成するのも上手いです。序盤で事件の手がかりをらしき物を入手した水穂も積極的には事件に関わろうとしない。おいしいとこは人形師の悟浄とピエロもっていってしまいましたが、ほんとに楽しめた。殺された青江さんいいキャラしてたのに残念。あれだけハラハラする発言連発していたので予想はしていましたがね。
そして実行犯以外に黒幕がいたと発現する悟浄。ピエロ視点で黒幕本人から語られたので間違いないでしょう。
「全部終わったわよ、お母さん」
いや~驚きましたね。まさに不意打ちですよ。そして振り返ってみると、
「そうなんです。あたしたちには、あたしたちなりのやり方があるんです。両足が自由に動く人たちよりも、ずっと巧いやり方が」
彼女本心のセリフもあった。
ただ単に可能性があると容疑者としてみてくれたことが嬉しかったのだとその時は思っていましたが、そんな事実が隠されていたなんて。
東野作品でも上位にランクインする僕好み、是非おススメしたいです。