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近藤史恵さんの「エデン」を読んでみた 感想

今回紹介するのは近藤史恵さんの「エデン」です。ロードレース小説、サクリファイスの続編。海外に拠点を移した白石誓に待ち受ける新たな試練とは。

 エデン

スペインのチーム(サントス・カンタン)でそれなりに活躍をして、フランスを本拠地としているチーム(パート・ピカルディ)に移籍して半年、ツール・ド・フランス出場直前にスポンサーの撤退が決まりチームは解散することが決定。

チームのエース格であるミッコはフィンランド人で僕とは異邦者同士仲が良かった。彼はレースで常に好成績を収めているし、年齢的にも脂がのっている時期である。移籍先を決めるのにさほど苦労しないだろう。

それに対して僕は契約がまだ残っていると油断していた。それでも日本に帰るという選択肢は考えられない。引き下がれない理由があるからだ。

悩ましいことだ。移籍のためには成績が欲しい。けれど自分の仕事はアシストだ。エースを差し置いて勝利を求めるなど考えもしなかった。

来年もレースで走りたい。渦巻く混沌としたこの気持ちが消えることはなかった。

 

レース

チームの様子がおかしい。チーム解散のためかみんなの気持ちがバラバラになっているのか。それにしてもチームの勝利は自分の力をアピールする絶好の機会なのに何かがちぐはぐだ。

監督に直談判したところ理由を話してくれた。

チーム存続のためフランス人エースニコラが所属しているクレディ・ブルダーニュと共同戦線を組むことを決めた。

ニコラはフランス人だ。低迷していたフランスに突如現れたスター。今回のレースで彼が優勝すればフランス自転車界は盛り上がるだろう。

そうすれば新しいスポンサーが見つかりチームも存続できる。誓の契約も約束すると提案してきた。確かに悪い話ではない。しかし納得はできない。ミッコを差し置いてライバルチームの選手をアシストする行為自体に裏切りや罪悪感が付きまとう。

誓に新たな悩みの種が生まれた瞬間だった。

 

それでもレースは続く。途中落車に巻き込まれたミッコ。七針を縫う大けがを負いながらもレースを止めない、上位を目指してレースを走る姿勢を目撃してある選択をする。

日本に帰ることとなっても仕方がない。

ニコラをアシストしないミッコをアシストすると誓は決心した。圧し掛かっていた悩みは飛んでいき精神的に晴れやかになりレースは後半戦へと突入していく。

 

ニコラには同じチームに幼なじみでライバルのド二がいる。

物語後半はこの二人が中心となって進んでいく。自転車と共に成長してきた二人。しかし、長年のある行為の告白が二人の関係性にひびを入れる。

順調にレースを進めるニコラに思わぬ試練が待ち受ける。外野からは薬(ドーピング)の噂が流れてきた。ニコラは潔白なのか、レースはいよいよ佳境へと向かう。 

怪我を押してレースを進めるミッコは優勝争いに食い込めるのか。

そして誓の選択した未来は何が待ち受けていたのか。

 

是非楽しんでください。

 

感想/まとめ

ロードレース小説、サクリファイスの続編であり今回も期待していましたが楽しめました。舞台を海外へ移し、本場のレースが描かれている。前作に比べてより専門的な小説に仕上がっておりミステリ要素は薄くなっていますね。その分スポーツ小説として面白さは突き抜けていますので安心してください。

 

海外で揉まれているせいか肉体的にも精神的にも成長したチカの姿がここにはある。

厳しい戦いに手に汗握る、小説で体験するなんて思いもよらなかったです。

レース後、ミッコと同じチームで走る選択をしたチカ。今後の活躍に期待したいですね。

文章に残る彼の面影、それだけチカの中では影響が大きい人なのですね。

 

まだまだシリーズは続きます。

次でお会いしましょう。