繰り返される祖父の死 少年は救うことができるのか? 西澤保彦さんの「七回死んだ男」
今回紹介しますのは西澤保彦さんの「七回死んだ男」です。あなたのおススメを教えてくださいと質問されてらこの作品を迷わず挙げるでしょう。優柔不断で何事においても決めるのが苦手な僕が「これは!」と心を奪われた作品なのです。sf的要素が登場しますのでそちらが好きな方はより楽しめると思います。
七回死んだ男
主な登場人物
- 大庭久太郎ーーヒサタロウとまともに呼んでくれる人があまりいなくキュータロウと呼ばれる。中高一貫校に通う高校一年生。生物学的には十六歳なのだが精神年齢はおよそ三十歳。歳のわりには老けているとよく言われるがこれは体質に関係している。
- 友理絵美ーー胡留乃の秘書。久太郎の好きな人。
- 渕上零治郎ーー祖父
- 大庭加実寿ーー零治郎の長女
- 渕上胡留乃ーー零治郎の次女
- 鐘ヶ江葉流名ーー零治郎の三女
- 大庭富士高ーー久太郎の兄
- 大庭世史男ーー久太郎の兄
- 鐘ヶ江舞ーー久太郎の従姉
- 鐘ヶ江ルナーー久太郎の従妹
- 槌矢龍一ーー零治郎の秘書兼運転手
- キヨ子ーー渕上家の家政婦
- 宗像ーー零治郎の弁護士
久太郎の体質「反復落とし穴」
久太郎は中高一貫校に通う高校一年生。年の割には老けている、精神年齢三十歳などと言われるがこれには理由があった。
なぜなら同じ日を何度も繰り返す「反復落とし穴」という特異体質の影響である。
- 反復落とし穴は九回繰り返され最初の周を一周目(オリジナル)とし、二周、三周と数え九周目いわゆる最終周に起こったことが日常として成立する。
- 周回中の記憶は久太郎だけが覚えている。
- その日の夜中の十二時から次の日の十二時まで、まる二十四時間。
こんなことが何度も繰り返し起こっていれば年の割には老けていると言われるのも納得する。
さて物語の方はこの「反復落とし穴」がポイントになっていく。
新年会のため祖父の家を訪ねた久太郎一家、遺言状や養子をめぐる姉妹の争いのなか何者かによって祖父が殺されてしまうのである。
なんとか殺人を食い止めようと奮起する久太郎!「反復落とし穴」の中久太郎は祖父を守れるのか?
祖父の死が繰り返される
祖父が死んでいるのを発見する久太郎。「反復落とし穴」が発動中のため次週は祖父の死をあの手この手を使って防ごうと奮起する。しかしどうしても防ぐことができない。
あせる久太郎だが、繰り返してきた経験は無駄ではなく糸口を見つける。祖父の死は事件ではなかったのだ。一人で大量の酒を飲んでそれが原因で死んでいたのだ。ただ発見者たちが揃いも揃って事件に仕立て上げていたのだ。動機はやはり遺言状。去年の遺言状では友理さんが跡取りとして決まってしまうため親族が恐れ、結果的にややこしくしていただけの話である。
主人公とヒロイン
ズバリ友理さんです。何百冊とミステリー小説を読んできましたがこの人を超えるヒロインはいまだに出会えていません(もちろん個人的にです)。
もちろんお相手の久太郎もお気に入りのキャラですよ。勇気を持って告白したのはいいが反復落とし穴の影響でそれ自体がなかったことにされ、中盤で友理さんが結婚する相手がいると聞き失恋。まさかそれが自分自身だったとは、ジェットコースター並の急展開です。
登場人物に魅力的なキャラがいると自然にその作品も好きになります。この世に生み出してくれた西澤保彦さんありがとうございます。
爆笑した
学校の裏山の神社には近寄ってはいけないと先生が注意する場面
「裏山にはかわいい男の子や女の子を見つけるとイケナイことをするわるういオジさんがうろついているんです」
「イケナイことって何ですか?」
「そ。それは。そうだ。この前もよその学校の女の子が神社で遊んでいてそのオジさんにつかまってしまったのよ。可哀想に無理矢理パンツを脱がされてしまった。
「何故パンツを脱がされたんですか先生」
「そしてオジさんもパンツを脱いだんです。ここまで言えば判るでしょ」
「パンツの交換ですか?」
サッカーかよ。読み返すたびにここで毎回笑ってしまう。なぜか飽きないんですよね。
おわりに
かれこれ何十回と読み返していますが読むたびにはまっていく感じが強く、中毒に似ていて怖いぐらいです。
最近新装版が発売したらしくこの機会に是非読んでみてください。
久太郎と友理さんが幸せになってくれることを願っています。