円居挽さんの「シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎」を読んでみた ネタバレ少々/感想
今回紹介するのは円居挽さんの「シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎」です。全国に二校しかない探偵養成学校の鷹司高校が舞台。学級裁判、暗号、密室、謎と論理。探偵を志す青少年たちの青春ミステリー。
シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎
警察には対応不可能だと判断された難事件を解決する探偵。国家から探偵士に任命された者にはさまざまな特権が認められていた。そのため厳重に管理されて現衛庁か日本探偵公社に属していた。探偵養成学校を卒業しても、探偵士に任命されるのは一人か二人と言われる狭き門でもあった。現衛庁の頂点に立つ九名は九哭将(ナインティラーズ)、日本探偵公社の頂点は十格官と呼ばれている。
第一章 学園裁判と名探偵
全国に二校しかない探偵養成学校の鷹司高校に入学した剣峰成。百七十センチ足らずで線の細く、左耳のピアス以外に目立ったお洒落はない。それでも学ランを着た立ち姿には清潔感があり、一般的に美少年と呼ばれる類だ。ただ未だに学校には友人がおらず、他人の観察ばかりしていた。見るからに凡庸な生徒ばかりだと分析して評価をしていた。目指す高みは果てしなく長い道のりになるだろうとこの時は思っていたが、、、
さて今年も新入生歓迎行事「七寮祭」が開催される。メインイベントの星覧仕合は、裁判形式で行われるゲームである。テーマは特究生は誰かを推理することであり、二人一組でエントリーして、うち一人が特究生であることを立証することがルールである。特究生とは訳あり入学をした人を指す言葉である。
図書館でクラスメイトが上級生と揉めていた現場に成は居合わせた。ちょっとした悪知恵を働かせて場を切り上げることに成功し、生徒会長の大神五条と後に相棒になる太刀杜からんと知り合いになる。五条は成より小柄な男だが、その体格を侮ると痛い目にあうだろう。からんはポニーテールが特徴的な凛とした大和撫子。京都出身でたまに漏れる関西弁が堪らなく良い。
さてさて五条に呼ばれた二人は、自己紹介を兼ねてポーカー勝負で一興を催した。そこには目に見えない熱い攻防が繰り広げられていた。二人は協力して勝ちを拾うことができた。いや拾わされたのか?
鷹司高校で起きている誘拐事件。図書館での一件で成が働かした悪知恵が最悪な方向に結びついてしまい、からんが誘拐事件に関わっているとして疑われる事態に陥ってしまう。からんの潔白は成が知っているし、からんが成を告発すれば展開は変わる。しかし、からんは決して成を売る様子はなかった。この学校で初めてできた友人のために、星覧仕合で大神を倒す思いを固めた。
第二章 暗号と名探偵
成の過去編。
成は、自宅で父の死体を前に隠蔽工作をしていると、九哭将(ナインティラーズ)の一人である鬼貫重明が訪ねてきた。インターフォンの画面越しに父は買い物に出かけており、留守にしているので嘘をついて一旦お引き取りしてもらった。しかし、成のちょっとした不自然さを見抜いて何者かに脅されているのではと思い引き返してきた。プロを相手に中学生が欺ける筈がないと弱気になるが、自由のために嘘を突き通す選択をとった。
プロ対中学生の見ごたえのある攻防が攻防が繰り広げられていく。成の偽装工作を鬼貫は推理によって暴いていく。そして、成の真の狙いに着々と近づいていくのだった。
悲しき決着がついた後に、偽りに塗れた過去を捨て、本当の自分を取り戻す決意をして剣峰と名乗ることにした成。こうして剣峰成が誕生したのであった。
第三章 密室と名探偵
休日に鬼貫と成とからんは百貨店に来ていた。そこで、爆弾魔である降矢木残月らしき人物と遭遇してしまう。成にとって因縁がある相手でもあった。鬼貫と別行動をしていた成とからんは、確証を得るために尾行を開始したが逆に反撃に遭って、成は拉致されてしまう。
プロ対爆弾魔の見ごたえのある攻防が繰り広げられていく。そこに、成も参戦して状況は複雑化する。成が残したヒントを手がかり、居場所を突き止めた鬼貫。今度こそ残月を捕まえることができるのか?
感想/まとめ
面白かった。同著者さんの「丸太町ルヴォワール」も楽しめたので、今作も期待値は高かったが問題なく楽しめた。鬼貫さんと成の関係性がくすぐったい。絶妙な距離感で親子のようで親子でない空気感が伝わってくる。それでも成の将来を案じていることだけは本物であろう。
己の未熟さを認めて、鷹司高校での三年間を有意義に学ぶ決意した成。どういった成長を遂げるのか楽しみですね。
続編も読み終わるので感想を書きたいですね。