米澤穂信さんの「犬はどこだ」を読んでみた 感想
今回紹介するのは米澤穂信さんの「犬はどこだ」です。調査事務所を開いてさっそくふたつの依頼が舞い込んできた。依頼者はそれぞれ別口なのだが、調査すると何やら関わりがあることが分かった。新人探偵の運命は?
犬はどこだ
アトピー性皮膚炎が原因で東京での暮らしに終止符を打ち、八保市へと帰郷した紺屋長一郎。
戻ってきて体はほぼ完治。しかし気力が完全に失われて半年間もの間、抜け殻のように過ごしていた。それでも通帳の残高が減っていく現実を目の当たりにして働かないと生きていけないと身体に鞭を打ち何か商売を始めることにした。
最終的に自分の体と相談して再出発として選んだのが調査事務所<紺屋S&R>だった。
業務内容は犬捜し、、、だったはずのつもりが最初の依頼人である佐久良さんから依頼されてのは孫娘である桐子を捜してほしいとのこと。開業を手伝ってくれた数少ない友人からの紹介と知り引き受けることにした。
詳細を聞いてみると、桐子は東京でコンピューター会社に勤めている。
目標だった職に就けて頑張っているなと安心していたが最近おかしなことが起きた。
桐子宛ての手紙が家に届くようになり、不思議がっていたが放置していた。しかし息子夫婦から連絡が入り桐子連絡が取れないという。勤務先へ電話したがすでに辞表を出して辞めていた。アパートにも行ってみたがもぬけの殻。行方が分からない状況らしい。
手がかりの絵葉書から桐子はこの街にいることが判明。
こうして犬探しではなく人探しが探偵としての初仕事となった。
翌日学生時代の後輩半田(ハンペー)が事務所を訪ねてきた。フリーターとして働いてはいるが、長一郎が調査事務所を開いたことを聞きつけ雇ってくださいと頭を下げてお願いしてきた。いかに探偵に憧れているかをアピールしてなんでもやりますと宣言。
人手はあった方がいいが、開業したばっかりで収入の目処がなく金銭的負担がちらつく。そのことを伝えると完全歩合制でもいいですと答えた。
どうしようか困っていたところに二人目の依頼人が訪ねてきた。
自治会長の百地さん。長年大事にされてきた古文書を目玉として新しい公民館に額に入れて掲げたいという。しかし古文書の由来がわからない。それを調査してほしいと依頼。
別の依頼を抱えていてそちらが急を要する案件なもので、後回しになってしまう旨をやんわりと説明してみると、時間はあるのでかまわないという。
どうするか迷っているとハンペーと目が合った。一切の迷いがなくやる気満々。任せてみようという気持ちになり承諾することにした。
こうして調査事務所<紺屋S&R>は、開業してすぐに二つの依頼を受けることになった。予想外の所員も一人増えたが。
紺屋長一郎、半田(ハンペー)視点で交互に物語は進んでいく。
人探しと古文書の件を調査していくとつながりが見えてくる。
新たな登場人物と背後にちらつく怪しい影。
はたして二人は無事依頼を完了することができるのか。
最後の最後まで目が離せない展開。
がんばれ新人探偵諸君。
感想/まとめ
面白かった。
僕もアレルギー持ちなのでそのつらさは分かります。
桐子がなぜ姿を消したのか、その意味が逆転する終盤に恐怖を感じた。追うものと追われるもの。二つの依頼がリンクするようによく考えられてますね。
ナイフを忍ばせ、番犬を買うつもりの長一郎。いつ安泰する日は来るのか。時が決まっていないのでまたストレスで症状が悪化してしまうのではないかと心配してしまう。
妹さんと仲が良いのも読んでいて気持ちがほくほくしてくる。大人になっても家族間で濃いつながりがあることに憧れますね。運転テクニックすばらしい。
甘い青春ものばかりではなく、苦いこういう結末もいいですね。
続編でないかな~