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今邑彩さんの「i(アイ) 鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・貴島柊志」を読んでみた 感想

今回紹介するのは今邑彩さんの「i(アイ) 鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・貴島柊志」です。作家が殺された密室状態の部屋には、鏡の前で途絶える足跡が残されていた。鏡に消えた殺人者を追う貴島シリーズ第一弾!

 i(アイ) 鏡に消えた殺人者 警視庁捜査一課・貴島柊志

自宅のマンションで作家・砂村悦子が殺害されているのが発見された。捜査の結果、死因は鋭利な刃物で一突きされたことによるショック死。現場から凶器が発見されないことから他殺の線が濃厚で、犯人は左利きで被害者と同じくらいの背丈である可能性が高いことも判明した。現場は争ったり、荒された形跡がなく、顔見知りの犯行であるのは間違いなかった。関係者を当たれば犯人はすぐに浮上するのではと考えられていた。しかし、この短絡的な考え方は全くの見当違いで調べれば調べるほど、事件は異様な様相を帯びてきたのだ。

 

事件を担当する警視庁捜査一課・貴島柊志のことを何より悩ませたのが、鏡の前まで続いていた犯人らしき人物の血の足跡である。血の足跡は鏡の前で途絶えており、そこから引き返した痕跡がなかったのだ。まるで犯人が鏡から飛び出して彼女を殺害し、また鏡を抜けて現場から立ち去ったように思えてしまう。あまりにも馬鹿げた考えだが、現場に残された手がかりがその説を後押しするように立証していたのだ、

 

犯行後の犯人の不可解な行動にも疑問が残るし、現場は密室状態にあった。死体が発見されたとき、玄関のドアは施錠されていたことを第一発見者の里見充子(悦子の母親)と的場武彦(編集者)はしっかりと証言した。またマンションの鍵は全部で三つあり、それらを使うチャンスがあった管理人、砂村昌宏(悦子の夫)、里見充子の三人にはそれぞれアリバイがあった。鍵を中心にさまざまな可能性の検討がなされたが、鏡の中に消えた犯人という馬鹿げた推理が一番すんなりと説明がついてしまった。

 

犯人は現場から悦子の書いた原稿を持ち去っていたことも判明した。その原稿には「鏡」に纏わる作者本人の心境が描かれていた。父と母に愛され、大きなお屋敷住む。そんな幸福な人生を送っていたある日のこと叔母と従妹・アイという乱入者と同居することになり、少しずつわたしの平穏を蝕んでいった。そして、アイの事故死を皮切りに、鏡の中から死んだはずの「アイ」が見つめているような錯覚に陥り、「鏡」に対して恐怖感及び依存するようになっていった。この自伝的原稿の存在があるからこそ空想的で馬鹿げた鏡像説を無視することができずにいたのだ。

 

的場武彦の失踪と里見充子の死。的場は事件のからくりに気付いていたらしく、充子の死も悦子の死と類似している点が多く同一犯の可能性が高い。その後の地道な捜査で得た有力な情報と証言から貴島の脳裏にある考えが閃き、不可解な謎のひとつひとつを集めて再構築していく。骨格だけのペラペラな自分の推理を確実なものにするために、全てを知っているだろう人物を訪ねる。

 

鏡に消えた犯人の正体とはいったい誰だ?

 

感想/まとめ

面白かった。

鏡に向かった足跡の意味とトリックに拍手。「鏡」の自伝原稿と上手くマッチしていて、ミステリーとホラーを両立している小説でしたね。

やはり際立つエピローグ。ただでは終わらせてくれない。ゾッとする余韻を味わいもやもや。

 

 

貴島さんが旧友である的場武彦と再会するシーン。

「あのころとちっとも変ってないね。的場武彦君」

こっちまで胸が熱くなり嬉しくなってしまった。人生で言ってみたいフレーズの一つですね。