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井上夢人さんの「あわせ鏡に飛び込んで」を読んでみた 感想

今回紹介するのは井上夢人さんの「あわせ鏡に飛び込んで」です。生活の中に潜む恐怖を読んで涼しくなろう!表題作「あわせ鏡に飛び込んで」を含む短編集。

 あわせ鏡に飛び込んで

▼あなたをはなさない

別れ話を切り出された彼女が瞬間接着剤で物理的に手をくっつけて彼氏を離さない。どうしても別れたくない、チャンスがほしいと押し通すが、これまでの不満が爆発した彼氏はこれ以上顔も見たくないと断固拒絶。トチ狂った彼女は自分の顔に瞬間接着剤を塗りつけて、彼氏のもう一方の手を掴み押しつけた。

どのくらい時間が経ったのだろう。目の前には冷たくなった彼女が横たわっていた。

 

▼ノックを待ちながら

笹本晋一は妻の弓美が男を連れて寝室に入ってくるのをクローゼットの中に隠れて息を潜めて眺めていた。すると弓美から勧めらた媚薬を飲んだ男が苦しみ出して死んでしまう。それを合図に飛び出した晋一は弓美を強く抱きしめるのであった。

実は借金返済に充てる保険金目当てで自分と容姿がそっくりのこの男を自殺に見せかけて殺す計画を立てていたのだ。後は妻が連れてきた第三者に砂糖を舐めて自殺する姿を見せれば大丈夫のはず。しかし、妻が用意したこの砂糖。本当は毒なのではと疑心暗鬼に陥る晋一。もう時間がない。ノックをして呼ぶ妻の声が聞こえる、、、

 

▼サンセット通りの天使

FBIの監視の目をすり抜けるために配達業者の女性を脅して脱出する計画は上手く事が運んだかのように思われたが、実はその女性の正体が、、、

 

▼空部屋あります

その部屋を借りた住人が次から次へと行方不明になるお話し。

 

▼千載一遇

その夜だけ特別に大金を警備することになった夜間警備員の山辺四郎は同僚の楠本繁夫に罪をなすりつけて金を奪う計画を立てていた。しかし楠本もある計画を立てており、お互い後戻りが出来ない戦いに勝利するのは一人だけだ。

 

▼私は死なない

この世に未練がなくなった研究員が肉体と精神を切り離す薬物を自分自身に打つお話し。彼が期待した通りの結果となったが、意識の中に苦痛だけが取り残されてしまった。

 

▼ジェイとアイとJI

二台のパソコンにそれぞれ学習機能をプログラムして会話させようと奮闘している男性。実際に会話している描写がみられるが、そこは男性の頭の中。二台のパソコンの画面上には〈こんにちは〉と言う文字が永遠に流れているだけだった。

 

▼あわせ鏡に飛び込んで

表題作。

執刀ミスで患者を殺してしまった城所院長は、患者の夫から執刀ミスを告発されそうになっていた。その告発方法が特殊で二枚の絵に隠された鏡。追い込められた城所院長はビリビリに絵を破り捨てて証拠隠滅を図るが、相手の方が一枚上手。毒を飲んで自殺し、どんな言い訳も通用しないように逃げ道をなくした。かけつけてきた刑事と共に絵に隠された秘密を暴くと、城所院長の自白シーンが録音されているテープレコーダーが見つかった。

 

▼さよならの転送

留守番電話の別れ話で起きた悲劇のお話し。

 

▼書かれなかった手紙

手紙だけで構成されたお話し。

教え子とその旦那から手紙が送られてきた先生。二人の手紙にはある事件についての相談事が書かれていたが、両者とも相手に不満を募らせ、矛盾点も多く、どちらが正しいのか一見しただけでは分からない。だが、ある不自然な点を見抜いた先生は、警察に通報して最悪の事態は回避することに成功した。

 

感想/まとめ

面白かった。

一番好きな短編集はと聞かれたら迷わず▼あなたをはなさないと答えますね。痺れるような恐怖と快感がたまらない。この後のことを考えると、彼氏さんは捕まってしまうのだろうか?たとえ自分が死んでも一生記憶と体感から離さないとのメッセージが強烈で僕も忘れられないお話しになった。